かすてら音楽夜話Vol.168

山下達郎(以下達郎)が一部のメディア(主にネットニュース)でバッシングにあっています。
それは、松尾潔氏がスマイルカンパニーとの契約解除にあった件について、達郎が自身のラジオ番組、「サンデーソングブック」で釈明とも取れそうな発言をして、この中の一言がジャニー喜多川氏を擁護すると解釈されてしまったからでしょう。
いつもならばYouTubeの映像をお借りして、ワタクシの好きな音楽やミュージシャンの話をだらだらと展開する記事なのですが、ワタクシなりに達郎発言を解き明かしていきたいと思います。
ちなみに、ワタクシは山下達郎のアルバムをほぼ持っております。コンサートも複数回行きました。比較的好んで聴く人といえましょう。ですが、最近は遠ざかってまして、以下は旧Niftyserveのとあるフォーラムで知りえた情報も含んで記事にいたしました。
スマイルカンパニー
形式上は芸能事務所ですが、もともとは山下達郎のコンサート等のマネジメントを目的として、キョードー東京の資金援助を受け、芸能プロダクション、「ワイルドハニー」が1978年に設立されます。また、著作権管理を目的とした音楽出版社をスマイル音楽出版としました。1984年に山下達郎のRCA時代のディレクターであり、アルファムーンレコード(達郎が所属)の創業者、小杉理宇造氏が社長就任と同時に音楽出版社を「スマイル音楽出版」、芸能プロダクションを「スマイルカンパニー」に変更します。
小杉氏はその後、ワーナーミュージック・ジャパンの代表取締役会長に就任し、2003年にジャニーズエンターテイメント(レコード会社)代表取締役社長に就任します。ジャニーズエンターテイメントはKinKi KIdsのデビューに合わせて作られた会社ですね。
さて、松尾潔氏ですが、2009年に松尾氏の個人事務所が顧問料をスマイルカンパニーに支払う形で業務提携したようです。
スマイルカンパニーは大きなプロダクションではなく、所属のアーティストもかなり少なく、実質的には山下達郎と竹内まりやの個人事務所みたいなものだと思います。
それで、松尾氏がスマイルカンパニーで何をやってきたのかがさっぱり見えてこないです。おそらくは、松尾氏がプロデュースするアーティストや楽曲などを「スマイルカンパニー」の後ろ盾があることに利用してきたのではないかと思います。
スマイルカンパニーと業務提携でありながら組織のトップ同士が関係の深いジャニーズ事務所を批判すれば、提携の解除になるのは普通のこと。…というか、顧問料いらないから提携解消ということでしょう。松尾氏もEXILEとか三代目J.Soul Brothersなど(ワタクシの琴線にはまったく入ってきませんが)売れ線と仕事しているので、スマイルカンパニーとの提携解除は痛くも痒くもないはずです。
ジャニー喜多川氏の性的虐待
サンデーソングブックでの達郎の発言、「一方的な性的虐待についてはもちろん、反対します」、「ジャニー氏がそういうことをしていたのかは知らない」。特に後者について批判が出ているのですが。
達郎はジャニーズ事務所に入り浸っていたわけではなく、それこそ報道等でジャニー氏の振る舞いが漏れ伝わってきたことは当然知っていますよ。ですが、実際に現場を目撃したとか、ジャニーズ事務所所属のタレントから話をきいた、ましてや相談されたということはないだろうから、「知らない」というしかないんじゃないでしょうか。
我々がジャニー氏が怪しいというのは一部の報道や暴露本等で伝えきいてますが、直接見聞きしたわけではない、それと同じことですよね。
そのようなことならば、ジャニーズ事務所所属のタレントは古くはあおい輝彦、高橋元太郎(古っ!)など星の数ほどいますから、そっちで取材すればいいことです。ヒロミ・ゴーなんてよく知ってるんじゃないすかね。まあ、誰もが口をつぐんでしまうんでしょうけど。
そういうことは、ジャニーズ事務所自体の自浄作用が必要なのです。これ、ほとんどどこかの大手中古車会社と同じですよね。
もう聴いてもらわなくてもいい発言
やはりサンデーソングブックで、「私のこの発言を忖度と思われる方はそれで構いません。そういう方にはもう聴いてもらわなくても結構です」というものが、炎上しています。
スマイルカンパニーの著作権に対する考え方は、非常にシビアです。サブスクはないし、YouTubeでの違法アップロードはすぐさまチェックされ、削除されます。映像の販売もないと思いますね。
つまりは、スマイルカンパニーの楽曲を聴きたければ、自分で購入したり、コンサートに来いということなんですね。唯一ただで聴けるのが、サンデーソングブックくらい。あるいはタイアップで流れる曲を聴くとかで。でも、これも印税が発生するので、OKしているんですね。
1990年代に入ってから達郎のアルバムリリースはめちゃくちゃスパンが長いんです。7年なんてのはざらで、昨年リリースした『Softly』に至っては11年ぶりです。
コアなファンはそれでも待つし、離れていかないだろうという自負があると思います。それに、ヒットチャートを狙ってないし、武道館やドーム球場などの観客数は見込めるものの、音が悪い会場では公演を行わないという徹底したポリシーがあるので、世間で何が起ころうが、このままの姿勢を貫くんだと思いますね。
身内は徹底して守る

KinKi Kidsのデビュー曲、「硝子の少年」(作詞:松本隆 作曲:山下達郎)では楽曲提供者としてふたりにちょっとした歌唱指導を行ったようです。それはこのふたりにこれまでのジャニーズ事務所所属のタレントとは違うものを感じ、ある程度熱のようなものを伝えたかったからだと思います。近藤真彦にはそういうことはせず、ただの楽曲提供者という立場ですね。
ま、それはジャニー氏の「初登場(オリコン)1位」と「ミリオン(100万枚)」というかなり無理な要求もあったでしょう。
ふたりも昨年再び達郎に曲提供を頼んだほど。
達郎のコンサートに何度か足を運びましたが、バンド紹介で、ギターの佐橋佳幸(松たか子と結婚するずっと以前のことで、ほぼ知名度のないとき)のギターを誉め、「ギターデュオの山弦もやっていて、はっきりいってG(実名をはっきりいいました)なんかよりずっと上手い」と発言しました。
この時、サックス奏者、土岐英史氏の紹介では娘である土岐麻子がヴォーカルを務めるCymbalsをプッシュしてましたね。
また、これはどうかなと思いますが、竹内まりやがセルフカバーした「駅」について、アルバム『Impressions』でのライナーノートで、竹内まりやが提供した「有名なアイドルの曲の解釈のひどさに、これは是非ともまりやが歌うべきだ」と提案したとあります。このアイドルとは中森明菜なんですが、そこまでいっちゃうか、ですよね。ま、これも竹内まりやを立てたということなんでしょうが。
結論
達郎としては松尾氏の発言を受けて、なにもサンデーソングブックであのようにいわなくてもよかったのですが、コンサートのMCでも30分近く喋るし、興が乗ってくると、どんどん洒脱になってくるので、あのような発言が飛び出したのだと思います。黙っていられない人なんでしょう。
もうこれ以上の発言はないと思いますが、文春をはじめバッシングは続きそうな予感も。でも、本人はそんなに気にしてはいないと思いますが。
ところで、週刊文春、7月27日号、購入して読んでみたけど、ジャニーズの座付き作家ってなんだよ!そのほとんどの曲には松本隆もかかわっているんだぜ。それに、ジャニーズ関連の楽曲提供者は達郎だけじゃなくて、歌謡界の外にも星の数ほどいますし。また、アルバムリリースの長いスパンを「長い停滞」で「硝子の少年」で復帰したみたいに書いてありますが、その間にアカペラアルバムをリリースしたり、自身と竹内まりやのアルバムをRCA時代までさかのぼってデジタルリマスターしていたことには触れていない。というか、調べてもないんでしょう。
「ジャニー氏の性的虐待はけしからん。ジャニーズに数多く曲を提供してきてあれはなんだ?」という論調が透けて見えました。
「ミヤネ屋」とかでも達郎関連というか松尾氏に取材して取り上げたようですが。ほかに報道することあるだろ。テレビ局もジャニー氏の問題を取り上げる一方で、どーでもいい、ジャニーズ事務所のタレントを入れ代わり立ち代わりスポットを流しているというのは、やはり視聴率の問題なのかな。なんたって大河ドラマでさえ、俳優じゃなくて所属タレントを主役にするからねえ。
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