男は顔じゃない
かすてら音楽夜話Vol.127
前々回でBoz Scaggsを取り上げ、「TOTOの生みの親」ということを書きました。
つうことで、TOTOからぼちぼち語っていきましょう。
1978年のTOTOのデビューシングル、「Hold The Line」でした。ビルボード5位のヒット曲です。
ボズの『Silk Degrees』に参加したDavid Paich(デヴィッド・ペイチ、key)、David Hungate(デヴィッド・ハンゲイト、bass)、Jeff Porcaro(ジェフ・ポーカロ、drums)を中心に、ギターのSteve Lukather(スティーヴ・ルカサー)、ポーカロ三兄弟の末弟のSteve Porcaro(スティーヴ・ポーカロ)をもうひとりのキーボードとして迎え、リードヴォーカルとしてBobby Kimball(ボビー・キムボール)を据えたのがTOTOです(初期メンバー)。
ボズの次のアルバム『Down To Then Left』以降はルカサーもレコーディングメンバーに加わってます。メンバーそれぞれが演奏が超絶に上手でボズ以外にも様々なところでレコーディングに起用されてます。
曲はもちろん自作で「Hold The Line」はペイチが作りました。全員が曲作りを行いますが、特に初期はペイチの曲がメインでした。
このようになかなかかっこいい、デビュー曲なんですが、気になりません?ヴォーカリストのルックスですよ。
<ルカサーとキムボール>
こんな感じで。
ロックバンドのヴォーカリストはバンドの華ですよね。ストーンズのヴォーカルはご存じMic Jaggerなんですが、第6のメンバー(結成時はメンバー)ともいわれたIan Stewart(イアン・スチュワート)という人がいまして、キーボーディストでした。ストーンズのデビューに際してイアンはメンバーから外され、以降はマネージャー兼サポートのキーボードという地位に甘んじたのですね。
それは、一説によるとイアンがロックバンドらしからぬ風貌であったからともいわれてます。若いころから見るからにおっさんでしたからね。
もし、ミスチルのヴォーカルが桜井和寿でなかったら。SPITZのヴォーカルが草野マサムネでなかったら。
ヴォーカリストはルックスじゃないとはいえ、バンドの正面で観客を受け止め、ギグを繰り返すうちに、ヴォーカリストは次第に顔つきが変わり、怪しさやカリスマ性を身に着けていくのです。
んー、しかし、ボビー・キムボールについては以上に挙げたヴォーカリストとは別のベクトルに向かってますよね。貫禄十分、この声があるんだから文句ないだろう、みたいな。
こちらは初のTop10ヒットとなる「Rosana」(1982年)です。最高位はビルボード2位です。これも、ペイチの曲ですね。
TOTOは前評判の割にはシングルヒットが出ず、アルバムセールスも絶対的ではありませんでした。ですが、4年ぶりとなるヒットがこの曲です。アルバム『TOTO IV』も彼らの最大のヒットとなります。
「Rosana」ではAメロをルカサーがちょろっと歌い、キムボールのハイトーンにつなげるというやり方ですね。ある程度、ヴィジュアルも考慮したってことなんですかね。
『TOTO IV』の快進撃はこれにとどまりませんでした。
TOTO初のビルボード1位獲得曲、「Africa」でした。曲はペイチとジェフ・ポーカロによるものです。
皮肉なことにリードヴォーカルはデヴィッド・ペイチでキムボールはサビで歌うのみ。実はTOTOはハンゲイトとジェフ・ポーカロ以外がヴォーカルができるというバンドでもあったのです。
そして、この『TOTO IV』の後に、方向性の違いからボビー・キムボールは脱退してしまいます。ま、後年復帰しているんですが。これにより、初期のバンド編成は終わり、以降はシングルヒットに恵まれませんでした。
なお、ベースのデヴィッド・ハンゲイトも収録後に脱退していて、後任はポーカロ三兄弟の次男、Mike Porcaro(マイク・ポーカロ)が担当しました。そのため、プロモーションビデオの音源はハンゲイトのものですが、映像ではマイクが映っております。
もうひとり、なかなか顔をさらさなかった人がおります。それは、「南から来た男」、Christopher Cross(クリストファー・クロス)です。
こちら、デビューシングルの「Ride Like The Wind」(邦題「風立ちぬ」、1980年)で、ビルボードいきなりの2位です。
デビューアルバム『Christopher Cross』(邦題「南から来た男」)は1979年末にリリースされました。アルバムジャケットはフラミンゴの絵で本人の写真さえありません。そして、ライヴもなし、メディアに出てこないというのは戦略だったのでしょうか。でも、わたしゃ、このアルバム買いましたよ。
謎の男だったわけですが、次のシングル「Sailing」(1980年)がついにビルボード1位。そして、アルバムとともにこの曲で1981年のグラミー賞5部門を受賞するという快挙をなしたわけです。
また、映画「Arthur」(邦題「ミスターアーサー」)の主題歌、「Arthur's Theme(Best That You Can Do)」(邦題「ニューヨークシティセレナーデ」1981年)もビルボード1位。
これで、ようやく顔が割れたというわけです。
これまた美声でなんともAOR向き。でも、ルックスはどうよ。という例ですが、今思えばちょっとぽっちゃりしたミュージシャン程度ですかね。でも、当時のソロシンガーたちとは別のベクトルのルックスでしょうか。現代ならこういうタイプもメディアによく登場しますよね。
なお、デビューアルバムの『Christopher Cross』は新人にしてはとても豪華なバックで構成されています。詳細は省きますが、「Ride Like The Wind」のバックコーラスはMicheal McDonald(マイケル・マクドナルド、元Doobie Brothers)だということはよくわかりますね。
それにしても、最初にボビー・キムボールを見たときにはびっくりしたなあ。
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コメント
ま、確かにtotoの面々ってあんまりロックバンドらしからぬメンバーでしたね。だからボズ・スキャッグスのバックバンドやってたのかもしれませんね(^^;。
投稿: おりんぴあ | 2021年9月 5日 (日) 23時26分
おりんぴあさん。
TOTOの面々は元々スタジオミュージシャンですからね。
クオリティは高いんですが、なかなかポップになり切れないというか、吹っ切れた感がないんですよね。
ま、そんな感想を持っていて、リアルタイムではアルバムも購入してませんでしたが、この前『TOTO IV』だけ中古で仕入れちゃいました。
投稿: ヒョウちゃん | 2021年9月 5日 (日) 23時56分
なかなか面白い視点での記事ですね。
TOTOⅣもクリストファークロスも大人買いで(でも中古)入手しました。
AORって30過ぎてから聴くようになって、学生時代はほとんど未聴でした。
ですので、聴いていい曲かどうかという基準くらいの知識なので前のボズと同様とても参考になります!
ミュージシャン、とくに華となるボーカルはどうしても顔も音楽のひとつになってしまうのでしょうね。
でも最近のでいえば、エド・シーランなんてあんな素敵な楽曲であのお顔。でも女性からも大人気ですよね。
外人さんは彫が深いので多少の不具合もなんとなく見えてきますが、日本人はどうしても気になる。
昔で言えば、井上陽水なんかTVに出ない理由はそれなんじゃないかと思ってたし。
山下達郎や小椋佳とか、声とお顔の違和感は半端なかったです。
昔のグループもアリスとか・・。今でもアリスは演歌グループ、殿様キングスと同じカテゴリーで見てます。
でもお顔があれでもいけてるサンボマスターとかもいますしね。あれはあの顔じゃないといけない。
女性は書きにくいというか、書いちゃいけないでしょうから、あえて触れません・・・。
投稿: lastsmile | 2021年9月 6日 (月) 13時58分
lastsmileさん。
ワタクシの場合あんまり本格的なロックから洋楽には入ってませんので、AORは割と聴いておりました。
でも、マイケル・フランクスとかボビー・コールドウェルなどには流れてません。
エア・サプライとかアルバム買ったですよ。
エド・シーラン、全く知らなかったです。
バンドのヴォーカリストというと自分の場合どうしてもミック・ジャガーになるんですが。
でも、ミックだって唇が分厚くて、どちらかというとモンキー系ですよね。
それでも、初期にはティーンエイジャーからキャーキャーいわれていたし、年を追うごとに迫力とカリスマ性が出てきました。
いうなれば、そこら辺のお兄ちゃんが次第に変わっていくんですよね。
井上陽水の場合、あの風貌なので初めのうちはホリプロでくすぶっていたみたいですね。
ブレイクしてもまだ、サングラスはかけていなかったです。
日産セフィーロのCMあたりからサングラスが定着したのかな。でも、それ以来外せなくなりましたね。
達郎は最初から顔を出していましたが、声の質とかクリストファー・クロスっぽいです。
竹内まりやとの結婚報道には、わたしゃ相当ショックを受けました。
谷村新司ですか。
それでもアリスは彼らなりのグルーブ感があったんじゃないすかね。
高校卒業直後に倉敷のユースで、大学生の兄ちゃんのギターに合わせて二人アリスをやったことがあることを、ここに告白いたします(爆)。
ま、結論から申しますと、ルックスは絶対じゃないすね。
もう普通で十分。実力があれば。
逆にルックスがいいばかりにいきなり前面に押し出されてしまった、リューベンなんて人もいますね。
あと、ボビー・キムボール的なのがクイーンのコピーバンド、KWEENってご存じかどうか。
ヴォーカルがフレディ・エトウといいますが、見事にメタボ、薄毛という中年なんですけど、声と動きはフレディ・マーキュリーなんです。
ブライアン・メイから絶賛されたそうで。
女性の場合はルックスではなくて体型とかですかね。
あっ、いっちゃった。
でも、わたしゃ真城めぐみさんとか大好きですよ。
投稿: ヒョウちゃん | 2021年9月 6日 (月) 23時27分