アウトテイクだらけで全米1位ゲット
かすてら音楽夜話Vol.170
この記事を書こうとしていて、タイミングよく入ってきたのが、The Rolling Stones(ローリングストーンズ)、18年ぶりのスタジオアルバム『Hackney Diamonds』リリースのニュース。
一昨年、ドラムスのCharlie Watts(チャーリー・ワッツ)が亡くなり、メンバーが3人になってしまったストーンズ。しかも、Mick Jagger(ミック・ジャガー)とKieth Richards(キース・リチャーズ)は今年傘寿の80歳、Ron Wood(ロン・ウッド)は76歳というどこから見ても老人の集まりに、どこにそんなパワーが宿るのかホントにぶったまげました。
しかも、新曲の「Angry」が9月7日付でリリースされ、すでにYouTubeにプロモーションビデオがアップされております。
映像は過去のツアーのものを一部流用していますが、もちろん音は最新。
聴いている分には1980年代と何ら変わりません。これも驚異。
さて、ここからが本題です。
お馴染み、「Start Me Up」(1981年)、1980年代を代表するストーンズの曲で、近年はツアーのオープニング曲で使われることの多い、ストーンズの代名詞みたいな曲でもあります。
チャート上ではビルボードHot100(シングルチャート)で2位止まりでした。当時の1位である、Daryl Hall & John Oates(ダリル・ホール&ジョン・オーツ)の「Private Eyes」か、オリビアの「Physical」に阻まれましたね。
アメリカのもうひとつの権威あるチャート、Cash Boxでは1位になっているはずですが。ビルボードとキャッシュボックスは集計方法が違うのですね。
さて、この曲が収録されたアルバム『Tattoo You』(邦題『刺青の男』、1981年)ですが、これまた大ヒットし、ビルボードHot200(アルバムチャート)では1位に輝きます。この当時のストーンズはセールスも好調で、1971年のアルバム『Sticky Fingers』からこの『Tattoo You』まで8作連続の1位を獲得しています。
しかし、この1980年はじめの時期、ミックとキースの関係がいいものではなく、それでもストーンズにはアルバムリリースの要求が強まっていたのでした。
そして、『Tattoo You』の前のアルバム『Emotional Rescue』ではツアーに出なかったため、次のアルバムでツアーに出るというプレッシャーもかかっていたのです。
ストーンズのソングライターはミックとキースです。デビュー直後はミックが作詞し、キースが曲を作るというコンビだったようですが、この組み合わせで「Jagger/Richards」(キースは本名ではないKieth Richardを名乗っていた時があり、この時までは「Jagger/Richard」)を共同名義としてクレジットされていました。
The Beatlesの「Lennon/McCartney」と同じです。
ですが、キャリアを積むことで、それまでのそれぞれのアイデアを持ち寄って曲を仕上げることから、それぞれが曲を作ってきてそこにバンドとしてアイデアを加える形に変わってきました。つまりは、「Jagger/Richards」とクレジットされていても、ミックの曲、キースの曲となっています。これはビートルズも同じ。
さて、そこにニューアルバムのリリースということが重なってきます。前作『Emotional Rescue』までのストーンズは長時間スタジオにこもって曲をいくつものテイクを収録し、さらには別のスタジオでミックスダウンするという具合で、1枚のアルバムをリリースするまでかなり長いスパンを必要としていました。
しかし、この時はそんな時間がありません。そこで取られた手法が、それまでお蔵入りしていた曲を活用するというものでした。事実、「Start Me Up」はアルバム『Black And Blue』(1976年)から『Some Girls』(1978年)にかけて曲が成立していたものの、アルバムからは選に漏れた曲でした。
ただし、『Tatoo You』リリース時にはこのことは明らかになっていませんでした。
こちら、『Tattoo You』収録の「Slave」(邦題「奴隷」)です。シングルカットはされていません。
この曲も「Start Me Up」と同じ頃に存在していたといわれています。
アルバム中の11曲のうち、10曲がお蔵入りしていたものだといわれています。とはいえ、以前の収録をそのまま持ってきたのではなく、それらを基にしてオーバーダビングやコーラスの追加、それまでになかったパートの追加などの処理をしていて、とてもお蔵入りしていたものとは思えない出来に仕上がっています。
この「Slave」ではジャズ界の巨匠ともいえるSonny Rollins(ソニー・ロリンズ、サックス奏者)を起用しました。史上最強のライヴバンドであるからこそ、成立したコラボということでしょう。余談ですが、ストーンズにはブラスセクションはありませんが、サポートメンバーであるBobby Keys(ボビー・キーズ、故人)という人がいて、「Brown Suger」でのサックスソロが有名ですが、この時は一時的にサポートから外れていたのでした。
また、ストーンズのコーラスあるいはバッキングヴォーカルは主にキースとロニーが行っていましたが、掛け声みたいなもので、コーラスとしての体はなしていないものが多かったです。それでも、収録にはリードヴォーカルであるミックもコーラスを担当し、なんとかしておりました。この「Slave」をはじめ、『Tatoo You』ではミックのコーラス部分をかなり重厚にして、それまでのラフな形は見せないように仕上げました。
そして、ここが重要なのですが、Bob Clearmountain(ボブ・クリアマウンテン)というミキサーを初めて起用し、サウンド全体を明確に仕上げてきたのがこのアルバムでした。
正直申しますと、レコード時代のLPではあまりよくわかりませんでしたが、CDになって『Tattoo You』以前の作品と聴き比べてみると違いははっきりとわかります。ただ、近年発売されたリマスター盤では、どのアルバムもかなりクリアに仕上がっていて、違いは少なくなっているかもしれませんが。
それでは、最後にこの曲を聴いてお別れしましょう。
「Black Limousin」でした。ロニーがクレジットされた数少ない曲です。
映像は1981年のUSツアーから。キースもロニーもタバコ吸いまくりですねえ。映像にはありませんが、この時ベースのBill Wyman(ビル・ワイマン)もステージで吸ってました。時代ですね。
とにかく、『Tattoo You』はアメリカだけで400万枚の売り上げがあり、その後のUSツアーとヨーロッパツアーが大盛況になり、USツアーを基にしたライヴアルバム『Still Life』がリリース、ビルボードHot200で5位となり、バンドはさらにリッチになっていくという絵にかいたような成功を収めたのでした。
今やストーンズはビッグになりすぎていて、もはやチャートを追うようなことは狙ってないのですが、アルバムチャートでは『Tattoo You』が最後の1位。シングルでは「Miss You」(1978年)が最後の1位なんです。
果たして、アルバム『Hackney Diamonds』とシングル「Angry」がどの程度チャートで上昇するか気にしてみます。これでどちらかが1位を取ったら史上最高齢です。日本だったら、矢沢やユーミン、達郎にまりやがそこまでやるかということですな。
おまけ
ジャニーズの件、実はThe Rolling Stonesにも関係していて、SixTONESを「ストーンズ」と読ませるようにしたというのは、ジャニー氏だったということです。まったく、リスペクトのかけらもないのかよ。でも、メジャーになり切れなかった「イーグルス」というグループもいたそうですよ。
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