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2020年11月 9日 (月)

「みんなおいらが悪いのさ」

かすてら音楽夜話Vol.98

前回のエスニック歌謡のおまけで紹介した「東京ららばい」、松本隆&筒美京平による名曲ですけど、イントロがSanta Esmeraldaの「悲しき願い」に似ていると指摘しました。

ところで、「東京ららばい」やサンタエスメラルダ版の「悲しき願い」がリリースされた1970年代後半は空前のディスコブームでした。それは、映画『Saturday Night Fever』(1977年)で頂点に達し、日本にも上陸したものと思われます。

『サタデーナイトフィーバー』では、アメリカの有名どころが曲を提供し、劇中歌として使われております。Bee Gees(ビージーズ)の5曲のビルボード1位獲得曲をはじめ、Kool & The Gang、KC & The Sunshine Bandなどがディスコ調ナンバーを提供しています。

その翌年の映画『Thank God It's Friday』でも、Dona Summer、The Commodores等のブラック系かつソウル、ファンクっぽい楽曲で構成された劇中歌がかかりまくりで、日本に一気にディスコナンバーが押し寄せてきたように思います。ちなみに、『サンクゴッド・イッツフライデー』は見に行きました。

Santaesmeralda

<Santa Esmeralda>

ま、日本では本格的にディスコサウンドに挑戦した曲は具体的にはほぼないと思いますが、アメリカのブームがヨーロッパでも影響を受け1977年に結成されたのがサンタエスメラルダです。ま、ヨーロッパといってもリードヴォーカルはヒスパニック系アメリカ人、その他のメンバーやダンサーはフランスを中心とするヨーロッパ系という構成でした。

デビューアルバムに収録された「Don't Let Me Be Misunderstood(邦題「悲しき願い」)」が欧米のディスコチャートで火が付き、日本でも1978年にリリースされオリコン洋楽チャートで長らく1位を獲得しました。ビルボードのシングルチャートでも15位まで上がってます。

 

画像がいまいちですが、この時代にプロモーションビデオが作られていたようですね。

ま、ともかくこの曲がワタクシにインパクトを残したことは間違いありません。とはいえ、ディスコに通うということはまだなかったんですが。

Bitho

<尾藤イサオ>

その直後、「あしたのジョー」の主題歌を歌う尾藤イサオがカバーシングルをリリースしました。サンタエスメラルダを意識しているのか、バックに女性二人のダンサーを従えた「尾藤イサオ&ドーン」名義です。

 

なんで「あしたのジョー」の尾藤イサオがサンタエスメラルダに触発されるようにカバーヴァージョンを出したのかと思っていたんですが、実は1966年に一度「悲しき願い」をカバーしていたんですね。

それはなぜかというと、イギリスのバンドThe Animalsがシングルをリリースしていたからです。そちらは1965年です。

Animals

<The Animals>

ですが、アニマルズもオリジナルではなくて、アフリカ系アメリカ人シンガーのニーナ・シモンという人が1964年にアルバムの中で収録したのが世に出た初めてのものです。とはいえ、こちらは不発で、アニマルズによりヒットを記録してます。

The Animals版「Don't Let Me Be Misunderstood」 こちらはリンクのみつけておきます。なんか今聴くと古臭い感じですね。

尾藤イサオの映像は歌番組のライヴヴァージョンなんですが、尾藤イサオのすごいところは、シングルの音源もライヴも声にさほど変化がないということです。これはすごい。

1966年の曲となり、訳詞もタカオカンベ氏によるものが1966年版と1978年版で同じですので、「おいら」などあまり時代にそぐわない感じなんですが、ノリはアニマルズよりもいいんじゃないすかね。

尾藤イサオのキャリアは古くてロカビリー時代にまでさかのぼります。そこから俳優と歌手でやってきておりますので、アニマルズもサンタエスメラルダも恐くないぜみたいな思いを秘めていたのかも。

実際の音源、リンクつけておきます。

1966年版

1978年版

ちなみに、1966年のシングルはバックバンドがブルーコメッツですね。そして、明らかに1978年版のほうが上手くなってます。

「悲しき願い」は1966年当時よほど日本人の感性に合っていたのか、日本語カバーも競作でした。YouTubeで検索すると、布施明とスパイダース(リードヴォーカルは堺正章)ヴァージョンがヒットします。

ディスコ調のイントロ、中原理恵の「東京ららばい」(1978年)を含めると、京平さんがアレンジした「東京ららばい」が最も洗練されてますが。それは、やはり後出しの有利さでしょうか。(←決して筒美京平氏をディスるものではありません。)それにしても、尾藤イサオはインパクトありますね。

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コメント

あおい輝彦さんに仲村秀生さん、尾藤イサオさん。
子どものころ、めちゃくちゃ観ました。
あと、マグマ大使と黄金バットもですね。
それが仮面ライダーとウルトラマンの誕生前で
正しいでしょうか。
ワタシとしては、ジプシーキングスに
はまった時期もありまして
ラテンの曲調は大好きですよ。
逢坂剛氏も沢山読みました。
あとは、リアルにスペインを旅したいのですがね。

投稿: ペンタのP | 2020年11月16日 (月) 01時49分

ペンタのPさん。
「あしたのジョー」のテレビアニメ化は遅かったんじゃないすかね。
でも、完結してなくてそっちは続編になりました。
わたしゃ、通っていた床屋にコミックスが全館そろっていたのでそちらで全部読みました。
ただ、ボクシングってアニメと相性悪いですね。
その後の「がんばれ元気」もアニメ化してますが、完結してないんですよ。
まず、スピード感がないのがリアリティに欠けますか。
すべてのスポーツものはそうなんですけど。

マグマ大使は実写でしたのでなかなか不気味でした。
マモル少年がその後フォーリーブスで現れたのはちょっとびっくりでございます。
黄金バットは原作が最も古いですね。
アニメは繰り返し再放送されてましたね。
ウルトラマンのほうがあしたのジョーより早いです。
仮面ライダーは上げられた中では最も後発です。

サンタエスメラルダはラテンではありますが、特にフラメンコギターを使ったのが特徴的です。
フラメンコはかなりの部分を「ロマ(ジプシー)」の影響を受けてます。
ただ、ラテンのリズムとロマのリズムはぴったり重ならないといえましょう。
スペインではフラメンコダンサーとか演奏者の一部がロマ出身だと思いますが、明らかにロマであるという人はそれほど見かけないですね。
ギリシアのパトラスにはロマの子供が結構いました。
また、ポルトガルのファーロでは明らかに貧しそうな部落があって、ロマが居住しているのだと感じました。
スペインも元々は連合国家なので地域や民族による多様性は結構あると思いますよ。

投稿: ヒョウちゃん | 2020年11月16日 (月) 21時01分

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