沢木さんご宿泊、BPサミラービーチホテル、謎に迫る
深夜特急の足跡を追うVol.34
<BP Samila Beach Hotel & Resort>KP/DA18-50mm
一応、沢木耕太郎氏の「深夜特急」とテレビドラマ「劇的紀行・深夜特急」の追っかけみたいなことをやっております。
当然ながら、沢木氏がソンクラーで泊ったとされるのがここですね。深夜特急の中では「サミラーホテル」という名前になっていますが、同じでしょう。サミラービーチにあるホテルはここだけで、「白亜の殿堂」のように見えたとのことですので、間違いありません。99%合っていると思います。
ということで、今回1泊だけしてみました。
<魚の部屋番号>KP/DA18-50mm
ハジャイからロットゥとモタサイで到着しました。一応、タイでは高級に分類されるホテルだと思います。BPというグループ名が冠されています。ハジャイにあと2軒BPグループのホテルがあるようです。もう1か所どこかにあったようですが、メモを控え忘れました。ま、グループといってもホテル事業はそれほど大きくないようです。その他の関連会社についてはよくわかりません。
ここが肝心なんですが、高級に分類と書きましたが、それは地方レベルであって、ホーチミンのマジェスティックやジョージタウンのイースタン&オリエンタルほどの値段はしません。ぶっちゃけ、1泊5200円ちょっとでした。もしかしてAgodaのポイントを使用したかもしれませんが、まあ、大したことはありません。
それでも、一応高級ですから、かなり早い時間にやってきてすぐさま部屋を用意してくれました。しかもですよ、予約ではマウンテンビュー(カオタンクワンが見える)だったんですが、シービューにアップグレードしてくれました。このあたりの対応は柔軟で好感が持てます。
今回のホテルレビューはまるで欠点がないので、部屋の様子は画像で紹介しますけれども、一味違った持論を展開したいと思います。
<客室、広いです>PowerShot
深夜特急は若き頃の沢木氏がデリーからロンドンまでを乗り合いバスで旅するという実体験に基づいて書かれています。その前段階でエアインディアの途中寄港地である、香港とバンコクに立ち寄り、バンコクからは陸路でシンガポールまで行くということも取り上げられています。この、ソンクラーはチュムポーンから乗った列車で腕に入れ墨のある男性から「ソンクラーはいいぞ」といわれてやってきた記述があります。
こういうところで勘違いしてしまうのが、深夜特急はノンフィクションですべて実体験に基づき書かれていると思ってしまうことです。7割くらいはそうかもしれないんですが、ワタクシも長年深夜特急を研究してきましたので、ちょっとした疑問が生まれたんですね。
<客室、ベッド側から>PowerShot
ここでいい切ってしまいましょう、深夜特急は実体験を基にした小説であると。
沢木氏はその時海外に出たのが3回目です。最初は柳済斗vsカシアス内藤のボクシング東洋ミドル級タイトルマッチを取材するため韓国に行き、2度目は磯崎新氏のインタビューのためハワイに行っただけ。純粋初めてではなかったですけど、いきなり香港でベンツの君に勝手に案内されて重慶マンションに長逗留したり、チュムポーンで同乗してきた若者に案内されたホテルが怪しげだったり、極めつけはペナンの同樂旅社ですね。
こうも偶然にいくら当時のアジアとはいえ、そのような曖昧宿ばかりにたどり着かないのではないかというのが疑問の一つです。
<冷蔵庫、瓶のミネラルウォーターのみフリー>PowerShot
ヒントはシンガポールでお世話になる現地駐在員です。沢木氏は旅に出るまで、TBSを母体とする「情報調査」という月刊誌をベースに活動していました。そのTBSのネットワークを駆使というか、香港、バンコク、クアラルンプールなどの特派員の連絡先くらいは控えてきたことと思います。その情報を基に、重慶マンションや曖昧宿にもぐりこんだのではないかというのが、ワタクシの推測です。
同樂旅社についていえば、ペナンのフェリー乗り場から徒歩で1時間近く歩かねばたどり着きません。その間に沢木氏が満足しそうな安宿はかなり存在したはずです。
で、このホテルに戻りますと、ハジャイで列車を降りて乗り合いタクシーで乗りあったおばさんの話でやってきたことになっています。ホテルの外観でかなり悩み、フロントで値段をきいて一瞬やめようかと思ったとありますが、フロント階に降りてきた日本人の現地駐在員に「このホテルはどうですか?」などときいて、結局は泊まることになるんです。
<当然バスタブです、別にシャワーも設置されてました>PowerShot
現地駐在員、またしても偶然のようですが、TBSの特派員なのではないかと考えます。つまり、バンコクあたりでも連絡は取っていたと思いますが、ひとつ慰労も兼ねてソンクラーで落ち合おうという話があったのではないかと。
ソンクラーですが、別にホテルはここだけじゃありません。現在のロットゥ乗り場からすぐのところに、安そうなホテルやゲストハウスもあります。わざわざ、「サミラーホテル」をまるで狙ってきたようにも思えます。
<洗面セット>PowerShot
沢木氏は「若き実力者たち」の印税をそっくり持って旅に出たといわれています。当時のこのホテルの値段がいくらかわかりませんが、1泊だけなら、問題ないでしょうし、TBSがらみでいえば、高度成長期の海外で働くサラリーマンのことですから、宿泊費、滞在費も出してくれていた可能性はありますね。
偶然といえば、インドの当時カルカッタに到着し、さてホテルはどうしようというときに、エアインディアのディレイで乗り継ぎに失敗したバングラデシュ行きの青年に用意されたオベロイホテルにただで泊ってしまうというのも、できすぎでしょうか。
また、テヘランで磯崎新夫妻が泊まっていたホテルの名前がわからず、ホテルリストからかたっぱしに電話して居所を見つけるというのも、かなりすごいことです。
<バルコニー>PowerShot
まあ、深夜特急の中では実際に訪れていない場所については想像で書いていないので、半分はルポルタージュ的に記述を起こしていると思いますが、要は新聞の連載小説ですから、読者を惹きつける何かインパクトのあることも必要だったのだと思います。
ワタクシ的にはこれからも、沢木氏が深夜特急やその後の関連作品等で訪れた場所については今後も探っていこうと思ってます。内容が半分フィクションであっても、彼が足跡を残したことには違いないのですから。
<ウェルカムフルーツ>PowerShot
ホテル紹介にちょっと戻ります。
このフルーツはチェックイン後、昼食を食べに行き、カオタンクワンに行き戻ってきたら置いてありました。タイでリンゴというのも、なかなかすごくないですか?
<朝食券>PowerShot
全室朝食付きです。1室2名なので、券は2枚です。ここでのワタクシの名前はAGODAという人らしい。
<ホテルレストラン>PowerShot
ごく普通のビュフェです。
その例の駐在員夫妻とこのレストランで会話したことになっています。このホテルにはほかにレストランがないので、ここで間違いないでしょう。夕食はここでと考えていたんです。ですが、なにかの祝いの宴に使用されていて、夕食はあきらめました。
2011年の元旦にここでとんびさんと食事してますから、まあいいかと。
<朝食の一部>PowerShot
あとは、コーヒーとジュース、ごく普通のビュフェの内容を取って食べました。警察の制服やポロシャツ(背中にどこかのポリスと書いてある)を着た人が多かったです。
沢木氏がソンクラーで残した足跡はホテルくらいで、あとはサミラービーチで泳いだとあります。ちなみに、ビーチで海に入っている人はふたりしかいませんでした。街の観光もしてませんね。
今回ちょっと変わったアプローチでしたが、いかがだったでしょう。
今日のコンタイ
<祈る>KP/DA18-50mm
カオタンクワンにて。そういや、ソンクラーやハジャイではモスクを見ませんでしたね。どこかにあると思うんですけどね。
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コメント
サミラービーチホテル、2011年の元日にヒョウちゃんと訪問したこと、よく覚えていますよ。なつかしいですね。あのときは昼食時でしたが、食堂はガラガラでしたね。こちらも、もしタイ南部の旅でソンクラー行って、このホテルに泊まりたいなって思いました。
投稿: とんび | 2019年10月24日 (木) 23時20分
とんびさん、こんにちは。
ま、ソンクラーに出かけてあの特徴のないレストランで食事だけして帰るという人もいないでしょうから、ガラガラでしょうね。
自分の泊まった時のように、何かイベント的に使われることのほうが多そうです。
BPサミラービーチホテルは泊まって損はないと思います。
ただソンクラーはハジャイ方面からアプローチしないと生きにくいという特徴はありますね。
投稿: ヒョウちゃん | 2019年10月25日 (金) 23時08分
確かに高級なサミラーホテルにいきなり泊まるのは考えられないですね
ペナンの同楽も一番遠いとこですもんね
ま、小説家ですから実体験は5割、半分は狙ったものじゃないでしょうか(^^ゞ
投稿: kimcafe | 2019年10月27日 (日) 13時46分
kimcaefeさん、こんにちは。
アマゾンからありがとうございます。
香港の重慶マンションではたどり着き方にいろいろ疑問がありますが、実際滞在したんだろうなと思います。
その後の東南アジアではかなりインパクトのある話が登場しますが、絶対的な情報が不足していたんでしょうね。
ソンクラーなんて普通出てきませんって。
ペナンも情報もらって行ったんじゃないかと。
投稿: ヒョウちゃん | 2019年10月27日 (日) 15時23分
ここの記事、大事なところだと
思っていました。
兼高かおる、世界の旅との
連携です。
その遺産は
アマゾンとかTBS オンデマンド
とかで、大体 1話 ¥200くらいです。
全話は保存できていないみたいですが、
バンコクのストーリーは
深夜特急よりも相当古いものが
見られます。
でもタイ南部やマレー鉄道の
ストーリーは私の検索の限り、
ありませんでした。
ちなみに子供の頃、少しだけ
視聴した記憶はあります。
が、今から有料で同番組を楽しむ事は
できるのでしょうかね。
投稿: ペンタのP | 2020年4月15日 (水) 22時01分
ペンタのPさん。
「兼高かおる世界の旅」はCS TBSで第二・第三土曜に放送しているみたいでした。
先週の土曜がペナンだったみたいです。
見たいですが、BSもCSも無縁ですわ。
兼高かおるに「世界の旅」を基にした著作があります。
新潮文庫から出ていて、所有してますが、タイ南部は記述がなかったと思います。
高度成長期の時代ですから、欧米や秘境アフリカ、南米あたりに視点が向いていたと思いますよ。
投稿: ヒョウちゃん | 2020年4月15日 (水) 23時27分
ここの流れ不自然なんですけど、まさかの共通点のあるやり方でにここに泊まった友人がいますので、可能性はあるのかなと。
共通点は
東南アジア初めてで仕事辞めて縦断中
ソンクラーの名前を知らなかった
現地で紹介されて連れてかれた
高そうなわりに安宿+150Bぐらいだったんで思い切って
めっちゃよかった
+深夜特急は知らない
嘘をつかない話を盛らない人なんで、この「サミラホテルイベント」は荒唐無稽でもないと思っています。
投稿: たけ | 2022年5月 8日 (日) 11時32分
たけさん。
はじめまして。コメントありがとうございます。
最初に書いているように、沢木氏はここに泊ったことは間違いないと思います。
あれだけ安宿にこだわった沢木氏ですが、まあ「1泊くらいいいかな」ということもあり得ます。
で、躊躇している間に日本人の宿泊客が降りてきて、値段をきき、泊まってみることにする。
レストランで食事をしていると、その日本人夫妻+母親がやってきて、一緒に食事をする。
そうしたら現地駐在員であると。
偶然が多くないすかね。
>」嘘をつかない話を盛らない人なんで、この「サミラホテルイベント」は荒唐無稽でもないと思っています。
自分も沢木ファン、それもかなり傾倒しています。
ですがね、「深夜特急」は彼の旅行中のメモや、小島一慶にあてたはがきが元になっているにせよ、すべてがノンフィクションではないであろうというのが、自分の考えです。
特にペナンの同樂旅社については、フェリー乗り場から徒歩で1時間はかかるようなところにあるんですね。
これは、場所がわかっていないと絶対にたどり着けないと思います。
ま、そんな感じで反応させてもらいましたが、年々沢木さんが足跡を記した場所は減っていっているはずです。
そういうところを訪れるというのを、これからのライフワークみたいにするつもりでしたが、コロナですよ。
このカテゴリーの記事はまだありますので、よろしかったら覗いてみてください。
投稿: ヒョウちゃん | 2022年5月 8日 (日) 19時38分