沢木・大沢マラッカでの足跡
深夜特急の足跡を追うVol.7
覚えていますか?このシリーズ。もう1年半ほどやっていなかったのですが、今度の旅でけっこうネタを仕入れてきました。旅のルートを逆戻りするような形でマラッカまで行ったというのも、その検証をするようなところがちょっとあってなのですよ。
まずは、沢木耕太郎本人の足跡。
マラッカに着いたのは夕方。ここでは最初から華僑の経営する旅社に泊まることに決め、中央大旅社という、名前ばかりの小さな宿で、六ドルと言うのを五ドルにまけさせてからチェック・インをした。
部屋に荷物を置くと、私はその足で海に向かった。
(沢木耕太郎「深夜特急」より引用)
<中央大旅店の柱>K7/DA16-50
マラッカにもわずかにインド人街があり、そのはずれのあたりに、「中央大旅店」という名残があります。なんだ、名前が違うじゃないかと思われそうですが、沢木耕太郎は「旅する力」の中で、香港の重慶マンションで泊まった宿の名前を「金宮招待所」と記しているものが、実は「金屋招待所」であると告白しています。
つまり、ノンフィクションではあるが、必要に応じて名前を変えることもあるのです。
<その建物>K7/DA16-50
「中央大旅店」でも「中央大旅社」でも英語名はCentral Hotel。まさか、同じ意味の名前を付けるところが狭いマラッカの町であるとも思えず、確率95%で、ここに沢木耕太郎が泊まったといってよいのではないでしょうか。
ここの入口はすでにシャッターで閉ざされてしまい、ホテルとしてはまったく機能していません。実は、1枚目の柱ですが、マラッカに初めて来たときにも撮影しているんです。ですが、まったく気づかなかった。自分のマラッカ滞在中に、後述する大沢たかお扮する「劇的紀行・深夜特急」での沢木耕太郎が立ち寄る場所を巡っているうちに、「あれはもしかして」となったのです。
このあと、沢木さんはマラッカの夕陽を見に行き、夕食を食べ、映画を見るという記述で、マラッカについてはわずかに文庫本で3ページほど、翌朝にはシンガポールに行ってしまいます。
<オランダ広場>K7/DA16-50
一方、大沢たかおは、クアラルンプールより乗り合いタクシーでここ、オランダ広場に到着します。すでに乗り合いタクシーの中で、乗客にマラッカに行く目的は夕陽を見ることだと話しています。トランクから荷物を取りだした大沢たかおは、スタダイスへの階段を駆け上がり、夕陽を見る場所を探すのです。
で、自分もそこから足跡を追っていこうと思っていたのですが、なんと、スタダイスへの階段が工事中で使えません。上の写真でも緑のネットなどが被せられている様子がわかりますね。しょうがないので、ちょっと遠回りして、スタダイス方面に行ってみました。
<セント・ポール教会跡>K7/DA16-50
階段を駆け上がった次のシーンが、ここで撮影されています。ガイドブックには、セント・ポール教会となっていますが、教会としてはまったく機能していないところですね。ザビエルが死後一時的に埋葬されたことがあるらしく、階段を上り詰めたところに、ザビエル像があります。
ここで、大沢たかおは夕陽の見える場所について人に尋ね、海に向かって走り出すのです。ちょっと設定に無理がありますよね。山をのぼりおりするようなものですから。でも、ここからでも夕陽はよく見えるんですよ。
夕陽を堪能した大沢たかおは、陽の暮れたマラッカで宿を探し、チェックインします。
<Baba House>K7/DA16-50
それが、ババ・ハウスという典型的なプラナカン様式の中級ホテルです。向かいにもHotel Puriというプラナカン様式の中級ホテルがあります。ここは、ジョンカー・ストリートからひとつ南に入った通りです。
「劇的紀行・深夜特急」も1996年の放送でかなり時間が経っているのですが、だいたいのシーンは追いかけることが可能でした。ただし、現在のマレーシアはバスがかなり発達していて、乗り合いタクシーがあるかどうか。
2007年にマレーシアに来たときにはマラッカ・セントラルなどでInterstate Taxiという表記がありました。バトゥ・パハでも水色に塗られたいささか時代めいた大型車がかなり客待ちしていて、これが長距離タクシーだったのではないかと思います。今はよほど地方に行かないとないんじゃないかと思いますが。
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コメント
深夜特急を追っかける旅、いいですね。
だんだん時間がたってくると、当時の建物がなくなってくるでしょうから、早くやらないとおえなくなってしまいます。
旅をしていて、その頃の雰囲気を感じ取れましたか^_^
投稿: スクムビット | 2013年9月 4日 (水) 07時16分
乗り合いタクシーは、実態は白タクだと思います。
繁忙期には、どこからともなく出没します(笑)。
投稿: 伊 謄 | 2013年9月 4日 (水) 08時45分
沢木さんの「深夜特急」だと、かなりの困難を伴いますね。「劇的紀行・深夜特急」だと映像が残っているので、何とかなる部分は大きいのですが。
「深夜特急」のルート上にある国で、自分が訪れていない国は、アフガニスタンとイランだけなんです。
そのうち、未踏のルートは、カトマンズ-パトナ、デリー-ドゥバヤジット、パトラス-ブリンディシ、マルセイユ-マドリッド、パリ-ロンドンくらいでしょうか。
今回取り上げた旅社の柱なんかは、けっこう当時の面影を残しているんじゃないかな。
投稿: ヒョウちゃん | 2013年9月 5日 (木) 00時00分
なるほど、白タクですか。
「劇的紀行・深夜特急」でも、マラッカ-ジョホールバルは「ワゴンの白タク」に乗っています。
自分も前回のマラッカでは、KLに戻るときに、バスのチケットが売り切れていて、乗り合いタクシーに誘われたのですが、なかなか人数が集まらなくて、別のタクシーをチャーターしたのですが。
投稿: ヒョウちゃん | 2013年9月 5日 (木) 00時03分
おはようございます
ヒョウちゃんがこのシリーズを続けてくださるおかげで
「深夜特急」はわりにすぐ手に取れる場所に移動しました
そして取り上げるシーンに合わせて文庫のその箇所と前後を拾い読みしています
DVDより本に手が行きますね
大沢さんより本人がいいのかな?
投稿: trintrin | 2013年9月 5日 (木) 08時16分
中央大旅店もうやってないんですか?
残念ですね(^^ゞ
投稿: kimcafe | 2013年9月 5日 (木) 21時01分
「深夜特急」でのマラッカでの記述は短いですが、印象的ですね。
マラッカの夕陽というのが、象徴的だったんでしょうね。
「深夜特急」と「劇的紀行・深夜特急」は別物ととらえているんですが、どっちも好きなんですね。
沢木さん本人の体験は今となっては時代にそぐわないこともあるのでしょうが、大沢たかおが演じる沢木耕太郎のシーンは、今でもこんな旅もあるんじゃないかと思わせるところがいいです。
投稿: ヒョウちゃん | 2013年9月 5日 (木) 23時06分
「劇的紀行・深夜特急」の撮影時点で中央大旅店が営業していた可能性はありますよね。シャッターは降りていたのですが、無茶苦茶荒れ果てていなかったです。
でも、絵にならなかったのかな。
投稿: ヒョウちゃん | 2013年9月 5日 (木) 23時08分