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2020年12月20日 (日)

二世タレントの走り、加山雄三

かすてら音楽夜話Vol.101

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<加山雄三>

本日取り上げるのは予告通り加山雄三です。

1937年生まれ。俳優、上原謙の息子として生まれ、茅ケ崎で育ちます。私事ですが、茅ケ崎出身の友人がおり、茅ケ崎には「加山雄三通り」があると、自慢しておりました。また、茅ケ崎出身者としてはサザンの桑田佳祐もいますが、こちらもさりげなく自慢してました。でも、奴の傾倒度は加山雄三でしたね。

高校・大学と慶應義塾で過ごし、卒業後の1960年に東宝に入社し、俳優として活動を始めます。その年に映画デビューし、翌1961年に早くも若大将シリーズの第1作「大学の若大将」に出演します。ちなみに、若大将シリーズはその後10年にわたって製作され、東宝のドル箱映画の一つでした。なお、俳優としては青大将役の田中邦衛とともに1962年の黒澤映画「椿三十郎」にも出演しています。

すでに「大学の若大将」の劇中歌として加山雄三が歌ってシングルカットもされていますが、この時点では職業作家による提供曲です。

まさに、若大将としての経歴を記しましたが、加山雄三はいい意味で上原謙の息子という立場を思う存分享受し、そこから学んだことを歌手・俳優として生かしてきました。いまでいう、二世俳優の先駆けみたいな存在ですが、一応芸名は上原謙とは無関係になってます。

二世で学んできたことなんてあるかというと、あるんです。それはですね、遊びや趣味に学生では使えないような資金が十分にあったために、当時の庶民ではやりたくてもできなかったことをたくさん、やってきたのです。金持ちの道楽ともいいますが。

すなわち、慶応の時には国体にも出場するほどのスキーの腕前がありました。その後、映画「アルプスの若大将」でも自身が滑り(「澄ちゃん」役の星由里子は助演の江原氏がスタント役)、のちに自身の名前を冠したスキー場まで所有(現在は閉鎖)するほどでした。

また、船舶免許を所有し、光進丸を設計・建造するなど、これもまた「海の若大将」で使われました。スキューバ、サーフィン等のマリンスポーツなども同様です。

そして、彼のキャリア上最も重要なのが、楽器演奏と曲作りですね。まだ、ビートルズが来日していなかった時にはすでにエレキギターを手にし、曲作りも始めます。加山雄三の作詞作曲家名は「弾厚作」です。団伊玖磨と山田耕筰からいただいたものとのことです。金持ちの道楽ながら、取り組んだほとんどのものを確実に身に着けていますので、能天気に見えて努力もしているし、器用なんだと思いますね。→こういう人間が傍目の男性庶民から見たら、「コンチクショウ」とか思いますね。いっぽう、当時のハイティーンから20代前半くらいの女子はあこがれの対象ですね。

さて、その加山雄三の最大のヒットがこちらです。

 

加山雄三「君といつまでも」(作詞:岩谷時子 作曲:弾厚作 編曲:森岡賢一郎)でした。この曲は、1965年の映画「エレキの若大将」の劇中歌でもあり、劇中では星由里子と日光レークサイドホテルでデュエットしております。ただし、アウトロのラスト「♪二人の思いは変わらないいつまでも」(太字部分)がシングルとは違っております。森岡賢一郎のアレンジで曲が生きたともいえましょう。

そして、この曲は300万枚を売り上げたともいわれてます。ですが、レコード大賞は売り上げでははるかに及ばない、橋幸夫の「霧氷」に持っていかれました。加山雄三はこの時点でシンガーソングライターの走りでもあり、何でもできちゃう加山に審査員も「この野郎」とか思ったのかもしれませんが。

また、曲としては今きくととってもクサい台詞入りなんですが、そのような曲も日本では初めてだった可能性があります。

ワタクシとしては「君といつまでも」より評価の高い曲がこちらです。

 

加山雄三「夜空の星」(作詞:岩谷時子 作編曲:弾厚作)でした。(加山雄三とハイパーランチャーズLive)

こちらも、映画「エレキの若大将」の挿入歌で、「君といつまでも」のB面です。オリジナルの演奏は寺内タケシとブルージーンズが担当してます。実質的なアレンジャーは寺内タケシでしょうね。

映画では「勝ち抜きエレキ合戦」で勝ち抜いた「石山新次郎とヤングビーツ」(オーナー青大将=石山新次郎、役は田中邦衛)が10週目でジェリー藤尾の「シャークス」と対戦するときの曲です。なお、この時の司会者役は内田裕也でした。

映画ではほとんどをインストゥルメンタルとして演奏され、後半で加山雄三(若大将=田沼雄一)が歌う設定です。

 

映像はブルージーンズのカバー演奏に近い「夜空の星~青い星屑」メドレーです。

一応、寺内タケシとブルージーンズでも、「夜空の星」をリリースしてます。映画では加山の演奏シーンは吹き替えのような気がします。映画でのエレキ演奏は全面的にブルージーンズが担当していたのではないでしょうか。

実際、寺内タケシも「エレキの若大将」に出演していて、出前持ちからスカウトされてプロバンドに加わり、加山を加えて日光で演奏旅行をすることになってます。そのバンドはもちろん、ブルージーンズですね。

こちらのほうがスピード感もあり、ギターの超絶テクニックも存分にちりばめられてます。ま、こういってしまうと、作詞の岩谷時子はなんなのさということになってしまいますが。

実際、「君といつまでも」や「夜空の星」は古臭い表現もありまして、「̪褥」(しとね)なんて言葉も出てきます。

加山雄三が岩谷時子と関係なく、作詞も自身で行った佳曲があります。のちの「サライ」などとは真逆ののびのびとしたストレートな表現。まるで、力がこもってなく一般人がイメージする加山雄三とはかけ離れた曲がこちら。

 

「Boomerang Baby」でした。この英語詞も弾厚作によるものです。

これは、シングルになってないと思います。

この曲を知ることになったのは、山下達郎のアルバム『Cozy』(1998年)でカバーしていたからです。その前年の1997年、加山雄三60歳の記念として、トリビュートアルバム『60 Candles』が製作されました。ここには参加していなかった山下達郎は、ここで加山の還暦を祝ったのでした。

山下達郎はこれまで他人の曲をカバーするということを一切してこなかった人です。山下の加山への思いがわかると思います。

これまた消されると困るので、山下達郎の「Boomerang Baby」は映像を埋め込まず、リンクを貼っておきます。

加山雄三、上原謙のおかげで好き放題やってこられたと思いますが、もはや彼を「二世だから」という人もいないでしょう。実際上原謙をよく知らないので、不確実だとは思いますが、「上原謙はきっかけであって、加山雄三は親を超えている」といい切りましょうか。

果たして現在83歳の加山雄三は再び我々の前に現れるのでしょうかね。

★コメントご意見、お気軽にどうぞ。こんなことを取り上げてほしい、この曲をまた聴きたいなど、リクエストも随時受け付けています。

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コメント

加山雄三との出会いは小学校4年か5年の時、映画エレキの若大将でした
東宝の怪獣シリーズを毎回見ていたんですが、それと抱き合わせになっていたんですよね
客層が違うだろうと思ったんですが、見事、新規顧客獲得成功でしたね(^^ゞ
初めて買ったレコードも君といつまでもでした
しかし、これは恥ずかしくてカラオケでは歌えないよね
明大前にあった正栄館という映画館で若大将シリーズの3本立てをやってたんでよく見に行きました
レコードもほとんど買ったような
加山雄三に憧れて「俺は海の男になる」ときめ、高校ではヨットの同好会(ものにならず)、大学ではスキンダイビングをやりました
星由里子はあんまり好きではなく、もっと美人の女優、酒井和歌子とかに代わって欲しかった(^^ゞ
残念ながら当時集めたレコードもアルバムみたいなものも何も残っていないです
そうそう、私の自慢は高校のヨットで油壷のヨットハーバーにに行ったとき、デカい船が来たなと思ったら光進丸で、小さい前田年彦のボートと「前田さーん・・・」とかマイクで話しているのを見たことかな
何代目の光進丸かわからないけど、本当に大きな船で、最初は警備艇かなと思ったくらいです

投稿: kimcafe | 2020年12月20日 (日) 08時34分

kimcafeさん。
コメントありがとうございます。

いやあ、意外でしたね。
憧れの対象だったとは。
「正栄館」…全然記憶にないんですが、ググってみたら駅前にあったみたいですね。
あそこ、2年間通いましたので、記憶が欠落しているはずもないんで、すでになかったということですね。

わたしゃ、加山雄三のレコードやCDは所有してないんですけど、東宝ビデオの「エレキの若大将」を社会人になってから購入しました。
なんと、19800円という価格です。
大人買いですが、当時の自分にとってはものすごい贅沢でした。
そんなもんで、「エレキの若大将」のことはよく覚えているんです。

ワタクシの同級生にも体育会のヨット部員がいました。
さりげなくお書きになってますけど、高校でヨット同好会があるなんて、相当なお坊ちゃんじゃないすか。
そのヨットで、加山雄三を目撃するほどですから、運命的につながってるんじゃないすか?

酒井和歌子はのちに星由里子に代わって若大将シリーズの相手役になりましたね。

いやぁ、なんか今日はとてもいい話をきいたような気がします。
kimcafeさんも、PUNCHやタイ人歌手以外で、リクエストがあったら、ぜひともお願いします。

投稿: ヒョウちゃん | 2020年12月21日 (月) 02時31分

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