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2024年1月30日 (火)

歌う銀幕スター

かすてら音楽夜話Vol.179

前回の男優編、肝心な人を忘れておりました。

それは、この人。

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わかりますかね。小林旭です。

画像は我が家にある、映画「ギターを持った渡り鳥」(日活、斎藤武市監督作品1959年)のスティール写真からです。右は浅丘ルリ子ですね。

1980年代の中ごろ、DVDなんて想像もつかなかった時代に、14800円も出してVHSビデオを購入しました。小林旭は元刑事でギターの流しになった「滝進次」(牧伸二じゃありません)が流れ着いた函館で浅丘ルリ子と知り合い、地元の黒幕を懲らしめて次の町に去っていくという内容です。

「渡り鳥シリーズ」は全8作制作されました。大まかなストーリーはどれもほぼ同じで、小林旭の滝進次だけが同一人物なんですが、ヒロインが浅丘ルリ子、小林旭のライバル的存在が宍戸錠、滝を追ってくる女性が白木真理(必殺仕掛人の中村主水の妻役で有名)だったりします。

時代が時代なのか設定がすごいですね。現代なら刑事を辞めたらワイドショーに引っ張りだこなんですが、いきなり流しですからね。いくら何でも、そういう人が日本にいたのか、いてもヒトケタくらいなんじゃないでしょうか。

宍戸錠も殺し屋みたいな役ですが、ライバル視しつつも最後は小林旭と協力して相手をやっつける、やはり流れ者役です。でも、最後の二作には出演してないようです。

このシリーズ、なんとなく有名なこちらを購入しましたが、今だったら6作目の「波濤を越える渡り鳥」をぜひ見てみたいです。なんと舞台はバンコクで、初の海外ロケを行った作品です。ただし、クレジットされる俳優がすべて日本人なんですね。宍戸錠は「ラオスの虎」という役です。

さて、小林旭は「ギターを持った渡り鳥」でも主題歌を歌っております。映画デビューは1956年で、1958年の主演映画「女を忘れろ」で同タイトルの主題歌を歌い、歌手デビューしました。セカンドシングル「ダイナマイトが百五十屯」から、「マイトガイ」のニックネームを付けられます。その後、2018年までに158枚のシングルをリリースしています。これは、銀幕のスターとしては加山雄三もびっくりな数ですね。すごい時には月3枚のリリースなんてこともあったようです。

さて、小林旭といえば「さすらい」とか「昔の名前で出ています」というスナックあるいは酒場系の演歌チックな曲が有名かもしれませんが、ワタクシの押しはこちら。

 

「自動車ショー歌」(作詞:星野哲郎 作曲:叶弦大 編曲:重松岩雄)でした。1964年の53枚目のシングルです。

当時、オリコンがなく正確なチャートがないのですが、売り上げが60万枚だとか。こちら、コミックソングっぽく当時の車種をダジャレ風に盛り込んだ歌です。この曲も日活映画、「投げたダイスが明日を呼ぶ」の挿入歌だそうです。この映画も「黒い賭博師シリーズ」なんだそうで、まだまだ映画が大衆の娯楽だった時代ですね。

それにしても、当時の車種、外国車は別にして日本車で生き残っているのは「クラウン」くらいですね。そして、1番の歌詞のラスト「♪ここらでやめてもいいコロナ」は差し替えです。もともとは「♪ここらで一発シトロエン」だったそうで、星野哲郎大先生、やっちまいましたね。(上記は「自動車ショー歌」作詞:星野哲郎より引用しました)

また、歌いまわしがアキラ節ともいわれる、地声の高さがよく出ています。決してファルセットに逃げることなく、かすれたような声で歌いきってしまうのが、小林旭ですね。

そして、もう一丁。

 

「熱き心に」(作詞:阿久悠 作編曲:大瀧詠一 ストリングスアレンジ:前田憲男)でした。

1985年の124枚目のシングルで、オリコンシングルチャート12位、翌1986年の年間シングルチャート20位というロングヒットです。1986年の第28回日本レコード大賞ノミネート作品(銀賞)で、阿久悠氏が最優秀作詞賞を受賞した曲ですね。

大瀧詠一並びに前田憲男が「スペクターサウンド」とも呼ばれる「音の壁」(Wall of Sound)を再現しております。ちなみに、スペクターとは日本に定住しているダジャレ好きな人でも、スペクトラムのメンバーでもなく、アメリカの音楽プロデューサー、Phil Spectorのことです。

ウォール・オブ・サウンドとは、録音時に複数の楽器(ギターならギターを数人配置)をユニゾンで弾かせて音圧を上げる手法ですね。大瀧さんも自らの作品にこのやり方を取り入れていました。

大瀧さんもさすがはミュージシャンであり、プロデューサーであり、小林旭ファンでもあるので、小林旭の音域をよく理解してますね。決して限界ぎりぎりの高さまで音を上げることなく、アキラ節を封印してまでも、小林旭の良さを醸し出しております。また、途中の転調とコードを上げることなどもいつもの大瀧さんの手法で、同時にナイアガラサウンドに仕上がっています。

阿久悠氏が作詞賞を取りましたが、「熱き心に」の製作スタッフと小林旭にレコード大賞の特別選奨が贈られています。大瀧さん並びに前田さんにも何か贈ってほしかったですが。

つうことで、小林旭でした。最近は高齢のためか、メディアには登場していませんが、2018年に158枚目のシングルをリリースしています。芸歴は古いですが、加山さんより1学年下。長生きしてほしいもんですわ。

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コメント

波濤を越える渡り鳥、調べてみたらアマゾンプライムで見られそうなので見てみます。
昔のタイが楽しみ!!

投稿: スクムビット | 2024年1月30日 (火) 21時11分

スクムビットさん

通販でDVDが3250円ですね。
日本人俳優がタイ人を演じているんですが、役名はタイ人の名前っぽいです。
面白いのであるならば、DVD買っちゃうかな。
御徒町で感想をきかせてください。

投稿: ヒョウちゃん | 2024年1月30日 (火) 22時16分

 おっ、小林旭ですね。残念ながら映画の方はほとんど観たことはありません。でもこの本数、そして毎回悪役で出演する宍戸錠の存在感もすごいです。「熱き心に」レコードのシングル盤で昔買いました。大瀧作品では森進一が歌った「冬のリビエラ」も印象的でしたね。こちらは、クレージーケンバンドもカバーしていますね。

投稿: アニタツ | 2024年2月 4日 (日) 17時22分

アニタツさん

宍戸錠も役作りのために、豊頬手術をするほどの役者バカ(誉め言葉です)ですよね。
Victorから出ている『Niagara Song Book II』には、「冬のリビエラ」と「熱き心に」が収録されていて、大瀧さんの詳しい解説が載っています。
それによると、どちらも同じスタッフで制作されたとのことです。

本文で書きそびれたのですが、「自動車ショー歌」は陣内孝則がカバーしてますね。ただし、若干の歌詞変更があるみたいです。

投稿: ヒョウちゃん | 2024年2月 4日 (日) 20時31分

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