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2014年4月29日 (火)

果ての岬

深夜特急の足跡を追うVol.12

ゴールデンウィークに突入しました。激しく旅に出たいものの、相変わらずカレンダー通りの勤務なので、この時期旅に出ているひとのレポートを羨望のまなざしで眺めていたりします。

ならば、机上で旅行に出てしまえばいいのではないか。そう考えて昔の画像を引っ張り出し、思いつきで記事を作成しました。

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<サグレスというビール>GR DIGITAL

「ビールを呑まないか」
 袖を下ろしながら男が言った。そういえば、料理を食べるのに一生懸命で酒のことを考えるのを忘れていた。イカのリング揚げにはビールこそがふさわしかった。男は、私が、ええ、と返事をする前に少年に注文していた。
「セルベージャ」
 ビールは、スペインならセルベッサだが、ポルトガルではセルベージャとなるらしい。少年はすぐにそのセルベージャの小瓶を持ってきてくれた。ラベルに「SAGRES」とある。
「サ、グ、レ、ス」
 私がそれを読みながら口に出して発音すると、男は頷いて言った。
「そう、サグレス」
 サグレスとはどんな意味なのか。私は単に話の継ぎ穂にというくらいの気持で訊ねた。
「土地の名さ」
「サグレスという土地?」
「岬がある」
「それはどこですか」
 私は興味を覚えて訊ねた。男はテーブルの周囲を見廻した。書くものを探しているらしい。少年に言いつけ、注文取りに使うザラ紙とボールペンを持ってこさせた。そこにイベリア半島の概略図を描くと、ボールペンの先で突いた。
「ここさ」
 印がついたのは、ポルトガルの、というより、イベリア半島の西南の端の地点だった。
「ここがサグレスだ」
(沢木耕太郎「深夜特急」より引用)

このようにして、沢木耕太郎はサグレスという岬の名前が刷り込まれ、リスボンが「最期の地」となることに納得せず、サグレスを目指すことになるのです。経路はリスボンからラーゴス乗り継ぎのバスでした(というか、デリーを出発以来フェリーを除いてすべて移動はバスなのです)。

自分の場合はリスボンからアルヘシラスを経由しモロッコを目指す旅の途上で、ラーゴスに行ってみることにしました。ですが、ホテルは断られ、駅で声をかけてきた男の家に泊まることになりました。サグレスは日帰りです。

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<サグレス行きのバス>GR DIGITAL

 私の持っているイベリア半島全体がでているような地図だと、ラゴスからサグレスまではバスでさえ一駅くらいの距離に見える。しかし、実際はバスに乗って二十分たっても三十分たってもサグレスに着かなかった。
 外はすでに真っ暗だが、人家の灯りは遠くにポツポツと見えるだけだ。ラゴスから乗った学校帰りの少年少女たちも次々と降りていき、最後には乗客は私を含めて三人しかいなくなっていた。
 バスは一時間半後にようやくサグレスに到着した。
(沢木耕太郎「深夜特急」より引用)

リスボンからのバスは各駅停車ともいうべきもので、ラーゴスにさえなかなか着かなかったようです。自分が訪れたのは夏でしたが、沢木さんは冬で、ダイレクト便はなかったようです。

自分の場合は小1時間で到着しました。沢木さんは要塞まで行こうとしましたが、野犬がいて、引き返します。すでに最終便だったため、戻りのバスはなく、どうしようかというところでしたが、シーズンオフで休業中のペンサオンに宿泊することができサグレスに3泊することになったのです。

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<サグレス要塞への道>MZ-3/SIGMA20mm

 朝食後、私は昨夜とうとう辿り着けなかった要塞に向かった。
 殺伐とした野原に要塞に続く一本道がある。そこを歩いていくと、今日は犬ではなく、驢馬を引いた老人に出会った。
「ボン・ディーア!」
 こんにちは、とポルトガル語で挨拶してみる。さっき鬚の息子から教えてもらっておいたのだ。
(沢木耕太郎「深夜特急」より引用)

サグレスには宿がたくさんありました。夏であるということもあったのかもしれないです。これだったら、ラーゴスで民泊するより、こっちの方がよかったかもと思いました。

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<大西洋>MZ-3/FA35mm

 ふと、私はここに来るために長い旅を続けてきたのではないだろうか、と思った。いくつもの偶然が私をここに連れてきてくれた。その偶然を神などという言葉で置き換える必要はない。それは、風であり、水であり、光であり、そう、バスなのだ。私は乗合いバスに揺られてここまで来た。乗合いバスがここまで連れてきてくれたのだ……。
 私はそのゴツゴツした岩の上に寝そべり、いつまでも崖に打ち寄せる大西洋の波の音を聞いていた。
(沢木耕太郎「深夜特急」より引用)

引用の前半、このフレーズは「劇的紀行・深夜特急」でも取り上げられていて、大沢たかおがつぶやいています。その後、画面はいきなりロンドンの中央郵便局に飛んでしまうのですが。

このあと、宿に戻った沢木さんは夕食も宿で食べることにします。食後紅茶を頼むと、ポルトガル語で紅茶はチャイ、アジア圏の茶など、Cで始まる言葉であることがわかり、これで終わりにしようと決心します。

本当はリアルタイムでこうした場所を訪れることができたらいいのですが。まだこうした場所は数ヶ所あって、とにかくネタがありませんから、たまに取り上げると思います。オリジナルのブログ記事はサグレスという名のビールと岬ユーラシア大陸最南西端-サン・ビセンテ岬です。

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コメント

自分もカレンダー通りですが、4連休だけは確保してお出かけしてきます。4日間というのはヒョウちゃんにはあり得ない日数でしょうが、自分の場合はすでにヒョウちゃんのような長旅は不可能で、3日も普通なのでこれでも十分に満足です。以前、バンコクかクラビかって書いていましたが、バンコク滞在です。でもクラビも行きたくて、5月末に行きます。

サグレスは自分の場合は、ラーゴスよりもっと長距離になるファーロから往復しました。ラーゴスは1時間ほどで駆け足で回りました。バスがサン・ヴィセンテ岬行だったのでよかったです。サン・ヴィセンテとサグレスではサン・ヴィセンテのほうが荒涼感がありました。要塞までは結構歩きましたね。それに要塞の中も。写真を見て思い出しました。

投稿: とんび | 2014年5月 1日 (木) 21時11分

とんびさん、こんにちは。
ま、自分も4連休であることには変わりないのですが、つまらんゴールデンウィークです。
バンコクもクラビも羨ましいです。
クラビには温泉もあって、「地球不思議発見」でやっていたんです。行けるといいですね。

ワタクシもサン・ビセンテ岬は行ったのですが、「深夜特急」関連なので、ここでは省きました。
サグレスはそれなりに賑わっていましたが、夜などどうなんでしょうね。
結構寂しくなるかもしれないですね。

投稿: ヒョウちゃん | 2014年5月 1日 (木) 23時52分

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