一発屋ぶるーす・洋楽編
かすてら音楽夜話Vol.103
国内編に続きまして、洋楽での一発屋です。今回紹介するのはビルボードシングルチャートで1位を獲得しながら、その後ヒットに恵まれなかった4組です。
年代順に紹介します。
Debby Boone
Debby Boone(デビー・ブーン)はアメリカのポピュラーシンガー、Pat Boone(パット・ブーン)の娘です。パット・ブーンも「砂に書いたラブレター」という曲でビルボード1位を獲得してます。
デビー・ブーンの実質的なデビュー曲となる「You Light Up My Life」(邦題「恋するデビー」)ですが、1977年の映画「My Song」(これは邦題で原題は曲と同じ)の劇中歌です。ですが、デビー・ブーン自身はこの映画には出演してなく、劇中の同曲も別の人物が歌ってます。
オリジナルの曲はこの曲の作者でもあり「My Song」の監督でもあったジョセフ・ブルックスによるものです。しかし、男女関係のもつれから、この曲を歌った吹き替え歌手(彼女も映画に出演していました)のリリースを妨害し、ヴォーカル部分をデビー・ブーンが録りなおし、同年8月にリリースされました(劇中の曲はオリジナルのまま)。
しかし、この曲は10月にビルボード1位を獲得すると、その後10週にわたって1位になるという、未曽有の大ヒットとなるのでした。
それにしても、「恋するデビー」の邦題はあり得ないな。センス悪いし。ちなみに、映画は「スターウォーズ」や「未知との遭遇」など、映画の当たり年だったためか、「You Light Up My Life」がアカデミー歌曲賞を取っただけです。それも、歌ったのはデビー・ブーンじゃないし。
その後のデビー・ブーンですが、まったくヒットが出ません。これ、究極の一発屋なのかもしれませんが。代役だったから、何ともラッキーすぎました。
それにしても、アメリカ人ってこういう暗い曲でも好きみたいですね。なんでも、失恋したりひどく落ち込むことがあったときは、部屋を暗くしてろうそくの明かりの元、暗い曲を聴くんだそうで。
Player
1978年1月に3週連続ビルボード1位を獲得した「Baby Come Back」がデビュー曲のPlayer(プレイヤー)。その前週の1位はBee Gees(ビージーズ)の「How Deep Is Your Love」(邦題「愛はきらめきの中に」)で、こちらも映画「Saturday Night Fever」の劇中歌というわけで、1977年から1978年にかけては映画のメガヒットも量産された年でした。
その合間を縫うようにして、新人グループがデビュー曲で輝きを放ったのです。
この時代、ビルボード1位を取るバンドやシンガーでも日本のメディアに登場することはほぼありませんでした。
ワタクシの情報源はもっぱらラジオで、FENとラジオ関東(現ラジオ日本)でやっていた「American Top 40」がすべてです。ということで、なかなかビジュアルがわからなかったです。ま、深く洋楽に傾倒していたり、ギターを弾いていた人は「Music Life」や「ギターマガジン」などの雑誌を購入してつかんでいたとは思うんですけどね。
「明星」や「平凡」などでも、付録の歌本があって、ここにモノクロの写真が出ることもあったかもしれません。
トップの画像では4人だけですが、実際はYouTubeの映像の通りの5人組です。この時代、めちゃくちゃ金をかけてプロデュースしまくったビージーズとその周辺に勝つにはやっぱり曲がいいことに尽きますかね。「Baby Come Back」も新人離れしたコーラスワークと、どこか切なくなるようなメロディ、テクニックも感じさせる演奏と粒ぞろいです。
YouTubeの映像はライヴ風ではありますが、実際の音源をこれに被せてますね。
「Baby Come Back」はその後、ビージーズの「Stayin' Alive」に1位を明け渡し、返り討ちに会います。そのあと、トップ10ヒットを1曲。次第にジリ貧となり、フェイドアウトします。メンバーチェンジし、再結成を2回。デビュー1発目で才能を開花しすぎたのでしょうか。それでも現在まで細々とではありますが、活動はしているようです。
2021/04/30追記
実はビージーズもプレイヤーもRSOという同じレーベル所属でありました。この時期のRSOレコードの売り上げ、凄いことがわかりますね。
Exile
同じく1978年にブレイクしたのが、Exile(エグザイル)です。なんか日本でもそっくりそのまま名前をいただいたグループがいますけど。ネーミングライツはあるのかという問題ですけど、これは本家エグザイルが何もいわないからですよね。
山本恭司というギタリストがいまして、この方昔、「BOWWOW」(バウワウ)というバンドをやってましたが、イギリスのバンド「Bow Wow Wow」からクレームが来まして、「VOWWOW」に変えたという記憶があります。もっとも、早くから名乗っていたのは日本のバウワウなんですけどね。
ジャニーズ事務所のSixTONES(ストーンズ)というのも、The Rolling Stonesと紛らわしいです。ファンとしては名前を変えろといいたい。
さて、本家エグザイルですが、結成は古く1963年のことです。彼らは長らく他のバンドのツアーに同行し、ライヴ会場でオープニングアクトなどの「前座」を務めていました。
日本での公演はジョイント等を除き、ほぼ単独公演ですよね。7時ごろ開演で9時くらいには終了です。
アメリカは違いますよ。まだ陽が高い時間から前座が延々と出てきます。2~3曲演奏して次と交代するんですが、聴衆は黙って聴いているわけではありません。「俺たちが待ってるのはこんなくそバンドじゃねえ!」とばかりにブーイングの嵐です。それだけではなく、「早く引っ込め!」と、コーラやビールの瓶など様々なものを投げ込んできます。
前座も頑張るのですが、せいぜい2曲で、「覚えてやがれ!Fuck You !」と引き下がるわけです。これの繰り返しだとか。ま、ラスト前の前座当たりでは割と聴ける連中が登場し、会場も盛り上がるわけで、大御所登場が9時あたりで、すべてが終わるのは日付も変わる頃だとか。
こちら、苦節15年、初めてのヒット曲「Kiss You All Over」が1978年9月に4週連続の1位を獲得したのです。
エグザイルはその前の1976年にイギリスからやってきたオーストラリア人の音楽プロデューサー、Mike Chapman(マイク・チャップマン)に見いだされます。チャップマンは既成の商業音楽ではないものを求めてやってきたのですが、エグザイルにそれを見つけました。彼らはタッグを組み、チャップマンのこの曲をリリースすると見事に大当たりしたというわけです。
YouTubeの映像はおそらくテレビのライヴですね。このあたりの落ち着きぶりはさすがにベテランというか、ライヴの前座で鍛えられてきただけはありますね。
彼らはその後トップ40に1曲送り込んだだけで、方向転換し、カントリーミュージックをやることにしました。活動は現在も継続中で、メジャーシーンとは疎遠になりましたが、ビルボードのカントリーチャートでは何曲も1位を獲得しています。
2021/04/30追記
早くもYouTube映像が削除されまして、代わりを上げときました。
The Knack
1979年に鳴り物入りで登場したのが、The Knackです。彼らも、マイク・チャップマンがプロデュースしています。
今となっては全然違うのとわかるのですが、当時はビートルズの再来ともいわれ、デビューアルバム『Get The Knack』はビルボードアルバムチャート6週連続1位でした。
こちら、彼らのデビュー曲にしてビルボード5週連続1位獲得曲の「My Sharona」でした。
なんと、この曲1979年度のビルボード年間シングル1位にも輝いています。
YouTubeの映像ですが、これまた演奏に実際の音源を被せたものです。当時MTVも出てきた頃だったので、もちろんプロモーション用ですね。このあたりになってくると、ワタクシにも実際の動くThe Knackを見ることができました。
イントロのドラムソロとベースがかっこいいですよね。それに、曲間の「♪Ma Ma Ma My Sharona」のリフレイン。「Ma Ma Ma」などという単語でもないフレーズを曲に取り入れるというのはおそらくThe Knackが初めてのことではないでしょうか。これは斬新だったですね。(←これ、Bay City Rollersの「Saturday Night」で先に取り入れられてました。)
曲の展開も工夫がされていますね。曲自体はヴォーカルとギタリストによるものですが、マイク・チャップマンの指示もかなり入っていると思います。でも、これがよかったんじゃないですかね。
セカンドシングルはチャート10位まで行ったものの、その後のヒットには恵まれず、ドラムスとヴォーカルの死去により活動はできなくなりました。
いやホントに、デビューで才能と運を使い果たしちゃったんじゃないすかね。
デビュー曲だったりメジャー1曲目が大ヒットするってのは、その後が厳しいんですかね。ユーミンや松田聖子もオリコン1位ではないですし。NijiUの皆さんも、シングルがリリースされてないのに、あんな騒ぎになっちゃって…。どこまでいけますかね。
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