温故知新・Carole King
かすてら音楽夜話Vol.190
温故知新シリーズ、今回はこの人です。
そう、Carole King(キャロル・キング)です。「King」という姓はライターネームで、出生名は異なります。
彼女は1942年生まれで、ニューヨークのブルックリンでユダヤ人の家系に誕生しました。大学でGerry Goffin(ジェリー・ゴーフィン)と出会い、妊娠しそのまま大学を中退します。ふたりは結婚し、それぞれ、社会人として働き始めますが、共同で曲を書き、夫婦のソングライターチームとしてヒット曲を提供し続けます。ちなみに、ゴーフィンもユダヤ系。エリック・カルメンもロシア移民のユダヤ系だそうで、前回のバリー・マンもそうだし、アメリカのユダヤ系、この業界には多そうですねえ。
曲作りのスタイルは、ジェリー・ゴーフィンが歌詞を書き、キャロル・キングが曲を作るというものでした。
最初の成功は1961年にThe Shirelles(シュレルズ)に提供した「Will You Love Me Tomorrow」とBobby Vee(ボビー・ヴィー)に提供した「Take Good Care Of My Baby」で、どちらもビルボードHot100(シングルチャート)の1位に輝いています。ちなみに、「Will You Love Me Tomorrow」はキング自身がセカンドアルバム『Tapestry』(邦題『つづれおり』)でセルフカバーしています。
しかし、ゴーフィン&キングの名前を世界的に知らしめたのは、この曲でしょう。
そう、Little Eva(リトル・エヴァ)に提供した「The Loco Motion」(1962年)ですね。この曲も当然、1位となり、そればかりか世界的にカバーされました。
同年にフランスではSylvie Vartan(シルヴィ・バルタン)、日本では伊東ゆかり。1963年にはあのThe Ventures(ベンチャーズ)までもがカバーしております。
リトル・エヴァですが、もともとはゴーフィンとキングの娘のベビーシッターだったそうで。当初、別のグループに提供するつもりで、子供をあやす歌がうまいリトル・エヴァにデモを歌わせたところ、これが抜群でそのままシングルになったとか。
映像はモノクロで不鮮明ですが、パンチの効いた歌声で、これは確実にヒットしますよね。ちなみに、この映像、あとで着色によるカラー化されたヴァージョンもYouTubeには上がっています。検索すれば、すぐに見つかります。
実は、のちにキャロル・キング自身もセルフカバーしているのですが、とてもリトル・エヴァにはかなわないという出来です。ちなみに、彼女はキャロル・キングより1歳若いのですが、2003年にお亡くなりになっています。
こちらは、1974年にアメリカのバンド、Grand Funk(グランドファンク)がカバーしたヴァージョンで、これまた1位を獲得しています。ビルボードによれば、Grand Funk Railroad時代を含めて、彼らの最大のヒットなんだそうです。
また、1973年には日本のゴールデンハーフが「ゴールデンハーフのロコモーション」名義でカバーしてます。こちらはかつて記事(カルトな王額カバーPart1)で取り上げてますので、気になる方はご参照ください。中古レコードでも持っております。
それにしても、同じ曲が異なるミュージシャンでそれぞれ1位を取るというのはほとんど例がないことと思います。
キングとゴーフィンは1968年に離婚し、ソングライターチームは消滅します。その直後、トリオのThe Cityをダニー・コーチマー、チャールズ・ラーキー(のち結婚)と結成しますが、アルバム1枚だけでグループは解散。
1970年にアルバム『Writer』でソロ活動を開始します(ほとんどの曲がゴーフィン・キング作)。そして、翌1971年の『Tapestry』がすごかった。このアルバムは15週連続ビルボードHot200(アルバムチャート)で1位を獲得し、約6年(306週)に渡って200位内にチャートインしたモンスター作品なんです。
先行シングル「It's Too Late」(作詞:Toni Stern)も5週、シングルチャート1位、カップリング曲の「I Feel The Earth Move」も両A面だったことから2曲がシングル1位として認定されています。
そして、James Taylor(ジェームス・テイラー)に提供した「You've Got A Friend」(邦題「きみの友達」)も『Tapestry』には収録され、テイラーのヴァージョンも1位を獲得しました。
翌年のグラミー賞では『Tapesty』が最優秀アルバム、「It's Too Late」が最優秀レコード(Record of the year、対象はアーティスト及びレコーディングにかかわった人物)、「You've Got A Friend」が最優秀楽曲(Song of the year、対象はソングライター)、キャロル・キングが最優秀女性ポップヴォーカルという4部門を受賞しました。
この4部門独占は前年のポール・サイモンの3部門(2部門はサイモン&ガーファンクル)を上回るもので、いまだにこの記録は破られておりません。ちなみに、ポール・サイモンとアート・ガーファンクルもニューヨーク出身のユダヤ系です。
と、いうことで、「You've Got A Friend」でした。二人が共演しているという珍しいヴァージョンです。もっとも、ジェームスのアルバムでもキャロルのアルバムでもサポートし合っているのですが。
この曲も多くの人にカバーされ、日本ではピンクレディまでもがカバーしております。そして、松原みきもアルバム『Blue Eyes』(ジャズやスタンダード曲のカバーアルバム)に収録してます。
キャロル・キングのグラミー賞4部門受賞というのは自身のキャリアの最高潮なんでしょうねえ。こののち、1970年代にリリースされたアルバムはなんとか10位内をキープしていましたが、1980年代に入るとランク外も増えてきました。
とはいえ、まだまだ現役であり、1971年の奇跡のような出来事は忘れられません。
では、最後に彼女の歌声を聴いてお別れしましょう。
アルバム『Tapestry』収録の「(You Make Me Feel Like)A Natural Woman」、ビルボード8位でした。オリジナルはアレサ・フランクリンに提供した曲です。
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