歌う女優その2
かすてら音楽夜話Vol.177
前回の続編です。
ともさかりえ
わたしゃ、パソコン通信(いまや死語)というものをやっておりまして、そこの会議室(niftyserveではフォーラム)、音楽フォーラム(Fbeat)で「これはいい」と勧められて購入したのが、ともさかりえの『むらさき。』というアルバムでした。
余談ですが、旅行フォーラム(Fworld)にも参加しておりまして、そのふたつのフォーラムつながりで一部の人と今でもつながりがあるわけです。
さて、『むらさき。』ですが、1999年2月のリリース。ともさかさんが19歳の時の作品です。アルバム全11曲なんですが、作家陣が豪華なんですね。
ざっと、挙げると、古内東子、種ともこ、具島直子、鈴木祥子、上田知華、YOU(exフェアチャイルド、バラエティによく出てくるおばはんです)、そして、シーナ・リンゴ(クレジット表記のまま、もちろん椎名林檎です)といったところ。
古内東子が2曲、椎名林檎が3曲の提供です。椎名林檎は当時20歳で、すでに「幸福論」、「歌舞伎町の女王」で鮮烈なデビューを飾っていたばかりのころ。ともさかりえへの曲提供と並行してやはり1999年2月(『むらさき。』と同日リリース)にファーストアルバム『無罪モラトリアム』をリリースするという一番旬な時期でもあります。
アレンジもまた豪華な陣容で、亀田誠司、佐橋佳幸、高野寛なんてところです。
「カプチーノ」(作詞作曲:シーナ・リンゴ 編曲:亀田誠司)でした。
歌い方もかなり椎名林檎の影響が感じられます。
7枚目のシングル、アルバムからは3曲目のシングルカットです。オリコンでは67位に沈んでますが、1年半後の8枚目のシングルで現在のところラストシングルでもある「少女ロボット」はやはり椎名林檎の提供でオリコン12位まで上がりました。
これは、もしかしたら椎名林檎の認知度の差なのかもしれません。
アルバム『むらさき。』の11曲目、「シャンプー」(作詞作曲:シーナ・リンゴ 編曲:亀田誠二)ではほぼ椎名林檎のピアノとともさかの歌のみですが、曲の終わりに「ほっ」と安堵したようなため息と椎名の拍手が小さく収録してあります。
アルバム自体はオリコン40位でしたが、バリエーションにとんだ作家陣と、いい意味で力の抜けた自然体で歌うともさかりえのバランスが絶妙です。ともさかさんのヴォーカルですが、このアルバムでは腹の底から歌うような感じはまるでなく、まるで鼻歌のような厚みが感じられません。でも、これがいいんですよね。もしかしたら、実質的なプロデューサーの亀田誠司あたりのアイデアかもしれませんが。
さて、ひときわ大御所感を醸し出す最近の椎名林檎に対し、ともさかさんですが、2009年に10年ぶりとなる『ドリドリ。』というアルバムをリリースした以外、音楽活動はありません(ベストアルバムのリリースはあります)。女優としても中堅どころで、主役級ではないというのが残念ですけどね。
ともさかさんの公式YouTubeチャンネルがなく、映像はほぼ違法アップロードです。削除覚悟でこちらの曲もお聴きいただきましょう。
アルバムから2曲目のシングルカット、「愛しい時」(作詞:YOU 作曲:上田知華 編曲:高野寛)でした。
いやあ、なんだかんだここでいうより、かつて書いたアルバムレビューがありますので、是非とも参照してください。
薬師丸ひろ子
角川映画元祖「歌う女優」です。
紅白、ご覧になりました?「セーラー服と機関銃」でしたね。今年、還暦を迎える彼女に歌わせんのかい…なんて思いましたが、薬師丸さんより10歳年上の伊藤蘭に「年下の男の子」なんだから、ま、いっかですかね。
解説不要ですが、「セーラー服と機関銃」(作詞:来生えつこ 作曲:来生たかお 編曲:星勝)で、デビュー曲にしてオリコン1位を獲得しています。
提供者の来生たかおにはセルフカバーすることになる「夢の途中」(クレジットは「セーラー服と機関銃」と同じ。一部歌詞が異なります。)という曲がありますが、実は映画「セーラー服と機関銃」の主題歌は来生たかおで行くことが決まりかけていたのです。
これを角川春樹が主演女優に歌わせろとなり、シンガー薬師丸ひろ子が誕生したわけです。監督の相米真二が提案したという説もあります。
しかし、これで来生のもとには曲の依頼が殺到し、一躍ヒットメーカーとなったので、結果的にはめでたしめでたしですかね。
薬師丸さんで忘れてはならない重要な楽曲、「元気を出して」(作詞作曲:竹内まりや 編曲:椎名和夫)でした。
この曲はシングルカットされていませんが収録アルバム『古今集』(1984年)はオリコンアルバムチャート1位を獲得しました。
竹内まりやも1987年にアルバム『Request』でセルフカバーし、翌年シングルとしてリリース、オリコン20位を記録しています。ここでは薬師丸さんもコーラス参加しています。
ちなみに、まりやの『Request』はほとんどが提供曲のセルフカバーですが、きっかけは中森明菜へ提供した「駅」だといいます。ここで達郎が出てきて(中森の)曲の解釈に憤慨したため、アルバムができるきっかけになったとのこと。心ではそう思っていても、一度提供したものはすっぱり忘れてメディアにはそんなことは出さないというのが、大人の対応なんすけどね。ましてや妻ではあっても達郎の曲ではないし。
さて、薬師丸さんですが、これまでにシングル25枚、アルバム10枚をリリースしています。うち、シングル1位が3曲、アルバム1位が1枚という具合で、いずれもチャート上位にランクインしてます。
これもまた、角川映画の「気まぐれ」がなければありえなかったこと。人生何があるかわかりませんね。
と、いうことで、2024年の音楽話、第1弾でした。
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コメント
あけましておめでとうございます。
昨年の紅白ですが、ちゃっかりエレカシも
出ていましたね。
今回は大泉洋に歌手をやらせるとか、伊藤蘭に
キャンディーズを歌わせるとか、かなり無理が
ありました。
薬師丸さんも勿論、できれば見たくなかった
還暦間際の図でした。
ともあれ、今年もよろしくお願いいたします。
投稿: ペンタのP | 2024年1月10日 (水) 20時15分
ペンタのPさん
あの紅白は旧ジャニーズ系がNGだったので、出演者交渉に難があったと思います。
そこで頼るのが、アミューズなんすね。
福山雅治あたりは準備していたと思うんですが、隙間を埋めるべくPerfumeから星野源、エレカシ、大泉洋と起用されたと。
蘭さんは大里会長(キャンディーズの元マネージャー)あたりからの口利き…なんてのはうがちすぎですかね。
薬師丸さんの曲はタイトルがまるで歌詞と関係ないんですが、「夢の途中」としてとらえれば、違和感ないんじゃないかな。
個人的にはQueen+Adam Lambertは見たくなかったっす。
リモートながら、セットがひどすぎ。
今年もよろしくでーす。
投稿: ヒョウちゃん | 2024年1月10日 (水) 21時04分
このシリーズ、早くも第2弾ですね。ともさかりえ、あまり知らなかったのですが、いいアルバムを作っているようですね。同じ角川映画映画から出発した薬師丸ひろ子と原田知世。その後の軌跡は違っていても、息の長い芸能生活は共通するところ。この二人を比較してみるのも、おもしろいかもしれませんね。次回も楽しみです。(俳優もありかもしれませんね)
投稿: アニタツ | 2024年1月14日 (日) 21時47分
アニタツさん
ともさかりえは歌番組に出たりライブをやっている場面を見たことがないので、歌唱力が果たしてあるのかやや疑問ですね。
ただ、間違いなく『むらさき。』はなかなかのものです。
薬師丸さんはまさかの抜擢からシンガー誕生となりましたが、ものすごい発掘だったんじゃないすかね。
竹内まりや自身の「元気を出して」のコーラスは誰が聴いても薬師丸ひろ子とわかりますからね。
一応、男優でしたら加山雄三を取り上げていますので、探してみてください。
でも、ヒントになったかも。
投稿: ヒョウちゃん | 2024年1月14日 (日) 22時57分