下川裕治の著作が送られてきた
<「生きづらい日本人」を捨てる>GR DIGITAL
旅行作家のブログをよくチェックしている。その中に、下川裕治氏のブログもあって、読者プレゼントというものに応募してみたら、先日本が送られてきた。条件としては読後にレビューを書くというものである。
この中には9編の海外で暮らす日本人のドキュメンタリーが収められている。もっとも最初の1編は沖縄那覇の人の話なのだが。海外で暮らすといっても、企業の駐在員とかではなく、派遣切り、リストラ、その他の理由で日本で暮らせなくなった人たちの物語である。
現在の首相が景気のいい話をぶち揚げても、バブル崩壊によって、ここに登場する人たちが現れたのだといってよい。衝撃的だったのは、今や日本の企業がコールセンターまで海外に拠点を移し、わずかなサラリーで日本人を求人していることや、心の病で海外に暮らす人、果ては、チェンマイでホームレス生活をする人などまで登場していることだろうか。
いずれの登場人物も何らかの理由で日本で暮らせなくなってしまっているが、時代や条件がちょっとでもずれていたら、誰もがそうなりうる話でもある。日本で暮らし、日本でサラリーをもらい、たまに海外に遊びに行くことが、なんてラッキーなことなのか。
登場人物たちは、現地人並みのサラリーで、現地人レベルの生活をすることの難しさも見えてくる。それでも明るく生きて現地の生活を楽しんでいるようにも思えてしまうたくましさがある。これはなかなかできるものではない。
ともあれ、こうした面もあるんだなと考えさせられた一冊でした。下川さん、すいません。ワタクシの筆力ではこのあたりが限界です。
最後に下川裕治氏について。
旅の本が好きなもので、書店でこうした本を見つけるとすぐに買って読んでしまうようになって、20年くらい経つだろうか。最初に蔵前仁一の「ゴー・ゴー・インド」に始まり、沢木耕太郎までたどり着くのだが、その中に下川裕治の名前もあった。現在は絶版なのかもしれないが、徳間文庫から一連の貧乏旅シリーズが出ていて、ほとんど持っている。
でも、切なすぎて下川裕治は好きになれなかった。ある日、朝日文庫から出ていた、デビュー作の「12万円で世界を歩く」を読み、面白いなと思った。それからである。講談社文庫の書き下ろし、「週末アジアに行ってきます」や、新潮文庫の「5万4千円でアジア大横断」「格安エアラインで世界一周」などの企画もの、「日本を降りる若者たち」などのドキュメンタリーで確実に自分の中に入ってきたのだ。
とりわけ、昨年夏の旅では、上記の著作の中からインスピレーションを受けて、ピサヌロークからウドンタニーまで行くことができたし、メークロン線も視野に入ったのである。蔵前仁一が雑誌旅行人を長期休刊にし、著作も思うように出ない昨今では、下川さんのこのところの活躍ぶりが楽しみなのである。次には何を書いてくれるのか。あ、最新作の「週末バンコクでちょっと脱力」は書店で購入させて頂きます。
プレゼント記事にトラックバックさせて頂きます。
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コメント
下川裕治さんの旅行記は、むかし週刊朝日に載っていませんでした?最初の頃から、いつも楽しみに読んでいました。この本も読んでみたいですね。
投稿: ろうま | 2013年3月21日 (木) 22時41分
こんばんは、下川さんですか。
十数年前、NHKの「痛快!バックパッカー」という番組で一緒に出演させていただきました。
たしかに蔵前さん、沢木さんと同時代で比較されやすいですよね。
もともとはルポルタージュの出身のライターですよね。
「日本を降りる若者たち」も読みました。
私は下川氏の立ち位置から書く文章がどうも好きになれなくて。
ゴメンナサイ、水をさすようなことを書いて。
投稿: ogawa | 2013年3月21日 (木) 23時15分
ろうまさん、こんにちは。
おそらくそれは、「12万円で世界を歩く」ではないでしょうか。
編集部からホントに12万円だけ渡されて、航空券から何からをそれだけで捻出する旅でした。
こうした企画ものは、下川さんの得意とする分野です。
投稿: ヒョウちゃん | 2013年3月22日 (金) 00時15分
ogawaさん、こんにちは。
ogawaさんも、テレビ出演経験ありなんですね。
蔵前仁一よりひとつ年上で、慶応出身というところが同じですね。
産経新聞の記者だったそうです。
貧しさの底辺みたいな本が多かったのですが、最近の著作はそればかりに固執することがなくなってきたので、読みやすくなってきています。
新潮文庫の三部作、個人的には「5万4千円でアジア大横断」が気に入っています。
ワタクシ的には旅のヒントになっていて、気に入りだしてきているんですけど。
PS「水を差された」とは少しも思っていません。
投稿: ヒョウちゃん | 2013年3月22日 (金) 00時21分
なんといっても「12万円で世界を歩く」が面白かったですね(^^ゞ
あれは週刊朝日最大のヒット作だと思ってます
下川さんが読者からの投稿を読んで怒っているのがあって、ある若い女性から「ここでコーヒーを飲んだのは甘い」とか書いてあったんだそうです
投稿: kimcafe | 2013年3月23日 (土) 17時46分
kimcafeさん、こんにちは。
「12万円で世界を歩く」には詳細な明細書がついていましたからね。
コーヒーだのたばこだのくらいは自分の持ち金で計算してしまえばいいじゃんと思いますが、そこをもらった12万円に付けているところが、きまじめさを感じますね。
下川さんは、「5万4千円でアジア大横断」の頃は、同行者がデジタル機器を次々に取り出すのを「ほーっ」という目で見ていましたが、次の「格安エアラインで世界一周」では自らPCを持ち込んで、ネットでLCCの予約をするところまで行っています。
投稿: ヒョウちゃん | 2013年3月24日 (日) 00時28分