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2020年9月19日 (土)

史上最強の職業作曲家

かすてら音楽夜話Vol.93

Tsushumi

<筒美京平氏>

今回のテーマは日本の歌謡史においてこの人を抜きには語れないという人物です。

今年のNHKの朝ドラ「エール」では古関裕而氏を取り上げております。そのほか、国民栄誉賞の古賀政男、服部良一、吉田正、遠藤実等々、昭和の有名作曲家は数多くいますが、1940年生まれの存命人物である筒美京平さんをワタクシとしては「史上最強の職業作曲家」と言い切ってしまいたいです。

今すぐ国民栄誉賞をあげてもいいと思うぞ。

なんと、自身の手掛けた曲の総売り上げが7560万枚で1位です。ちなみに2位は7148万枚の小室哲哉ですね。

京平さんは東京生まれで中学から大学まで青山学院に在籍していました。大学ではジャズバンドでピアノを弾いていたそうです。音楽的教育は幼少期から習っていたピアノだけです。そのバンドの1年先輩(やはり青学在学)のウッドベース担当が橋本淳氏でした。

卒業後はレコード会社に就職し洋楽ディレクターになりました。一足先に作詞家として活動していた橋本氏の紹介ですぎやまこういち(フジテレビ社員、作曲家)に出会い、作曲・編曲の道に入ることとなりました。

初めて世に送り出した作品は1966年の「黄色いレモン」(作詞:橋本淳)でした。1968年には早くもいしだあゆみの「ブルーライトヨコハマ」(作詞:橋本淳)でオリコンシングル週間チャート1位を獲得します。年代別で見ると、1960年代、1970年代、1980年代、1990年代、2000年代とオリコン1位を獲得していて、10位以内の曲を含めると、2010年代まだ記録が伸びているのですね。

日本レコード大賞は尾崎紀世彦の「また逢う日まで」とジュディ・オングの「魅せられて」で2度受賞しています。

1960年代は橋本淳氏との名コンビでほとんどの曲を様々な人に提供していました。そんな中でも橋本氏以外の作詞でしかもテレビアニメの主題歌というものがあります。お聴きください。

 

テレビアニメ「怪物くん」のテーマソング、「おれは怪物くんだ」でした。

作詞は藤子不二雄です。これ、コンビ解消以前の名義ですが、正確にいうと我孫子さんのほうですね。リードヴォーカル(といっていいのか)は声優の白石冬美さんです。

アニメではやはり藤子不二雄作品(今回は藤本さんのほう)で「パーマン」の劇中歌「パーマン2号はウキャキャのキャ」も担当しています。作詞は藤本さんです。

そして現在も放送されている「サザエさん」のオープニング曲「サザエさん」とエンディング曲「サザエさん一家」(それぞれ作詞は林春生、歌は宇野ゆう子)も京平さん作品です。「怪物くん」が1968年、「サザエさん」が1969年となります。

1970年代になると、橋本氏以外ともコンビを組むようになります。

 

太田裕美で「木綿のハンカチーフ」でした。作詞は松本隆で、松本の初のヒット曲です。発売は1975年です。

こちらは150万枚のミリオンセラーとなりましたが、同時期にリリースされた「およげ!たいやきくん」に阻止され、オリコンシングルチャートでは2位どまりでしたが、名曲ですよね。

京平さん自身も後年のインタビューで「また逢う日まで」「さらば恋人」(堺正章)と「木綿のハンカチーフ」が気に入っているとの発言がありました。

松本の作詞も男女の掛け合いを女性アイドルひとりが表現するという、それまでになかった作品になりました。ちなみになんですが、あの宮本浩次もシングル「P.S. I Love You」のカップリングでこの曲を収録しましたし、「木綿のハンカチーフ」を含む全曲カバーのアルバム(しかも全部女性の曲)を近々リリースします。

1980年代に入ると、男女を問わずアイドルへの提供が増えてきます。

 

松本伊代で「センチメンタル・ジャーニー」でした。作詞は湯川れい子で1981年の作品です。

こちらの詞は「自分を名前で呼ぶ」、「♪伊代はまだ、16だから」というところですかね。ま、京平さん自身とは直接関係ないんですが。ちなみに、2020年現在、「♪伊代はもう、55だから」とのことです。

「センチメンタル・ジャーニー」はオリコンチャート9位どまりでしたが、インパクトありますよね。なにしろ、40年近くなっても松本伊代の代表曲としてだれもが覚えていますしね。

それ以前にも、新御三家(野口五郎、西城秀樹、郷ひろみ)、新三人娘(小柳ルミ子、天地真理、南沙織)等には曲を提供してきましたが、80年代からは期待の新人に曲を提供するようになります。

すなわち、柏原芳恵や早見優、中山美穂などなど。また、C-C-Bや少年隊などからも依頼がありました。

これは、京平さんの曲なら大丈夫という、いわば安全パイ状態ですね。でも、京平さんからしてみれば「絶対にこけることができない」ものすごいプレッシャーですよね。

しかし、京平さんは曲を依頼してきた相手(事務所やプロデューサー、シンガー)のことをしっかりとリサーチして、相手が自分の曲にふさわしいか判断するようなこともあったそうです。そして、曲を提供してもたまにレコーディングスタジオにやってくることもあったそうです。また、作詞家との間で、言葉を手直しするようなアドバイスもあったそうです。そこまでして、曲を完璧に近づける執念のようなものを感じますね。

1990年代からはドラマとのタイアップ曲が多くなりました。2000年代、2010年代に入ると提供曲は確実に少なくなってきます。それでも、2003年にTOKIOの「Ambitious Japan!」をオリコン1位に送り込んでいます。

冒頭で手掛けた曲の総売り上げのことを書きました。2位の小室哲哉ですが、安室奈美恵やglobe、華原朋美などの売り上げがでかいです。また、彼はレコード大賞を4回受賞していますが、一過性のものであり、筒美京平作品と比べると薄っぺらであるといい切ってしまいましょう。筒美作品は心に刻まれていますが、小室作品はほとんどどこにも残ってないです。せいぜい美里姐さんの「My Revolution」くらいだな。

京平さんの作品は年々少なくなってくるのは仕方ないことかもしれませんが、これからも年に数曲でいいので、珠玉の作品を送り込んでもらいたいものです。

今回取り上げたのは3曲だけでしたが、個人的に好きな曲はもっとあるし、その中で新しいテーマも見つかっておりますので、京平ワールドがまた顔を出すと思います。

ちなみに、かすてら音楽夜話で取り上げた筒美京平作品は次の通りです。リンクもつけておきます。

桑名正博「セクシャルバイオレットNo.1」
尾崎紀世彦「また逢う日まで」、ズー・ニー・ヴー「ひとりの悲しみ」
弘田三枝子「渚のうわさ」
欧陽菲菲「恋の追跡(ラヴ・チェイス)」

★引き続き、リクエスト、ご要望等お待ちしています。

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コメント

凄いですね。
漠然とヒットが多いと思いましたが
いしだあゆみさんまで遡るとは。
”コロンバス”レーベルでしたね。
さて元々、歌うことはありませんが
「木綿のハンカチーフ」は好きな10曲に
入ると思います。ちなみにCSとかで、ミヤジの
この曲とオリジナルを続けて流したんです。
滅茶苦茶、耳に残っているんですが。
敢えて自発的に聞くのは、つらい曲ですね。
まあ、今じゃTV電話もGPSもLCCもありますから
こういう恋愛もあり得んのですけれど。

投稿: ペンタのP | 2020年10月 4日 (日) 13時31分

ペンタのPさん。
京平さんは若くして作曲家デビューし、その後50年以上クオリティの高い仕事を続けているということの証明ですね。
先月の宮本浩次の露出具合は凄まじいものがありました。
それまでも、エレカシのニューシングルやニューアルバム発売時にはせっせとテレビに出ていたんですが、アミューズ(サザンやあの三浦春馬と同じ事務所)に移籍してからは、それがもっと加速された感じです。
ま、すでに手紙を書くという行為はなくなりつつありますが、もらったらそれなりに感情が移入するんじゃないすか。
こういうことは時代が変化しても変わらないでしょう。
ステキなことと思います。

投稿: ヒョウちゃん | 2020年10月 4日 (日) 21時51分

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