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2011年9月 5日 (月)

印度山日本寺

深夜特急の足跡を追うVol.2

前回のインドでは、「北インド仏跡を巡る旅」というテーマがついていたものの、エアインディアの未曾有のディレイに巻き込まれ、ブッダガヤで泊まるはずが通過ということになってしまいました。滞在時間わずか3時間。観光をして、マハボディ寺院近くのアショカホテル(今は経営母体が変わったか何かで、別の名前のホテルになっています)で昼食を食べるともう出発という強行軍でした。

それでも、ブッダガヤに数ある各国の寺院の中で日本寺だけは訪れることができたのでした。

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<印度山日本寺>K7/DA21

 私がぼんやり眺めていると少年が近づいてきて言った。数珠を買わないか。それがあまりにも上手な日本語なのに驚いた。仏教の聖地ということで日本人の観光客がよく来るのかもしれない。いやいらない、と言ったあとで、ジャパニーズ・テンプルはどこにあるのかと訊ねてみた。

「ジャパニーズ・テンプル?日本寺ね」

 少年が指さした方角を見ると、広い空き地の向こうに確かに日本風の寺院の建物があった。

 その寺は近づいてみるとかなり広壮な建物だった。門を入り、案内を乞うと、中から僧侶が出てきた。正真正銘の日本の僧侶だった。泊めてもらえないだろうかと頼むと、多少もったいはつけたものの意外に簡単に受け入れてくれた。

 通されたのは二段ベッドの部屋だったが、他に泊まっている人はいないようだった。しかも内部は清潔でいかにも快適そうだった。私はベッドに横になるとそのままぐっすりと寝入ってしまった。

(沢木耕太郎「深夜特急」から引用)

…ということで、沢木さんはカルカッタからパトナに向かう列車の中で乗客のインド人から無料で泊まれる寺の話を聞き、列車を乗り換えてブッダガヤにやってきます。それが、この印度山日本寺。

当時の日本寺では、朝夕の勤行に参加することと、食事は提供できないので自分で何とかすることというのが、泊まる条件だったそうだ。

当時はこの他にもラージギルにある日本山妙法寺も、部屋を旅行者に開放していた。沢木耕太郎ほど有名じゃないが、ルバング島で小野田さんを「救出」した鈴木紀夫という人の、「大放浪-小野田少尉発見の旅」(朝日文庫)の前半では、アジアと中東、ヨーロッパを行ったり来たりしていたが、ラージギルで泊めてもらう記述があります。

今でもブッダガヤでは、ブータン寺、ミャンマー寺、チベット僧院などでは泊めてくれるらしい。また、ヴァラナシーに近いサルナートの日月山法輪寺では受け入れてくれるらしい。いずれも、「地球の歩き方」の情報ですが。残念ながら、印度山日本寺ではもう旅行者を受け入れることはないようだ。

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<本堂>K7/DA21

 此経さんとは、勤行が終わったあとに、本堂の廊下に腰を下ろし、地平線から黒い雲が湧き、雷鳴が轟き稲妻が走る空などを眺めながら、よく話をした。

(沢木耕太郎「深夜特急」から引用)

此経さんとは、この日本寺で出会う「未だならざる日本語講師」であった。ブッダガヤの近くにはマガダ大学があり、ここで日本語講師を募集していたらしいが、返事が遅れ、なら行ってみようとブッダガヤで生活していた人である。

やがて、此経さんがブッダガヤにやってきた農大生たちが、近くのサマンバヤ・アシュラムでボランティアをすることを聞きつけ、沢木さんも誘い、アシュラムの生活が始まります。大沢たかおの「劇的紀行・深夜特急'97~西へ、ユーラシア編」では、このアシュラムの出来事がまるまるカットされ、「劇的紀行・深夜特急'98~飛行よ!飛行よ!ヨーロッパ編」で回想シーンとして登場します。まあ、カルカッタも「劇的紀行・深夜特急'96~熱風アジア編」のオープニングで登場するのみですけど。

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<菩提樹学園>K7/DA21

現在は宿泊施設がなくなってしまい、沢木さんたちが生活していたあたりの推測もつきません。ただ、日本寺はブッダガヤの人たちにかなり慈悲深い活動をしていて、この菩提樹学園もその一つ。ここは、ブッダガヤの貧しい家庭の子供が対象の無料の幼稚園。

訪ねた時はすでに活動が終わっていたようだが、前の庭で無邪気に遊ぶ子供たちの姿があった。

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<光明施療院>K7/DA21

こちらは、無料の診療所。2度目に足を運んだ時気づきました。朝からかなりの数の人たちが治療をしてもらおうと順番を待っていました。この写真ではわかりませんが、さらに左側に治療を待っている人たちがいます。(そうした人たちを撮さないようにしたのです)

ブッダガヤに数ある各国の寺院を非常に短時間ではあるものの、訪問してみましたが、これだけの活動を行っているのは印度山日本寺くらいだと思いました。なんといっても、敷地面積が違いすぎる。ただし、ここにいる日本人の僧侶は数少ないのか、姿を見かけませんでしたねえ。他の寺院ではかなりの数いますが。

旅行者の宿泊を受け入れなくなった日本寺ではありますが、朝夕の勤行(読経)には、日本人外国人を問わず参加可能らしいし、日本語の本がある図書館もあり、借りることも可能らしいです。わたしゃ、3泊しましたが、それ以上の長期滞在をもくろむならば、お寺通いも楽しいものになるかもしれません。

印度山日本寺ホームページ

ちなみに、「にほんでら」ではなく、「にっぽんじ」です。

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コメント

ここでフィルムの半分を使ったんですよね
それにしても立派な日本建築でびっくりしました
瓦のメンテナンスは日本人がしてるんだろうな~

投稿: trintrin | 2011年9月 7日 (水) 11時44分

trintrinさん、こんにちは。
フィルムの半分を使ってしまったのは、サマンバヤ・アシュラムですね。
アシュラムに向かった時に、一緒に引き取られていく二人の女の子が気になって、ついつい撮していたらしいですね。
日本寺は本堂がなければ、寺と気づかないかもしれませんね。
ここは、日本人の僧侶をあまり見かけないのですが、作業を行うインド人男性が数名いて、挨拶くらいならば日本語で返してくれました。
その人たちが建物などを修復していたりするのかもしれません。

投稿: ヒョウちゃん | 2011年9月 7日 (水) 22時04分

安宿なら、たいていは自信あるんですが・・・お寺の朝夕の勤行は辛そうですね(^^ゞ
ヨーガのアシュラムなんてのも苦手です

投稿: kimcafe | 2011年9月 8日 (木) 21時55分

kimcafeさん、こんにちは。
ルンビニの日本山妙法寺では宿泊できるそうですが、朝は周囲の村を4時間かけて歩き、夕方は1時間ほどのお勤めにつきあうんだそうです。こりゃ、誰も泊まろうと思いませんよね。
一度、リシュケシュなんかに行ってみたいんですが、ここもアシュラム系の宿泊施設が多いみたいです。
その上、聖地ですから、肉とアルコールは町ごと出ないみたいですよ。

投稿: ヒョウちゃん | 2011年9月 8日 (木) 23時36分

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