山田洋次へのヒントとなった曲
かすてら音楽夜話Vol.117
<とあるシーン>*画像はネットから拾いました
山田洋次監督映画「幸せの黄色いハンカチ」のスクリーンショットです。
シナリオはいうまでもないんですが、出所した健さんが妻の元へ戻り、前と変わらず自分のことを受け入れられる気があるならば、木に黄色いハンカチを結んでおいてほしいという手紙を書くというもの。
その妻の元に戻るロードムービーですね。
これはかなり有名なんですが、元ネタがあります。
それは次の曲をお聴きください。
Dawn featuring Tony Orlandoの「Tie A Yellow Ribbon Round The Ole Oak Tree」でした。
この曲は1973年のビルボード1位獲得曲(4週)で、1973年の年間シングルでも1位でした。大ヒット曲です。そして、邦題は「幸せの黄色いリボン」というのです。
歌詞はもちろん英語ですけど、内容は「幸せの黄色いハンカチ」とほぼ同様です。結びつけるものがハンカチではなくリボンになるくらいのもの。
これはアメリカではかなり有名な話のようで古くから語り継がれているようです。ところがこれにかみついた人間がいまして、ピート・ハミルが自分のコラムに基づいたものとして訴訟になったのですが、古くからの伝承であると認められ訴訟は取り下げになりました。
有名になるとこうした風評被害のようなものも起きてきますね。George Harrisonの「My Sweet Road」という曲も盗作騒ぎに巻き込まれましたし。
「幸せの黄色いハンカチ」は1977年の作品で、原作はそのピート・ハミルの「Going Home」ということになっています。
ですがね、ニューヨークポストにちょこっとだけ載ったコラムとビルボード年間シングル1位とでは、どちらがきっかけになったものだか。しかも邦題も酷似してますし。
Dawnとは、実態としてTony Orlando(トニー・オーランド)のバックコーラスです。この3人、単に「Dawn」だったり「Tony Orlando & Dawn」だったり、名称もよく変わっております。
余談ですが、「悲しき願い」(新しいほう)の尾藤イサオもバックに「ドーン」をつけて尾藤イサオ&ドーンでございました。
ともあれ彼らはアフリカ系女性ふたりにメインヴォーカルはヒスパニック系、おそらくメキシコ系アメリカ人ですね。
トニー・オーランドも下積みが長く、スタジオシンガーとしてやっていたのですが、「Candida」という曲をリリースしたところ、ビルボードのTop10シングルとなり、「幸せの黄色いリボン」の前には「Knock Three Times」(邦題「ノックは三回」)という曲でビルボード1位を獲得してます。
その後も「He Don't Love You(Like I Love You)」(邦題「恋のシーソーゲーム」)でも1位になっております。いわば、一世を風靡したアメリカ版歌謡界のスターです。
その後、リメイクされたテレビドラマ版「幸せの黄色いハンカチ」では「幸せの黄色いリボン」が劇中歌として使われました。めでたし、めでたしです。
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コメント
懐かしい曲が続きますね。
この曲も中坊の時にヒットチャートのラジオで歌詞の意味を教えてくれて、素敵な話だと子供心で感動したのを覚えています。
でも原題を知って思ったのは「なぜ「幸せの」なの?」
当時の洋楽配給の和訳はこういう原題に対して「恋の」とか「愛の」とか「夢の」とか。
安易な売れ線狙う形容詞を付ける配給会社へ生意気盛りの小僧は憤慨したんですよ。
(ビジネスですからしょうがないと今なら分かりますが、若干センスの問題も・・)
で。
そのあとまさかの日本映画で「幸せの」・・。
これは正直言って相当がっかりしました。リボンをハンカチ。そこまではお国柄の違いでわかりますが、「幸せの」ってその言葉が話に合ってるの?って思っちゃったんです、小僧だから。
ですので、映画は観ていないんですよ。いまだに。
あのお話を明るいポップな曲調で歌う名曲。その原題も「オークの木に結ばれたリボン」。
3分の中におさめられたからこそ宝石箱のような輝きがあったなと思ってました。
訴訟問題があったことは初めて知りました。
ヒョウちゃんが書いたように儲かると金のトラブルも出ちゃうんですね・・。
で、リクエストを、という逆リクエストをいただきましたので。この曲にちなんで「小説のような心に残る詞の名曲」をお願いします。
木綿のハンカチーフのような起承転結のある曲もあれば、かつてのユーミンとかひとつの話をよむような世界観があって、尾崎豊、最近ではあいみょんの曲も小説のような見事さがありますよね。
素敵なストーリーテーラーの曲紹介お待ちしております。
投稿: lastsmile | 2021年6月10日 (木) 05時58分
lastsmileさん。
邦題は絶妙なものもありますが、滑ったやつもありますね。
んで、「幸せの黄色いリボン」なんですが、それよりもずっと前を振り返ってくださいませ。
ジョン・フォード監督作品、ジョン・ウェイン主演で「She Wore A Yellow Ribbon」という作品がございます。
邦題、「黄色いリボン」ですね。
こちらの主題歌も同じ題名だったと思います。
ま、わたしゃ見てないんですけど。
これがあるので、邦題には「幸せの…」を付けたのではないかと。
と、考えればドーンの邦題はある程度理解が持てるのでは。原題も日本人にはなじみそうにないし。
余談ですが、桜田淳子の「黄色いリボン」は1974年リリースです。
ではあるんですが、山田洋次のタイトルはあまりにもという点では同感ですね。
ま、監督もジョン・フォードへの意識があったのかも。
決してピート・ハミルではなくてね。
さて、リクエストありがとうございます。
なかなかハードルの高そうな課題ですが、頑張ってみます。
でも、その前にもう1件アイデアがあるので、そちらにも食いついてみてくださいませ。
投稿: ヒョウちゃん | 2021年6月10日 (木) 22時23分