カミサマカウカ?
深夜特急の足跡を追うVol.3
それはヴァラナシー最終日の奇跡であった。この日はリキシャワーラーとも無縁で、ひとりでメインガートの近くまでやってきた。だが、雨が降ってきて雨宿りしていた時に、声をかけてきた男がいた。
最初は決まり切ったことを英語できいてくる。たぶん土産物屋の関係者だろうと思っていた。日本が好きなようで日本の地名がよく出てくる。そのうち男は流ちょうな日本語になった。「私の兄の店、日本人がよく来ます。『ガンジス川でバタフライ』のたかのてるこも来たし、この間は芸能人が来たね。私の兄、『シェンヤトッキュウ』にも出てたね」
なんだそれはと思ったが、聞き返してみると大沢たかおという名前も出てくる。大沢たかおでヴァラナシーと来れば、あれしかないではないか。しかも、ヴァラナシーでの出演者というと、ヒンドゥの神様を売り歩いていたあの少年しかいない。「店に来る?」気に入らなかったら買わなくてもいい、日本の雑誌や本もあるので、飲み物だけ飲んで休んでいけばいいとのことなので、迷わず立ち寄ってみた。
<モホニーシルクショップ>K7/DA21
連れて行かれたのは、モホニーシルクショップ。狭い店内には、インド人3人と日本人の観光客が二人。また、サリーを着こなした日本人女性もいた。チャイが運ばれる。棚には商品の他に、日本人旅行者が置いていったらしい本がずらり。すると、自分を案内した男が、古い写真を出してきた。
<カミサマカウカの1シーン>K7/DA21
ここの店主の名前はムケ。「劇的紀行・深夜特急」の中ではモケという名前で大沢たかおと絡む重要な役どころだった。ムケの弟はさらに堀田あきお&堀田かよの「インドまで行ってきた」という漫画を取り出し、主人公の杉田君がヴァラナシーでムケと出会うシーンも見せてくれた。
<ムケと記念撮影>GR DIGITAL
ようやく暇になった店内でムケにインタビュー。
現在28歳。深夜特急出演時は13歳。今は日本人の奥さんをもらい、この小さな店を経営している。ムケはインド商人としては非常にクリーンな商売をしている。客は呼び込むものの、決して押しつけがましい売り方はせず、あっさりとしている。
日本人観光客には正しいシルクの見分け方を教えている。それは、糸を燃やすのだそうだ。これを見ていて、数日前の雨宿り中に購入した安いシルクのスカーフは偽物だなと思った。
大沢たかおは優しかったかときくと、まだ子供だったからよくわからないとのこと。記念撮影をしようとGR DIGITALを取り出すと、「オレ、それ持ってる。日本の友達に送ってもらった」とのこと。
ムケは金を受け取るときちんと棚の金庫の鍵を開け、そこにしまうとまた鍵をかける。やはりしっかりしてますね。今後の予定をきかれ、ネパールにバスで行くと答えると、「その歳で」といわれてしまった。歳のことをインド人はしつこくきくので、「大沢たかおと同じ」とごまかしておいた。「あのとき大沢たかおは26歳だったから」などと計算している。「それは、ドラマの主人公の年齢で、実際はもっと上だよ」と教えると初めて知ったようだった。
ムケからは紅茶を買い、今もそれを飲んでこれを書いている。「またあなたは、ヴァラナシーに来るね」「何年後かわからないけどね」と答えて、分かれる。ゴードウリーヤの交差点までは弟が送ってくれた。
<ホテル・ガンジス>K7/DA21
ヴァラナシーの旧市街だけでも、沢木耕太郎の「深夜特急」の足跡をそのまま追うことになってしまいますが、これまでのカルカッタとブッダガヤのようなはっきりと足跡を残したところは記述されていないので、今回は「劇的紀行・深夜特急」からピックアップしてみました。
ホテル・ガンジスは大沢たかお扮する沢木耕太郎が泊まった設定になっている宿。入口近くは工事中であまり綺麗じゃない感じはしたが、まあまあの宿のような気もする。このあたりにいれば、かなり便利だろうと思う。
モホニーシルクショップ
D.17/129A-1,Ashutosh Market Opp.Chitranjan Park Dashashwamedth
E-mail:mohonisilk@yahoo.com
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コメント
いたいけな坊やだったのに
ヒゲまではやして
お嫁さんまで(しかも日本人)
とは~
偶然の出会いですごいです
しかしお店の名前
モホニー
とあるギョーカイではヤヴァイ?
投稿: trintrin | 2011年9月24日 (土) 16時49分
インド人と結婚してベナレスに住んでいる日本人女性はけっこういるんですね
有名な久美子さんに、ソナのなんでも屋の奥さん、それにムケの奥さんですか・・・
ベナレスに永く入れたらお世話になりそうです(^^ゞ
投稿: kimcafe | 2011年9月24日 (土) 21時34分
trintrinさん、お待たせしました。
ま、ヒゲはあるんですが、非常に小柄な人で、あのときの印象はまだ残っていると思います。
ワタクシと同じくらいにインドに行ったネット上の知り合いがいるんですが、やはりモホニーに連れて行かれているんですね。
けっこう地道に営業活動はしているみたいです。
店の名前なんですが、愛犬の名前らしいです。
でも、訪れた日本人は一瞬、おやっと思うだろうなあ。
そのうち、「深夜特急、なんだそりゃ」となっていくと思いますが、ムケはこれがなくても成功していくと思いますね。
投稿: ヒョウちゃん | 2011年9月25日 (日) 00時45分
kimcafeさん、こんにちは。
まだ他にも、カフェをやっている日本人女性なんかもいるようです。
日本人女性は商売成功への導き手なんでしょうねえ。
資金力もあるだろうし。
これとは逆に、インド人女性をめとった男性がやっているカフェもありました。
投稿: ヒョウちゃん | 2011年9月25日 (日) 00時47分
そうだったんですか。
ヒョウちゃんが深夜特急ファンのオーラを出していたのでしょう。
ただヴァラナシーに行く個人旅行者は、多かれ少なかれ深夜特急を見たり読んだりした人が多いのかもしれませんね。
シルクは燃やすと、髪の毛を焼いたようなにおいがします。それはたんぱく質が焼けたにおいです。
ですから化繊が燃えたときの臭いとは違うんですぐわかります。
投稿: スクムビット | 2011年9月25日 (日) 20時55分
スクムビットさん、こんにちは。
今年の初めくらいから、やたらと深夜特急をここで持ち出しているんですが、自分でもまさかヴァラナシーでムケに会うなんて考えてもいませんでした。
当初、ヴァラナシーは4泊の予定だったのですが、体調不良とバス便のために、1日滞在を延ばしたので、やはり何らかの導きがあったのかな。
オーラは出していないと思うんですけどね。
沢木耕太郎の「深夜特急」の文庫本たくさんありましたよ。また、わたしゃ、ここでちらっと読んだ長澤まさみの「チャイ飲む?」という、フォトエッセイ、アマゾンで購入してしまいました。
長澤まさみといえば、「ガンジス川でバタフライ」です。でも、見てないんだよなあ。…誰かDVDで焼いてくれないかな。
をを、シルクの見分け方、さすがです。
確かに、植物じゃないんですから、考えてみればそうですよね。
でも、もし火葬場近くでシルクを販売していたら、わけわかんなくなりそうですね。
投稿: ヒョウちゃん | 2011年9月26日 (月) 00時18分