追悼、Edward Van Halen
かすてら音楽夜話Vol.95
アメリカのハードロックバンド、Van Halenのギタリスト、Edward Van Halen(エドワード・ヴァンヘイレン)が咽頭がんのためお亡くなりになりました。
かつて、ここでもヴァンヘイレンを取り上げました。その時彼が癌の治療を継続していることはわかっていたのですが、あまりにも若い死です。享年65歳。
エディはギター(エレクトリックギター)を両手の指を使って弾くいわゆる「ライトハンド奏法」で知られます。ただ、この呼び方は和製英語というか日本だけの呼び方で、あちらでは「タッピング」(弦を弾くのではなく、指で押さえつけるようにすることにより音を出すこと)の一つとして理解されていますね。
タッピングはギター演奏中にギタリストがフレーズの合間に取り入れることはありますね。ただ、エディの場合はこれをすさまじい速さで連続して行いました。そういう弾き方をそれまで行う人がいなかったわけで、いわばギター演奏の革命ともいえます。(この奏法はアコースティックギターのようにヘビーゲージの弦では音がほとんど出ないため、エレクトリックギターのように、ピックアップで音を拾い、アンプで音を増幅することでしか実現しません。)
また、エディは普段の演奏では右手にピックを持っているので、そこからライトハンドに切り替えるとき、親指と人差し指の間にピックを挟んでいるのでしょうか。これまた、技術がいりますよね。
それでは、エディの演奏を映像から偲びましょうか。
1978年のデビュー曲「You Really Got Me」でした。
これはイギリスのバンド、Kinksのカバーですが、もはやヴァンヘイレンの曲ともいっていいほどです。映像はおそらく、アメリカのテレビ番組でのライヴですが、デビュー当時日本では音源は入ってきていたものの、映像となるとさっぱりです。ま、それはほとんどどのミュージシャンやシンガーについてもいえるのですが。
そのころ、真冬でしたが、月食だったか流星群だったかの天体観測のため、仲間内で市内の某所にテントを張り、夜通し空を見ていたことがありました。寒くてたまりませんでしたが。それを凌ぐのにラジオをかけFENだったか、ラジオ関東(当時)のアメリカントップ40だったかを流している最中にこの曲がかかったのを覚えています。
今なら、迷惑行為で通報されるところです。当時は人気もないような荒れ地でテントを張っていたので大丈夫だったんですね。やあ、いい時代ですね。
1982年のシングル、「(Oh) Pretty Woman」でした。
こちらも、Roy Orbison(ロイ・オービソン)の1964年のビルボード1位獲得曲のカバーです。のちにリチャード・ギアとジュリア・ロバーツ主演の映画「プリティ・ウーマン」の主題歌としてロイ・オービソンの曲が使用されました。結果的にかつてのスター、ロイ・オービソンが復活するきっかけともなった曲です。
こちら、プロモーションビデオになってますね。すでに、アメリカではMTVというミュージックビデオを流すテレビ局もできていましたし、日本でも「ベストヒットUSA」という番組が映像とともに英米のヒット曲を紹介するようになっていました。つまり、ヴァンヘイレンも顔がわかるようになってきたのですね。
ただ、当時のプロモーションビデオはこのようにストーリー性を持たせたものが多く、バンドが演奏しているシーンがないというのが残念です。特にこの映像、二分脊椎の人物を登場させるなど、現在ではテレビでは流せませんね。
1984年のビルボード1位獲得曲、「Jump」でした。こちらは、メンバー4名の共作となります。ついに、オリジナル曲でトップに輝くことができたのです。
映像はライヴ風ではありますが、プロモーション用のもので、音源はオリジナルシングルと同じです。この曲が収録された『1984』からはシンセサイザーも取り入れられました。担当するのはエディでしたが、実際に演奏するときはどうするのか興味がありますね。まあ、サポートプレイヤーを入れるんでしょうが。
「You Really Got Me」と「Jump」ではエディの「ライトハンド奏法」が映ります。それをもっと堪能できるのが次の映像です。
マイケル・ジャクソンの「Beat It」という曲のギターソロです。画質悪いですが。
当時のマイケル・ジャクソン、飛ぶ鳥を落とす勢いです。この曲を含むアルバム『Thriller』はオリコンアルバムチャート1位になりましたが、同時期にリリースされたヴァンヘイレンの『1984』はマイケルにずっと阻止され2位どまりという話も付け加えておきましょう。
「Beat It」にエディが起用されたのはやはりそのギターテクニックがあったからでしょう。しかし、エディはこの依頼をほとんどボランディアのような形で無報酬で行ったそうです。いやあ、もったいない。
ジミ・ヘンドリクスや三大ギタリスト(クラプトン、ベック、ペイジ)以降、スティーヴ・ルカサーやブライアン・メイ、ピーター・フランプトンなどのスーパーギタリストが出現しましたが、エディは新しいタイプのギターヒーローですね。もしかしたら、エディ以降のギタリストで彼を超えるものはいないのではないか。唯一無二の存在でしょう。
最後に、エディとアレックス(ドラムス)のヴァンヘイレン兄弟ですが、オランダ系アメリカ人ということになってますが、母親はなんとインドネシア人なんです。エディのあの親しみやすい微笑みは我々に近いアジアにルーツがあったのですかね。
そして、エディを失ったヴァンヘイレンですが、存続は難しいんじゃないかな。ヴォーカルやベースのメンバーチェンジが可能でも、エディのギターがなくてはヴァンヘイレンというバンドのサウンドは成り立ちませんからね。あるいは息子のウォルフガング(ベース)がそのDNAを継いで頑張る…無理だと思うけど。
唯一できるとしたら、エディのフレーズをサンプリングし、後任のギタリストはリズムだけに徹するくらいでしょうか。ホント、エディを失ったことは大きいよ。
★今回急遽エディを取り上げました。2020年になってから追悼企画多いですね。引き続きコメント、ご要望、ご意見受け付けております。お気軽にどうぞ。
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コメント
どうも、ミヤジです。V Halenは後程。
NHK BS で The Coversという番組が
前からあったのです。 月曜と 来週月曜の
2回、宮本さんです。
2017年にも 松田聖子を歌う とか、出演
したのですが、この局だけはネットに
アップされないわけです。
まぁ、欲しいものをまとめてから
NHK オンデマンド で観ましょう。
そういえば、前にアミューズに移籍と
うかがったので、効果絶大な感じです。
偏見ではありますが、SASと福山氏は
滑っている気がするので、こっちが
「押し」なんでしょうかね。
投稿: ペンタのP | 2020年10月10日 (土) 14時56分
ペンタのPさん。
「The Covers」存じております。
うちは地上波オンリーなんですが、特集で地上波で流れたことがあるんです。
その時は「喝采」を録画しております。
「雨上がりの夜空に」もやりましたね。
こちらはYouTubeに上がっております。早く地上波で見たいものです。
先月、「宮本浩次」個人名義で地上波でも出まくりでした。
地上波、衛星を問わず、テレビだと、フルコーラスじゃないのが唯一不満です。
アミューズ、三浦春馬も所属してました。
やっぱり、ミヤジもエレカシもテレビ需要があるんですよ。
今年は宮本浩次名義で紅白出場もあるかもしれません。
なんたって、NHKドラマの主題歌担当してるし。
NHK受けはいいですよね。
投稿: ヒョウちゃん | 2020年10月10日 (土) 18時07分
エディ、逝ってしまいましたね。
Van Halenを知ったのはベストヒットUSAでした。
CDは1984だけ持っています。車を運転しているときに
Jumpはよく聴いていますね。ご冥福を祈ります。
投稿: Naozo | 2020年10月10日 (土) 20時02分
Naozoさん。
ワタクシも『1984』は所有していますが、CDではなくて、LPレコードだったりします。
買いなおそうかな。
個人的にはオリジナルメンバーのそろっていたここまでで、Van Halenは終わっております。
サミー・ヘイガーはちょっと。
投稿: ヒョウちゃん | 2020年10月10日 (土) 21時34分
どうもです、本題に入ります。
私はリッチー BM からロックに入り、
KISS も好きでした。
その後 EV Halenは何か物足りなく、
マイケルシェンカー<MSG>に向かいました。
確かな記憶ではないですが
デイヴィッド・リー・ロスの歌唱が
無くなってからは余り聞いていません。
そしてオッサンになってからは、この分野から
離れ、またヒット曲も覚えていませんねぇ。
投稿: ペンタのP | 2020年10月11日 (日) 12時24分
ペンタのPさん。
ヴァンヘイレンは一応ハードロックだとは思うんですが、聴きやすくて、とっつきやすいですよね。
それに、ハードロックバンドの中ではいい意味ビジュアル面も図抜けていると思うんです。
ま、そうしたところがコアなインパクトを期待する人には物足りないのかもしれませんね。
で、ヴァンヘイレン以降こうしたタイプのロックバンドがとくにアメリカでは受け入れられてきたように思います。
渋谷陽一にいわせれば「産業ロック」ということなんですが。
ジャーニーからボンジョビの流れですね。
別のコメントでも書きましたが、ワタクシもデイヴ・リー・ロスのソロ活動→脱退、サミー・ヘイガーの加入からは興味が離れました。
つーか、その頃から洋楽全般に関しては時代とともに聴いてないんですけどね。。
投稿: ヒョウちゃん | 2020年10月12日 (月) 00時45分