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2020年10月27日 (火)

エスニック歌謡事始めプラスワン

かすてら音楽夜話Vol.97

Ck1052

<クンバーコナム>K-7/DA16-50mm

ネタは結構たまっているでございますよ。ですが、4回に1回の音楽話をルーティンのように語っていきたいと思います。

画像はイメージでしかないのですが、今回のテーマは1970年代後半から1980年代前半にかけてリリースされた異国情緒のあるシングルなどを紹介します。

1978年4月

 

庄野真代「飛んでイスタンブール」(作詞:ちあき哲也 作曲:筒美京平 編曲:船山基紀)でした。映像は「夜のヒットスタジオ」ですね。

この曲がリリースされた1978年頃は、一部のバックパッカーにはトルコやイスタンブールが知られていたと思います。ま、トルコと日本の関係は結構古いものの、そちらの事情を知る日本人はほぼいなかったでありましょう。

1977年に池田満寿夫(芸術家)が「エーゲ海に捧ぐ」で芥川賞を受賞し(その後映画化)、にわかに脚光を浴びるようになってきたのがヨーロッパとアジアの間にあるこの地域ですかね。

なお、沢木耕太郎の「深夜特急」は新聞連載もされていなかった時期です。

ちょっとブームになり、さらにそれを推し進めたのがこの曲かもしれません。バックパッカー以外にもパッケージツアーなどで高額を支払いこの地を訪れた人も増えてくるころでしょうか。

Shonomayo

<庄野真代>

この曲は真代さんが所属していた日本コロムビアの担当ディレクターが「無国籍なイメージ」でと筒美御大に曲を発注しました。リサーチが得意な筒美さんですから、真代さんの過去の曲を聴き、野口五郎用に書いて没にしたこのメロディを採用したようです。そして作詞をちあき哲也氏に発注しますが、やりすぎのように「イスタンブール」の韻を踏むものでした。

御大にしては珍しく「曲先」なんですが、仕上げのために曲の一部を変える。または、ちあき氏に詞をメロディに乗るようアドバイスもあったのではなかろうかと推測します。さらに、アレンジの船山氏にギリシアの楽器「ブズーキ」の使用を提案するなど、プロデューサー的な役割も果たしています。

「夜のヒットスタジオ」の映像では「ダン池田とニューブリード」の他、印象的なイントロとアウトロのためにギターかマンドリンのソロ演奏者を使っております。残念ながらブズーキではなさそうですが。この演奏は比較的オリジナルに近いです。

この時代、ブズーキを使用するといってもまず日本で演奏できる人がいたのかどうか。そしてまた、楽器が存在したのか。個人的に推測するならば、マンドリンかアコースティックギターあたりで代用したのだと思います。製作費かさんじゃいますからね。

真代さんは元々はシンガーソングライターで、当時の言葉では「ニューミュージック」にカテゴライズされる人でした。「飛んでイスタンブール」のリリースまでにシングル4枚、アルバム3枚をリリースしてました。とはいえ、すべてを自分の曲で歌うことにはそれほどこだわっていなかったようです。

そこに、この曲が来まして、真代さん最大のヒット曲となった次第です。ちなみに、次のシングルも同じ作者で「モンテカルロで乾杯」と同じような路線を狙いました。こちらはアレンジも筒美御大が請け負ってます。

そして、同年の紅白歌合戦にも出場します。ちなみに、「♪こんなジタンの空箱」を「♪こんな煙草の空箱」と変えて歌いました。さすがNHK、商品名には厳しいです。

真代さんはニューミュージック系ですが、マスメディアにも出るタイプでしたね。それ以前のフォークを引きずっている人やユーミンなどは決してテレビには出ませんでしたからね。真代さん、おまけに曲に振り付けもあるんですね。おそらくですが、ロックやニューミュージックからテレビに出演する先駆けのひとりでしょう。(他にはサザンやツイスト、原田真二などがいます)

1979年

 

ジュディ・オング「エーゲ海のテーマ~魅せられて」(作詞:阿木曜子 作編曲:筒美京平)でした。

筒美御大の追悼ニュースでやたらと流れた曲ですね。ジュディ・オング最大のヒット曲でもちろん、オリコン1位かつレコード大賞受賞曲です。筒美京平作品としても最大のヒット曲となりました。

曲ももちろんですが、あの腕を上げると袖の下が扇形になり羽のようになるクライマックスも話題でした。ミッツマングローブも真似をしたらしいです。

映像は曲のリリースから20年以上経った2000年のものですが、クオリティが高いので採用しました。

この曲は前述の「エーゲ海に捧ぐ」の映画化のためのCM曲として企画されたようです。結局は没になったようですが、ワコールのCMに使われ、その中で映画の映像も使われたようです。

こちらも、筒美御大の曲になりますが、阿木曜子が作詞しているので「詞先」でしょう。でも、筒美御大はすでに「飛んでイスタンブール」で実験済みなんですね。こちらも、ブズーキ風のフレーズが印象的です。

阿木さんの歌詞ですが、英語が含まれております。現在では歌番組で歌詞が出ますが、1979年当時はそんなものはありませんね。「♪Wind Is Browing From The Aegean」、はて?エイジアン?アジアじゃないんかい?などと思う人もいたはずですね。

Judyong

<スクリーンドレス>

ちなみに、羽を広げたような衣装、「スクリーンドレス」というそうです。ヒントは来日したダイアナ・ロスの衣装にあったそうですが。

これがなかったら、美川憲一と小林幸子の派手な衣装はなかったかもしれませんが。

日本人の作家が作った日本語の曲を中国人が歌い、そこに広がる世界観はエーゲ海やギリシアだという無国籍ぶり。本当に金のあるOL(今や死語)さんなんか本当に個人旅行であっちに行ってきた人もぼちぼち出てくるころかも。

ちなみに、レコード大賞ですが、西城秀樹の「ヤングマン」が外国曲ということで受賞資格がないため、「魅せられて」となったとのことです。

そして、この年はもう1曲あるんですよ。

 

久保田早紀「異邦人ーシルクロードのテーマ」(作詞作曲:久保田早紀 編曲:萩田光雄)でした。

「魅せられて」が1979年前半のヒット。それからおよそ半年後にリリースされ、デビュー曲であるにもかかわらず、オリコン1位を獲得することになります。

久保田さんはアイドル発掘のオーディションに間違って応募し、水着審査の代わりにピアノ弾き語りをしたところCBSソニー(当時)のディレクターの目にとまり、デビューまでこぎつけたそうです。

デビューも三洋電機(当時)のタイアップが決定しました。そのイメージ映像がアフガニスタンで撮影されたことで、タイトル「白い朝」から「異邦人」へと変更し、アレンジも萩田氏に依頼。思いっきりシルクロード風の曲になったのですね。

ここに絡んでいたプロデューサーが「魅せられて」を担当していた人で、エスニックなものを持ち込んだのですね。そして、萩田氏のアレンジが曲をここまで変えてしまう。久保田さんはもともと、自宅のある多摩地区で曲をイメージして作ったとのことで、こんな感じの曲になるとは思ってもいなかったようです。

企画とアレンジの勝利ですかね。

Kubotasaki

ちなみに久保田さん、現在は結婚後の本名久米小百合として活動しております。

1979年、まだまだアフガニスタンには普通に行けたんですね。もちろん、ソ連侵攻前のことですし、危ないところじゃなかったと思うんですが。カブールも日本人パッカーがたくさんいたっていうしね。

おまけ

Nakahararie

エスニックでも何でもないんですが、紹介した3曲に先駆けてリリースされた中原理恵、「東京ららばい」(作詞:松本隆 作編曲:筒美京平)が印象的なんです。

 

東京という無国籍な世界を感じさせる松本隆の世界。「東京湾」と書いて「東京ベイ」と歌わせるのは松本隆だからできたことなんじゃないすかね。そんなことする作詞家いませんでしたから。

そして、1978年のデビュー時、19歳ですよ。すごく大人に見えます。そして美人ですね。

これは依頼が来たから引き受けたんでしょうけど、筒美御大がデビューしたての新人のファーストシングルのアレンジまで担当するのは異例なのではないでしょうか。

ま、そのアレンジ、イントロのフラメンコギターが印象的ですが、その前年1977年にサンタエスメラルダというグループの「悲しき願い」(原題:「Don't Let Me Be Misunderstood」)というヒット曲のパクリっぽいんですけど。ま、若気の至りってことで。

この曲もまた東京とうたってながらも、どこかエスニック系に聴こえるのはワタクシだけでしょうか。

それにしても、中原さん、「欽ドン」であのようになるとは。

★引き続きリクエスト、ご意見、コメントお待ちしております。今回、筒美京平トリビュートでもありましたね。

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コメント

>ジュディ・オング「エーゲ海のテーマ~魅せられて」

シーツを身体に巻き付けて踊っていたヤツとかいましたね。
懐かしい歌です。

投稿: カルロス | 2020年10月27日 (火) 23時28分

カルロスさん。
カルロスさんもシーツ巻き付けて踊ったんでしょうか。
ミッツマングローブが「バイキング」でやったと発言してました。
わたしゃやってません。

カルロス氏がここでコメントしてくれて嬉しいですね。
皆さんの琴線をくすぐるようなテーマを続けてますので、引き続きよろしくお願いします。
今のところ、旅ネタやBグルよりも一番力入れてますから。

投稿: ヒョウちゃん | 2020年10月28日 (水) 00時25分

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