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2022年6月18日 (土)

助手席から見た風景

かすてら音楽夜話Vol.149

Yam865

*イメージです

昔から流れゆく風景を見るのが好きです。つまりは、移動していく列車やバスに乗っていることが好きです。

ですが、これらの乗り物から見える景色は座る位置にもよりますが、ほぼ左から右、あるいは右から左へと移り変わるもの。例外は、その乗り物の最前列、つまりドライバーとその横に座る人だけは、「流れゆく」風景ではなく、「迫りくる」風景を見ることになります。ちょっとばかり特別な眺めなのかもしれません。いい例が「乗り鉄」の人たちで、運転席の後ろにどう陣取るかが乗り鉄界の最も高いヒエラルキーだったりしますかね。

前置きが長くなりました。今回はクルマの助手席から、いわばロードムービー的な曲をいくつか取り上げたいなと。

 

当たり前ながら定番、松任谷由実の「中央フリーウェイ」(作詞作曲:荒井由実)でした。

映像は1996年の「Yumi Arai The Concert with old friends」からです。正隆さん(ダンナ、key)も鈴木茂(g)も、斎藤ノブ(per)も、ジェイクさん(sax)もみんな若いですね。

一応提供曲ということで、ハイファイセットも庄野真代もそれぞれあるんですが、やっぱりユーミンのライヴはメンバーが豪華。

とはいえ、これは前振りのようなものです。曲も1970年代のものですし。

 

こちらは、EPOの「うわさになりたい」(作詞作曲:EPO 編曲:大村憲司)です。1982年の4枚目のシングル「土曜の夜はパラダイス」(「オレ達ひょうきん族」エンディングテーマ)のカップリングですね。同年の3枚目のアルバム『う・わ・さ・に・な・り・た・い』のタイトルチューンでもあります。

こちらは、「中央フリーウェイ」と違って、思い切り女子の内面が語られています。ここからは歌詞の引用になりますがご容赦を。(註:@niftyで歌詞の丸写しはダメよとお達しがありました)

「♪すさんでた頃と 仲間も彼も 違うけど 私だけの 助手席見つけた」
「♪誰かが あなたに そう 告げ口するまで 昔の私を 隠していたい 愛を守るため つくろう偽りは ウソには ならないと言って」
1番のオープニング直後からサビまで。作品リリース時に二十歳そこそこ。もともと、歌唱力があって、コーラスワークにも長けているという評判の彼女でしたが、歌詞もなかなかですよね。

また、続く2番のサビ、「♪あの角に来たら わざとドリフトさせて あなたに体を傾けるから」も秀逸。

「♪つきあう男で 変わるというけれど タイプじゃないのに 不思議ね」という落ちもあります。

当時のEPOの本音であるのかどうか、ともかく、松本隆を含めた職業作詞家には書けないようなフレーズが飛び出してくるのですね。ま、逆にハンドルを握るであろう男子のことはほとんど出てこないのですが、それでも「うわさになりたい」はおそらくそれまでになかった女子の内面をさらけ出した名曲だと思います。

☆ユーミンにはドライビングミュージックではありませんが、「Destiny」の「♪安いサンダル履いてた」などの内面をさらけ出した曲もあることをお断りしておきます。

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<須藤薫>

 

須藤薫の「フロントガラス越しに」(作詞:田口俊 作曲:杉真理 編曲:松任谷正隆)でした。こちらはシングルカットされてませんで、1983年の4枚目のアルバム『Planetarium』に収録された曲です。

こちらも、助手席から眺めた風景ではあるのですが、彼と別れ、女友達とドライブするという展開になってますね。

そして、彼の忘れていった「カセット」。もちろん、志らくの落語や伯山の講談が入っているのではなく、ミュージックテープですね。おそらくですが、単純にアルバムを入れたのではなくて、彼と彼女が好んだような曲をちりばめた、オリジナルのコンピレーションであると想像いたします。

1980年代というと、MP3プレイヤーもブルートゥースもなくて、全部CDなどから(あるいはLPか)ダビングしたカセットテープがカーオーディオの「当たり前」でしたからね。

なんでも、現在でもアメリカとか一部の国では相変わらずカセットプレイヤー搭載というクルマが多いともききましたが。ま、日本では絶滅しましたね。

この「フロントガラス越しに」を生み出したのは、男性の田口俊という人なのでした。須藤薫という人は自作がほぼなく、ほとんどが外部発注なのです。中でも杉真理とは長くコンビを組み、晩年には須藤薫&杉真理というユニットを組んでいた時期もあります。

また、須藤薫はユーミンの『Surf & Snow』(1980年)でコーラスを担当して、注目を浴びたのですね。「サーフ天国、スキー天国」も「恋人がサンタクロース」も須藤薫の声が入っているのです。そのあたりの絡みもあり、松任谷正隆にアレンジをお願いしたのではと思います。

ちなみに、須藤薫さん、2013年にお亡くなりになっております。素晴らしい人材であっただけに残念です。

さて、男性側の目で見たドライビングミュージックは?ここでは映像を持ってきませんが、浜田省吾の「サイドシートの影」でしょうね。こちらは、聴けばわかりますが助手席には誰もいず、話しかけているというちょっと悲しい物語です。

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