かすてら音楽夜話Vol.166
今回、何度目かのQueenを取り上げます。
見慣れた1980年頃のQueenです。
左から、Roger Taylor(ロジャー・テイラー:Drums)、John Deacon(ジョン・ディーコン:Bass)、Freddie Mercury(フレディ・マーキュリー:Vocal Keyboard)、Brian May(ブライアン・メイ:Guitar)という不動のラインナップです。フレディが唯一無二のヴォーカリストですが、ロジャー・テイラーが歌う曲もアルバム中にはあります。そして、全員が曲作りをします。
さて、クイーンというと誰もが認めるビッグな存在なんですが、デビュー時にはまったくメディアからは認められないバンドでした。
デビューは1973年のアルバム『Queen』(邦題「戦慄の王女」)でしたが、当初から多重録音による重厚なコーラスとたった4人による演奏とは思えない複雑な曲の展開などに、イギリスの評論家たちはそれまでのロックの概念から外れていたため、酷評されることが多かったです。しかし、翌年のセカンドアルバム『Queen II』の全英5位という結果に引っ張られるように、デビューアルバムのチャートインし、1976年に24位まで上昇するというロングヒットとなったのです。
クイーンもアメリカ進出を果たしたのですが、まだまだトップバンドとは認められず、人気に火が付いたのは日本だったのでした。
これは日本だけの話かもしれませんが、The Beatles(ビートルズ)の解散以来、第二のビートルズ、ネクスト・ビートルズを探し当てて、またひと山当ててやろうという風潮がレコード会社や興行会社…いわゆるギョーカイにはあったように思えます。
すなわち、イギリスから発掘してきたバンドをその座に据えようというような。
それが、Bay City Rollers(ベイシティローラーズ)などであり、売り込む対象はティーンエイジャーの女子です。レコードを売り出すだけじゃなくて、今でいう「ヘビーローテーション」(音楽番組などで集中的にその曲を流すこと)を行い、「明星」「平凡」にとどまらず、学習雑誌(「中〇時代」「中〇コース」などなど)にも、カラーページを掲載、果てはバンドを招聘し、本国でも演奏したことのない、武道館などのデカい箱でライヴを行わせたりしました。
なんと、その中にですね、クイーンも入っていたのです。クイーンファンもフレディがインド人でゾロアスター教徒であること、今でいうLGBTQであること(もしかしたら、当時はLGBTQではなかったかもしれませんが)も誰もが知る由もなく、長髪で髭もありませんでしたので、ドラムのロジャーとともに女子にキャーキャーいわれていたものです。
VIDEO
映像は1977年発売のアルバム『News Of The World』収録の「We Are The Champions」(邦題「伝説のチャンピオン」)でした。
こんな感じのライブ(映像自体はオフィシャルビデオで、オリジナルのシングル音源に映像を重ねたものです)をやっていたわけです。でも、フレディの衣装が身体にぴったりと張り付くタイツで、胸元が大きくあき胸毛が強調されております。フレディが過激になっていく前段階ともいえますね。
1970年代中期から始まったイギリスのバンドの日本における一大プロモーションはベイシティローラーズの人気の陰りもあって、すでに下火になっていました。クイーンもすでに「Bohemian Rhapsody」をリリースしていて、アメリカでも知名度は高まっていた頃ですが、まだ「絶対」という存在ではありませんでした。
ベイシティローラーズが「Saturday Night」でビルボード1位を獲得しているというのに、この曲でも4位止まり。その後も、ヌード女性が自転車レースをするというジャケットの話題作「Bicycle Race」等をリリースしていましたが、どうもぱっとしませんでした。
そこで、ある種の方向転換を図ります。
VIDEO
1979年リリースのシングル、「Crazy Little Thing Called Love」(邦題「愛という名の欲望」)です。
フレディをはじめ、全員がライダーズスーツに身を固め、50年代のエルビスを彷彿とさせるような曲調なんですが、これでついにビルボード1位を獲得しました(1位の時点では1980年)。
それにしてもすでにLGBTQになっていたと思われるフレディが女性に囲まれる映像というのもすごい。割り切り方といい、その点はプロです。
さて、この曲は1980年のアルバム『The Game』にも収録された、いわば先行シングルなんです。
トップの画像は、『The Game』からいただいたものです。撮影時点はこのシングルのころと思われます。このアルバム、クイーンがついにシンセサイザーを導入したことが話題になりました。先行シングルでアメリカに浸透したクイーンですので、次に紹介する曲もビルボード1位を獲得します。
VIDEO
「Another One Bites The Dust」(邦題「地獄へ道連れ)でした。
先行シングルの時点ではまだフレディに髭はなく、この曲(アルバムからのシングルカットは4枚目)ではもう立派な髭を蓄えております。曲を作ったのはベースのジョン・ディーコンで、これまでほとんどのシングルはフレディかブライアンだったのですが、彼もついに才能を発揮しました。
おまけ
さて、5曲のシングルが収録され、うち2曲がビルボード1位というお買い得のアルバム、『The Game』なんですが、こんな曲もあります。
VIDEO
「Don't Try Suicide」(邦題「自殺願望」)。…邦題、意味が逆ですわ。
これ、某氏に聴かせたいですわ。…おあとがよろしいようで。
かすてら音楽夜話では「お題」を募集しております。その際はコメント欄で知らせてくださいませ。モチベも上がるでございますよ。
また、人気ブログランキングにも参加しております。また、読みたいと思われたり、応援してくださる方はバナークリックをお願いいたします。
音楽評論ランキング
最近のコメント