沢木耕太郎の足跡を追うその1
ペナンはマレー半島側のウェルスレイ地区とペナン島の二つの部分から成る。その意味では九龍と香港島から成る香港とよく似ているといえる。ただ、半島側から島へ渡るフェリーは、香港のスター・フェリーの倍近くあり、時間も十七、八分とかなりかかる。面白いのは料金のシステムで、ペナン島に向かう時は無料、ペナン島から半島側へ渡ってくる時に三十五セント払えばいいらしい。マレーシア・ドルは約百二十五円だから、往復で四十五円足らずということになる。(沢木耕太郎「深夜特急」より引用)
今回のマレー半島縦断の旅では、沢木耕太郎の「深夜特急」第五章に登場する土地を辿ってみることとなった。もちろん当初はそんなつもりもなかったが、こういうルートを取る以上、それは避けて通れないことなのかも知れない。
<マレー鉄道ビル>K7/FA35
この時計塔を持つ建物は、マレー鉄道ビルで、世界遺産の登録物件でもある。持参のガイドブックは3年前のもので、当時はまだジョージタウンが世界遺産に登録されてなかったため、ジョージタウンもただのコロニアル的な町としてしか紹介がない。この建物が、世界遺産であることはもらったパンフレットであとで知ったことになる。
今回のジョージタウンでは、そんな「あとで知った」ものがたくさんあり、ますますここは再訪するべきところだという気になる。
このマレー鉄道ビルはジョージタウンとバタワースを結ぶフェリー埠頭の向かいにある。もちろん、ペナンまではマレー鉄道は乗り入れていないのだが、ジョージタウンこそがペナン州の州都であることの証明なのかも知れない。
<フェリーの表示>K7/FA35
わかるだろうか。フェリー料金はペナンからバタワースに向かう時は無料。逆の場合は1.2リンギットである。この片道無料というシステム、沢木耕太郎の頃から変わっていない。もっとも、「深夜特急」の場合、バタワースからペナンに向かう場合が無料だったのだが。
<船内>K7/FA35
長い通路を歩き、船内へ。ペナン側はゲートもない。このフェリーだが、香港のスターフェリーのように、乗客専用。自動車用はまた専用のものがある。スターフェリーよりも倍くらいの大きさで、所要時間は同じくらい。ペナンのフェリーの方がスピードが出るようだ。
座席はスターフェリーと同じように、背もたれを倒し、向きを変えることができる。また、同じようにスクリューも船の前後にあるらしく、向きを変えずにバタワースとペナンの間を航行する。いわば、日本の電車と同じである。
<航海中>K7/FA35
ペナン滞在中は天気が今ひとつで、この時も今にも雨が降り出しそうな感じだった。海峡は波も穏やかで、安定している。上の写真はペナンからバタワースに向かうところで、後ろに回って撮影した。
<バタワース駅>K7/FA35
バタワースに到着し、そのまままっすぐ歩いていくと、駅への連絡口が現れる。この時間帯は出発も到着もないようで、駅まで行く人はほとんどいない。
<これに乗れば…>K7/FA35
バタワースは予想通り、小さな駅だった。バンコクとバタワースを結ぶ、1日1本の国際列車がある。所要時間約23時間。バンコクの駅はフアランポーンで賑やかだし、それなりの情緒もある。一方、マレーシアの終着、バタワースはというと、こんな具合。
だが、列車の発着する時間となると、どこからともなく旅人が集まり、それなりの雰囲気になるに違いない。
<バタワース側のフェリー入口>K7/FA35
駅には10分程度いただろうか。そのまま、元の道を引き返し、戻りのフェリーに1.2リンギット払って乗り込む。回転バー式の改札で、そのままコインを入れれば通ることができる。トークンでも売っているのかと思ったが、そうではなかった。
沢木耕太郎は、ハジャイから列車でバタワースにやってきた。この列車は現在ガイドブックに記載がないようだが、今でも走っているらしい。また、沢木氏が旅した当時はバンコクとシンガポールを結ぶ国際列車もあったらしいが、現在はバタワースとクアラルンプールで乗り継がねばならない。
沢木氏はバタワースでフェリーに乗り継ぎ、ジョージタウンに到着するのだが、トライショー引きに翻弄されつつも、同楽旅社という、「不思議で面白い」宿に長逗留することになる。
その後映像化された大沢たかお主演の「劇的紀行・深夜特急」では「不思議で面白い」宿ではなく、ビーチボーイのいるバトゥ・フェリンギのアーベン・ゲストハウスを舞台に話を進めることになる。
ともかく、これ、シリーズ化します。
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コメント
沢木耕太郎の「深夜特急」は私も全巻2回読みました。
2回とも本は人にあげてしまったし良く覚えているわけではないですが、私もアジアが好きになった根底にはこの本があったのかもしれません。
ヒョウちゃんの深夜特急シリーズ楽しみにしていますよ。
投稿: スクムビット | 2011年2月13日 (日) 21時18分
スクムビットさん、こんにちは。
自分の場合は、何度読み返したものか。
文庫本ながらも、ボロボロです。
今回は、マラッカも含めると、ペナン、ハジャイ、ソンクラー、チュムポーン沢木さんが訪れたのと同じ場所ばかりです。
まあ、現在もこのあたりで乗り継ぐ、宿泊するのが適しているのでしょうね。
ま、シリーズ化するといっても、せいぜい3つくらいまででしょうが、頑張ります。
投稿: ヒョウちゃん | 2011年2月13日 (日) 22時01分