高橋研プロデュースのふたり
かすてら音楽夜話Vol.129
いきなりの、中村あゆみ「翼の折れたエンジェル」でございました。
今回取り上げるのは女性シンガーでありながら、男性の視点だったり、男性の口調で歌う人ですね。
「翼の折れたエンジェル」ですが、中村あゆみの3枚目のシングルとして1985年にリリースされ、オリコンで4位になります。実は日清カップヌードルのタイアップが付き、中村あゆみとともに売れました。当時の印象ではオリコンのチャート以上にヒットしたように思ってますが、それはCMのタイアップがものをいってますね。
この曲はプロデューサーでもある高橋研が作詞・作曲・編曲を手掛けてます。中村あゆみも偶然に高橋研と出会い、デビューに結び付けました。ただし、中村あゆみはそれまでまったく音楽的な活動とは無縁で、デビューにこぎつけたのは高橋が中村あゆみに何かを感じていたからだと思われます。
それは何か?中村の枯れたようなハスキーヴォイスが高橋の温めていたイメージに結び付いたのではないでしょうか。そのイメージとは、女性が憧れるような頼れる姉さん、いや男気のある姐さんといったところでしょうか。
アイドルの例を取るとファン層はほぼ異性が多くなります。歌謡界とは一線を画すポップス/ロックの世界ではこの図式はあまり当てはまらず、男性のソロならばファンは男女関係なく半々くらいでしょうか。女性のソロであると、男性ファンのほうが多くなるようなイメージです。ま、これはほぼデビュー直後の傾向ですけど、売れてくるとファン層も男女半々くらいに落ち着いてきますかね。
それを高橋はシンガーにそれまでの女性の言葉ではなく、やや強いメッセージを歌わせたり、男性の言葉を使ったりして、圧倒的に女性のファンを獲得するような作戦に出たのではないかと思われます。あるいは単に高橋がボーイッシュな女性が好きだっただけかもしれませんが。でも、圧倒的に女性ファンが多かったですね。
中村と高橋のコンビはこの後しばらく続きます。
さて、高橋研ですが、1979年にシンガーソングライターとしてデビューしますが、ヒットには恵まれず、その後楽曲提供のほうが多くなります。作詞としてはアルフィーの「メリーアン」などが有名ですが、作詞・作曲とも提供する相手は圧倒的に女性が多いという人です。
さて、中村あゆみとの関係を解消した高橋ですが、美裕リュウ(デビュー直後の表記、のちにミヒロリュウ)という女性シンガーと出会い、デビュー時からプロデュースと楽曲提供を行います。1995年頃ではないかと思います。
実は彼女はシンガー小柳ゆきの実の姉です。本名、小柳裕美。単に読みを業界っぽくひっくり返した芸名なのでした。
1997年のことでしたが、ワタクシは小山卓治(おやまたくじ)というシンガーソングライターのライヴを日清パワーステーションに見に行ったのですね。小山はソロのコンサートを開くほど売れてないので、複数組がジョイント出演するイベントでした。そこにミヒロリュウが出ていたんです。
次の小山の出るイベントにもミヒロリュウが出演してました。当時のミヒロリュウは高橋がプロデュースしていることは中村あゆみと同じですが、フォークギターを手にしてバックのメンバーも付けていたんです。
きいたことのない名前でしたが、CDショップに足を運び、セカンドアルバムの『Gardenia』を購入し、のちにデビューアルバムの『Ryu』も手に入れます。特に『Gardenia』は高橋の楽曲が多かったものの、結構内容のよい構成でした。自作曲もあったと思います。
その後、サードアルバムの『Super Love』が出まして、これを購入するとともに、渋谷の狭いライヴハウスにミヒロリュウを見に行きました。『Super Love』ではよりロック色を強め、自作曲も増えてました。そして彼女の単独ライヴは狭い空間に人がびっしりで、酸欠状態とともにつんざくような音が鳴り響き、その後数日は聴こえる音がくぐもるような症状となりましたが、満足できる内容でした。ミヒロリュウ自身も満足できるような発言をして、客の多さにも感謝してました。
これは、さらに地道にやっていくと売れていくんじゃないかと思っていたら、ミヒロリュウはあっさりとメジャー活動から離れ「SOLT」というバンドでインディーズでやっていくということになり、非常に残念だった記憶があります。
高橋としては中村あゆみ以上に手ごたえのある理想像ができたと思っていたかもしれませんが、ヒットには結びつかない例です。
現在のミヒロリュウです。セカンドアルバムからのシングルカット、「Howlin' Wind」でした。結構いいでしょう。歳を重ねましたが、日清パワーステーションと渋谷屋根裏で見た彼女はボーイッシュでかっこよかったです。あ、オレも高橋研目線?
ま、「頼れる姐さん」みたいな存在とすれば葛城ユキとか渡辺美里あたりがあがってきますかね。和田アキ子もそんな感じかな。
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コメント
小柳ゆきさんのお姉さんなんですね。今どきなメロディーにのせた高い歌唱力で聴かせますね。曲も悪くないので、ヒットするしないは時の運ってのも感じてしまう。
日本の音楽シーンはとんと疎い私としては、ヒョウちゃんのこの辺の音楽の造詣の深さはさすがと感心するばかりです。
投稿: lastsmile | 2021年9月28日 (火) 01時09分
lastsmileさん。
まったくの推測ですが、姉のミヒロリュウがいたからこそ、妹の小柳ゆきがこの世に出てきたといえるでしょうね。
姉がインディーズに活動の場を移すとともに、小柳ゆきが現れたというのも皮肉なものです。
ミヒロリュウの活動期間も我々がFBEATで議論していたころと重なります。
あの場で、様々な知らないミュージシャンを教えてもらったのですが、ミヒロリュウは誰にも教えられずに、まさに自ら出会ったという存在です。
ただ、FBEATでいろいろとご教示されて、自分の間口が広がったがために、ミヒロリュウに出会ったといえます。
それ以前は元春、達郎、ストーンズに松原みき程度でしたからね。
そうした意味では、lastsmileさんもワタクシに大きく影響を受けているといえます。
ここまで間口を広げることができました。ありがとうございます。
ミヒロリュウですが、まだまだ楽天やamazonで封を切ってないCDが手に入れられるようですよ。
かえって、中古版のほうが出回ってないようで。
投稿: ヒョウちゃん | 2021年9月28日 (火) 20時09分