史上最高のスタジオミュージシャンたち
かすてら音楽夜話Vol.111
<SHOGUN>
スタジオミュージシャンというと皆さんどのようなイメージをお持ちでしょう。
楽曲の収録で演奏をこなし、決して表には表れない人たちみたいな存在でしょうか。ま、現在はそのようなスタジオミュージシャンは数少なくなったと思いますが、1970年代まではそんなイメージでした。
メンバー全員が10年以上の経験を持つスタジオミュージシャンで構成されたSHOGUN(本来は「O」ではなく、長音記号のついた「Ō」となりますが、ここでは「SHOGUN」という表記にいたします。 )は、1979年にデビューします。
SHOGUNには前身のバンドがあり、ギターの芳野藤丸を中心に活動を行っていたOne Line Bandです。そのOne Line Bandに日本テレビの音楽プロデューサーが目を付け、ドラマ「俺たちは天使だ!」のサウンドトラックを任せることにしました。しかし、日本で音楽活動を行っていたCasey Rankin(ケーシー・ランキン)を加え、当時アメリカで一大ブームを起こしていた小説・ドラマ「将軍」からインスパイアされ、バンド名を改めたのです。
SHOGUNの「男たちのメロディ」(作詞:喜多条忠 作曲:ケーシー・ランキン 編曲:大谷和夫)でした。「夜のヒットスタジオ」からのライヴです。
ドラマ「俺たちは天使だ!」は沖雅也主演で、主題歌となったこの曲は50万枚のヒットとなりました。
当時のSHOGUNのラインナップですが、芳野藤丸(G & Vo)、ケーシー・ランキン(G & Vo)、ミッチー長岡(B & Vo)、大谷和夫(Key)、中島御(Per)、山木秀夫(D)。この曲だけは職業作詞家が担当しましたが、主な作詞はケーシーが行い、通常は英語で歌われました。
普通新人バンドですと、ヴォーカルも熱量の高いシャウト型でしょうし、ギターもギンギンに鳴るようなイメージですよね。しかし、藤丸もケーシーも力の抜けたいい感じですし、藤丸のギターもカッティング中心でギターソロも前に出すぎない控えめなものです。いわば、大人の味わい。
ベースのミッチー氏は曲によってはチョッパーも使うテクニシャンで、セカンドアルバムからは1曲はメインのヴォーカルを任されています。これがなんとも味わい深いです。
キーボードの大谷氏は火曜サスペンス劇場などの音楽を担当していました。バンドでもアレンジを任されました。
パーカッションの中島氏はフュージョンぽさやラテンの味付けをSHOGUNにもたらしました。
ドラムの山木氏は当時最年少で最も期待されたドラマーでした。
このヒットにより、スタジオミュージシャンとしてよりバンドとしての活動がメインになってきます。スタジオミュージシャンでありながら、ヴォーカルもなかなかのもので、藤丸とケーシーの味わい深い声が、歌謡曲などのザ・芸能界やアイドルを超越して支持されたのでしょう。
続くセカンドアルバム『Rotation』は全面が松田優作主演のドラマ「探偵物語」のサウンドトラックとして製作されています。
SHOGUNの「Bad City」(作詞作曲:ケーシー・ランキン 編曲:大谷和夫)でした。
こちら、オリジナル音源で、「探偵物語」のオープニング曲です。
SHOGUNの「Lonely Man」(作詞:ケーシー・ランキン 作曲:大谷和夫、芳野藤丸 編曲:大谷和夫)でした。
こちらは1998年の再結成時のメンバーによるライヴです。この曲は「探偵物語」のエンディングテーマとなります。シングルとしては「Lonely Man」をA面、「Bad City」をB面とするものをリリースしてます。なんとも豪華なカップリングですね。
ちなみに、冒頭の画像はアルバム『Rotation』のものですが、中心に映っているのは「探偵物語」に出演していたナンシー・チェニーという女優です。
この2曲ですが、松田優作の死後も缶コーヒーのCMとして当時の映像と新録音の両曲が使われ、SHOGUNを知らなくともこの曲は聴いたことがあるという人も多いんじゃないでしょうか。
ところで、SHOGUNは1980年のサードアルバムリリース後に解散してしまいます。それは、メンバー間の大人の事情等(詳しく書きませんが近年でいうと槇原氏のような事例)もありました。
そして、松田優作の缶コーヒーのCMが流れるころ、ひっそりと17年ぶりのスタジオアルバム『New Album』をリリースします。
メンバーは中島御と山木秀夫が抜けドラムスにケーシーの息子、Eric Zay(エリック・ゼイ)を抜擢。翌年の1998年には復活ライヴも予定されていたのですが、突然のケーシーの脱退により再び解散することになります。これは行きたかったです。
アルバム『New Album』から唯一シングルカットされた「Starting All Over Again」(作詞:ケーシー・ランキン 作曲:芳野藤丸 編曲:SHOGUN)でした。
このパフォーマンスは以前と全く変わらないですね。なんとも残念です。
この後、SHOGUNは何回か結成されています。しかし、2008年にバンドの核であった大谷和夫が亡くなり、翌2009年にもケーシーが亡くなってしまい、かつての存在感とは違っていると思います。
ですが、芳野藤丸のギターはあなたもどこかで聴いているかもしれません。「木綿のハンカチーフ」のイントロのカッティングによるギターソロは藤丸のものです。「天城越え」とかもそうらしいですよ。スタジオミュージシャンとして1万曲は演奏してきたといいますから。また、彼は西城秀樹バンドのバンマスでもありました。沢田研二に井上堯之のような。
大人も聴けるロックバンド、いつか出ないですかね。
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