カルトな洋楽カバーPart2
かすてら音楽夜話Vol.88
<アラワイ運河>KP/DA21mm
梅雨明けしましたね。そして連日暑いです。
そして、ネタ切れの定番、ミュージックトークのお時間がやってまいりました。連日の半自粛状態ですから、音楽のネタはいくらでも涌いてまいります。今回、カルトな洋楽の日本語カバー後編です。
前編はごく普通のシンガーが洋モノを日本語で歌う意外な人の組み合わせでご紹介いたしました。今回はアレンジが凝っていたり、裏方に凄いミュージシャンが演奏していたりする、音楽性の高いものです。でも、かな~りカルトです。
では行ってみましょう。
1曲目
小林麻美「雨音はショパンの調べ」でした。
原曲はイタリア人歌手のGazeboの自作曲「I Like Chopin」です。1983年にヨーロッパ各国でヒットし、日本でもオリコン洋楽チャート1位、週間シングルチャートでも9位にランクした曲です。ユーロ圏のヒット曲は比較的鳴り物入りで登場するのですが、日本では期待外れというか半分コケた人たちが多いですね。アラベスクだの、ボニーMだの、ジンギスカンなどなどありますけど、ほぼディスコ御用達みたいな使われ方をしました。成功したといえるのはABBAくらいでしょうか。
それでも、ガゼボは成功したほうでしょうか。ワタクシ的にはあまり聞き覚えがないのですが。
麻美さんの「雨音はショパンの調べ」ですが、日本語詞はあのユーミン(松任谷由実)が書いているのです。リリースは1984年でした。当時麻美さんは30歳。以前はアイドルとして1972年に「初恋のメロディ」でデビューしていますが、アイドルとしては大成せず、モデルや女優として活動していました。彼女の出演作として1980年の「野獣しすべし」があり、松田優作に射殺されてしまうという役を演じています。
アイドルとしてデビューした時もハイレベルな美人でしたが、この曲をリリースしたころはかなり退廃的な気配を纏っております。いわば大人の女ですね。いやあ、デビュー当時はすごい可愛かったですね。単純比較はできませんが、今でいうなら白石麻衣か齋藤飛鳥かといったところです。
この「雨音はショパンの調べ」の後しばらくは歌手活動を継続していましたが、1991年に所属事務所の社長、田辺昭知と結婚・引退いたしました。
2曲目
金沢明子「イエローサブマリン音頭」でした。
原曲はもちろんビートルズの「Yellow Submarine」です。これを音頭にアレンジしたのは、植木等やクレージーキャッツのほぼ全曲を作曲した萩原哲晶です。そして、日本語詞はあの松本隆ですね。プロデュースは大瀧詠一が担当しました。1982年のリリースです。
イントロや間奏はいかにも萩原さんらしさが出ています。萩原さんは東京音楽学校(現在の芸大)出身で、非常に真面目な人だったそうです。その真面目な人がコミカルな曲を真剣に取り組んだわけです。代表作「ハイ!それまでヨ」のムード歌謡調からのどんでん返し、ツイストで締めるあたりが真骨頂でしたね。なお、萩原さんはこの曲が遺作となりました。
アレンジとは別に曲中に様々な効果音が入っていますが、これは大瀧さんの仕事でしょう。原曲の「イエローサブマリン」も同様の遊びが入っていて、これを見事に踏襲しているわけです。
そして曲のエンディング、数名がわけの分からないことをつぶやいたり叫んだりしています。一番最初の「はざまけんじ」はビートルズの「イエローサブマリン」のカップリング「Eleanor Rigby」の歌詞に登場する「ファーザー・マッケンジー」からいただいたものです。これは杉真理が担当しています。次の「魚雷発射用意!」は伊藤銀次ですね。次の短い言葉はディレクター(平井夏美)と大瀧詠一で、ラストの叫びは佐野元春です。当時並行して製作されていたコンピレーションアルバム『Niagara Triangle Vol.2』のメンバーと佐野のバックバンドにいた伊藤銀次が加わったものです。
聴いただけではおふざけで作った感じですが、手はかかっていますね。こういうものほど、手抜きしてはいけない丁寧な作りが必要なのでしょう。一応、この曲はポール・マッカートニー公認だそうです。それにしても、金沢さんよくこのオファーを受けたものです。
3曲目
忌野清志郎「サントワマミー」でした。
原曲はベルギー人歌手のSalvatore Adamo(アダモ)の「San Toi Ma Mie」です。曲もアダモが書いてます。アダモ自身も「雪が降る」などを日本語でリリースしたりしてまして、日本語ばかりでなく、各国の言葉で自分の曲を歌っているみたいです。
「サントワマミー」は越路吹雪が最初にカバーしていて、日本語詞は岩谷時子です。ただ、越路ヴァージョンは元々男性の視点で書かれたものを女性に置き換えて岩谷さんが書きました。清志郎は岩谷さんの詞をもとに独自に自分で修正したものを歌っています。見事にロックになってます。
元々は全曲洋楽カバーの『Covers』というRCサクセションのアルバムに収録されていたものです。YouTubeの日比谷野音の映像ではすでにRCは解散していたので、ソロの表記なんですね。
この『Covers』というアルバム、原子力発電所批判の内容だったり、かなりの社会的メッセージを含んでいます。当時RCが所属していたのは東芝EMIというレーベルで、親会社の東芝が原発を作っていることからお蔵入りし、かつて所属していたキティレコードから発売になりました。
清志郎はこれ以降、さらに社会的なメッセージを強めていくのですが。現在の日本のコロナの状況を、清志郎が存命だったら間違いなく曲にして我々に届けてくれたと思います。
さてさて、本当はもっとすごいカバーがあるんですが、なんとYouTubeに上がってませんでした。その曲はザ・ナンバーワンバンド「六本木のおじさん」です。ザ・ナンバーワンバンドはあの小林克也がリードヴォーカルを務めるプロジェクトですね。「六本木のおじさん」はOtis Reddingの「The Dock Of The Bay」のカバーです。
内容は元歌からものすごくかけ離れています。毎日六本木で遊ぶに遊べず女性にもてあそばれて…というものです。そのおじさんがふと我に返り、久しぶりに自宅に帰ったら妻がいなくて、年老いた母親だけが待っていたので、おじさんは妻を探しにまた出ていき、二度と戻ることはなかったという、セリフで語られます。そして、最後に年老いた母親に見えたのはおじさんの妻でしたという超ブラックな内容。すごい引っかかる曲なんです。誰か音声だけでもいいからYouTubeに上げてくれないかな。
★引き続き、リクエストお待ちしています。コメントもらえますと、さらに嬉しいです。
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コメント
小林麻美ですか。ついに来ました。
この方、骨折や胃潰瘍で若い時に
消えかけましたね。
活動後期は大変好きでしたが、
モデルとしての仕事が当たり、
私には余り縁がなかったです。
それにしても細身で色白なんて、
遠目は良いのですが。
実際に自分で付き合ったら
つまらなかったですけど。
投稿: ペンタのP | 2020年8月 5日 (水) 17時56分
ペンタのPさん。
そう、若い時消えかかったんです。
デビュー曲の「初恋のメロディ」は、筒美京平&橋本淳コンビで名曲なんですが、ダメだったですね。
ちょっと先輩に小柳ルミ子とか天地真理がいたからかな。
でも、芸能事務所どっぷりじゃないところがいいですけどね。
一時松田優作がマイブームな時があって、「野獣死すべし」で現れたときはちょっとびっくりしました。
コメントのタイプミスだと思いますが、最後のほうで、いかにも、ペンタのP氏が麻美さんと付き合っていたような書きっぷりですが、大嘘八百ですよね。
投稿: ヒョウちゃん | 2020年8月 6日 (木) 00時39分
そういう読み方になるとは意外
でしたね。勿論芸能人とは、関係ない
です。大体10歳より年上です。
都内生まれの似たような方と接点が
あっただけでした。
それより、[悲しみのスパイ]という次作は
詞が玉置浩二、曲が松任谷由実で名作?
なんですがね。事務所が歌手として売る気が
なかった為この曲もショパンも映像が
希少で残念です。
投稿: ペンタのP | 2020年8月 6日 (木) 12時14分
ペンタのPさん。
しつこいようですが、10歳程度の歳の差、あの当時であれば何でもないんじゃないすかね。
今ならボランティア活動あるいはNGOですがね。
(↑もちろん冗談です)
ま、逆パターンで田辺エージェンシー社長は14歳差ですか。
「悲しみのスパイ」詞と曲が逆です。
これが、ユーミン作曲であったなら、どこまで行ったことやら。
投稿: ヒョウちゃん | 2020年8月 6日 (木) 15時27分
すいません。合間の時間で書いている
ので、1行も2行も足りません。
途中で、似たような(似せていた)
知人とのハナシに変わっています。
その説明をせずに、最初からの感想を
続けたようにみえています。
自分のことなので、色々省いてしまいますが
次からキチンと書きます。
さて当時はウェブがないので、小林麻美
が仕事を続けていても不明でした。
投稿: ペンタのP | 2020年8月 6日 (木) 22時41分
ペンタのPさん。
なんかかみ合わないなと思いましたが。
了解です。
まあ、麻美さんは社長夫人になりましたので、過去の過去の映像などは、垂れ流しでない限り、事務所的には関知したくないんでしょうね。
麻美さんは家庭に入ってますが、一時期テレビに出たみたいですよ。
よろしかったら、弘田三枝子も一言お願いします。
投稿: ヒョウちゃん | 2020年8月 7日 (金) 21時06分
小林麻美さん、マイピュアレディのポスターがとっても欲しかった!あの尾崎亜美の曲とCMがとても印象的でした。
それまでの小林麻美さんのイメージって水島新司氏の漫画でやたら出てくる「初恋のメロディー」押しが強烈でした。相当ファンだったみたいで、漫画の中にも「麻美荘」ってアパートがでてくるくらい。
野球狂の詩の水原勇気のモデルは小林麻美だと思う(木之内みどり説もあるが私はこっち押し)
金沢明子さんは「タケちゃんマン音頭」も外せない(笑)
キヨシローはたしかにこの頃から社会派メッセージを入れるようになってきましたね。
唄に対する思いも変わってきたように感じました。
自身の病気を知るようになった時期なのでしょうか。
サントワマミーは色々な方がカバーしていますが、私の好きなヴァージンVSのカバーも悪くありません。
投稿: lastsmile | 2020年8月12日 (水) 11時55分
lastsmileさん。
水島新司の「ドカベン」だったかで、山田の妹、さっちゃんが「初恋のメロディ」を歌うシーンがあったような。
それだけ、気に入っていたんだろうなと思います。
「初恋のメロディ」は橋本&筒美という名コンビの作品で、出来もすごくいいんですが、なんでヒットしなかったんだろうと思います。
当時、TBSラジオで「ヤングタウン東京」という、ライヴの放送があって、麻美さんが出てくると、場内すごい熱狂でした。
当時のファンはやっぱりシングルレコードをやたらと買えないくらいの経済状況だったのかなと。
また、麻美さん自身が体調を崩したり、それほど芸能活動に積極的ではなかったということも、影響してますかね。
「初恋のメロディ」、のちに森尾由美がカバーしてますが、やっぱり麻美さんヴァージョンがのほうが、素晴らしいです。
金沢さん、キャリア長いですね。
民謡歌手なので、当然といえば当然。
「おしん」とか「ポケモン」とか、時代の節目節目でさりげなく登場してますね。
清志郎はコロナ禍の今こそ、メッセージを込めた曲を出してほしいのですが、叶いませんね。
ああいうことができたというのも、相当の覚悟ができていたということですね。
亡くなる数年前に、イベントで登場したことがあって、現場で見てましたが、ああいうことになるとは想像もできませんでしたね。
あがた森魚は、登場してきたときは、なんて暗い奴だとか思ってました。
ヴァージンVSではいい意味、裏切られましたね。
投稿: ヒョウちゃん | 2020年8月12日 (水) 17時49分