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2024年5月16日 (木)

温故知新・Carole King

かすてら音楽夜話Vol.190

温故知新シリーズ、今回はこの人です。

Ms0032

そう、Carole King(キャロル・キング)です。「King」という姓はライターネームで、出生名は異なります。

彼女は1942年生まれで、ニューヨークのブルックリンでユダヤ人の家系に誕生しました。大学でGerry Goffin(ジェリー・ゴーフィン)と出会い、妊娠しそのまま大学を中退します。ふたりは結婚し、それぞれ、社会人として働き始めますが、共同で曲を書き、夫婦のソングライターチームとしてヒット曲を提供し続けます。ちなみに、ゴーフィンもユダヤ系。エリック・カルメンもロシア移民のユダヤ系だそうで、前回のバリー・マンもそうだし、アメリカのユダヤ系、この業界には多そうですねえ。

曲作りのスタイルは、ジェリー・ゴーフィンが歌詞を書き、キャロル・キングが曲を作るというものでした。

最初の成功は1961年にThe Shirelles(シュレルズ)に提供した「Will You Love Me Tomorrow」とBobby Vee(ボビー・ヴィー)に提供した「Take Good Care Of My Baby」で、どちらもビルボードHot100(シングルチャート)の1位に輝いています。ちなみに、「Will You Love Me Tomorrow」はキング自身がセカンドアルバム『Tapestry』(邦題『つづれおり』)でセルフカバーしています。

しかし、ゴーフィン&キングの名前を世界的に知らしめたのは、この曲でしょう。

 

そう、Little Eva(リトル・エヴァ)に提供した「The Loco Motion」(1962年)ですね。この曲も当然、1位となり、そればかりか世界的にカバーされました。

同年にフランスではSylvie Vartan(シルヴィ・バルタン)、日本では伊東ゆかり。1963年にはあのThe Ventures(ベンチャーズ)までもがカバーしております。

リトル・エヴァですが、もともとはゴーフィンとキングの娘のベビーシッターだったそうで。当初、別のグループに提供するつもりで、子供をあやす歌がうまいリトル・エヴァにデモを歌わせたところ、これが抜群でそのままシングルになったとか。

映像はモノクロで不鮮明ですが、パンチの効いた歌声で、これは確実にヒットしますよね。ちなみに、この映像、あとで着色によるカラー化されたヴァージョンもYouTubeには上がっています。検索すれば、すぐに見つかります。

実は、のちにキャロル・キング自身もセルフカバーしているのですが、とてもリトル・エヴァにはかなわないという出来です。ちなみに、彼女はキャロル・キングより1歳若いのですが、2003年にお亡くなりになっています。

 

こちらは、1974年にアメリカのバンド、Grand Funk(グランドファンク)がカバーしたヴァージョンで、これまた1位を獲得しています。ビルボードによれば、Grand Funk Railroad時代を含めて、彼らの最大のヒットなんだそうです。

また、1973年には日本のゴールデンハーフが「ゴールデンハーフのロコモーション」名義でカバーしてます。こちらはかつて記事(カルトな王額カバーPart1)で取り上げてますので、気になる方はご参照ください。中古レコードでも持っております。

それにしても、同じ曲が異なるミュージシャンでそれぞれ1位を取るというのはほとんど例がないことと思います。

キングとゴーフィンは1968年に離婚し、ソングライターチームは消滅します。その直後、トリオのThe Cityをダニー・コーチマー、チャールズ・ラーキー(のち結婚)と結成しますが、アルバム1枚だけでグループは解散。

1970年にアルバム『Writer』でソロ活動を開始します(ほとんどの曲がゴーフィン・キング作)。そして、翌1971年の『Tapestry』がすごかった。このアルバムは15週連続ビルボードHot200(アルバムチャート)で1位を獲得し、約6年(306週)に渡って200位内にチャートインしたモンスター作品なんです。

先行シングル「It's Too Late」(作詞:Toni Stern)も5週、シングルチャート1位、カップリング曲の「I Feel The Earth Move」も両A面だったことから2曲がシングル1位として認定されています。

そして、James Taylor(ジェームス・テイラー)に提供した「You've Got A Friend」(邦題「きみの友達」)も『Tapestry』には収録され、テイラーのヴァージョンも1位を獲得しました。

翌年のグラミー賞では『Tapesty』が最優秀アルバム、「It's Too Late」が最優秀レコード(Record of the year、対象はアーティスト及びレコーディングにかかわった人物)、「You've Got A Friend」が最優秀楽曲(Song of the year、対象はソングライター)、キャロル・キングが最優秀女性ポップヴォーカルという4部門を受賞しました。

この4部門独占は前年のポール・サイモンの3部門(2部門はサイモン&ガーファンクル)を上回るもので、いまだにこの記録は破られておりません。ちなみに、ポール・サイモンとアート・ガーファンクルもニューヨーク出身のユダヤ系です。

 

と、いうことで、「You've Got A Friend」でした。二人が共演しているという珍しいヴァージョンです。もっとも、ジェームスのアルバムでもキャロルのアルバムでもサポートし合っているのですが。

この曲も多くの人にカバーされ、日本ではピンクレディまでもがカバーしております。そして、松原みきもアルバム『Blue Eyes』(ジャズやスタンダード曲のカバーアルバム)に収録してます。

キャロル・キングのグラミー賞4部門受賞というのは自身のキャリアの最高潮なんでしょうねえ。こののち、1970年代にリリースされたアルバムはなんとか10位内をキープしていましたが、1980年代に入るとランク外も増えてきました。

とはいえ、まだまだ現役であり、1971年の奇跡のような出来事は忘れられません。

では、最後に彼女の歌声を聴いてお別れしましょう。

 

アルバム『Tapestry』収録の「(You Make Me Feel Like)A Natural Woman」、ビルボード8位でした。オリジナルはアレサ・フランクリンに提供した曲です。

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2024年5月 4日 (土)

温故知新・Barry Mann

かすてら音楽夜話Vol.189

お久しぶりでございます。

スランプとかネタ切れとかではなく、ちょっと旅に出ていたもので。ココログの容量が一杯になるまで、できれば月2回ペースで頑張っていこうと思いますので、今後とも宜しくお願いいたします。

さて、今回のネタはBarry Mann(バリー・マン)というお方。とはいえ、この方、日本語版のwikipedhiaにはページがございません。

簡単に紹介します。

1939年米国ニューヨーク生まれ。60年からプロのソングライターとして活動。同年ソロ歌手として『フー・プット・ザ・ボンプ』でデビュー。歌手では「シビレさせたのは誰」のヒットを放つが、ソングライターとして活躍する。ライチャス・ブラザーズの「ふられた気持」やアニマルズの「朝日のない街」など、60~80年代に多数のヒット曲をリンダ・ロンシュタットやドリー・パートンらに提供。代表アルバムはセルフ・リメイクの『ソウル&インスピレーション』。

2012/07/30 (2017/06/27更新) (CDジャーナル)

とのこと。

個人的にはほぼなじみがないのですが、知るきっかけになったのはこの曲でした。

 

そう、3月にお亡くなりになった、Eric Carmen(エリック・カルメン)の「On Broadway」だったのです。

こちら、1975年のソロデビューアルバム『Eric Carmen』(邦題『Sunrise』)に収録されています。

あのエリック・カルメンにしてはずいぶんと地味な曲だなと思っていたら、カバーだったのです。原曲はアメリカのアフリカ系コーラスグループ、The Drifters(ドリフターズ)の1963年のヒット曲でビルボード9位を記録しています。

作者はバリー・マンと奥さんのCynthia Weil(シンシア・ワイル)、ソングライターチームのJerry Leiber & Mike Stoller(ジェリー・レイバー&マイク・ストーラー)となっています。

エリックのカバーは比較的原曲に忠実で、持ち味であるポップな部分を敢えて抑えているような感じです。よほど、ドリフターズ、あるいはバリー・マンが好きだったと思われます。考えてみれば、1949年生まれのエリックにとっては14歳くらいの時で、クラッシックを勉強しながらも通俗的なこの曲にも惹かれつつあったことが想像できます。

その他、エリックにはFour Tops(フォートップス)がリリースした「Baby I Need Your Loving」という曲のカバーもあるので、多感な時代に影響を受けたものに、リスペクトがあるのだと思いますね。

さて、「On Broadway」ですが、さらにはNeil Young(ニール・ヤング)もアルバム『Freedom』(1989年)でカバーしてます。

 

より、ロック色の強いヴァージョンですね。

さすがは、ニール・ヤング、クラシックなアメリカの定番曲を見事に自分のものにしております。ちなみに、彼はカナダ人ですけど。

個人的に『Eric Carmen』と『Freedom』のふたつのアルバムを持っていたので、「On Broadway」はちょっと気になっていたのです。

Ms0031

「On Broadway」を最も商業的に成功させたのは、この人、George Benson(ジョージ・ベンソン)でしょうか。

ベンソンはもともとはジャズ・フュージョン系のギタリストでしたが、ヴォーカルもイケるということで、70年代後半のフュージョンブームに乗って続々とアルバム・シングルをリリースします。

 

1978年のライヴアルバム『Weekend In L.A.』からのシングルカットで、ビルボード7位。リズム&ブルースのチャートでは2位を記録しました。ライヴのテイクがヒットしたというのはPeter Frampton(ピーター・フランプトン)の「Show Me The Way」(1976年、6位)以来でしょうかね。

ちなみに、現在のベンソンは顔も身体も2倍くらいに膨れ上がってます。フランプトンも髪の毛が後退してしまって…。ま、半世紀近く前の出来事ですから、仕方ないことなのかも。ま、エリック以外、みなさんご健在なのは何よりです。もちろん、バリー・マンも。

様々な「On Broadway」。これは、曲の素材が良いということで、どうにでも料理できるということでしょう。

「On Broadway」は『Eric Carmen』も『Freedom』も、リリースからだいぶ経ってから購入したのですが、すでにワタクシの琴線に触れていたバリー・マンの曲がありました。こちらです。

 

Daryl Hall & John Oates(ダリル・ホール&ジョン・オーツ)の「You've Lost That Lovin' Feeling」(邦題「ふられた気持ち」)でした。

こちら、1980年のアルバム『Voices』(邦題『モダン・ヴォイス』)収録で、アルバムからの2曲目のシングルカットで、ビルボード12位を記録しております。

ちょうどこの頃、ホール&オーツにはまっておりまして、当然ながらヴァイナルのLPを購入いたしました。

曲の作者はバリー・マンとシンシア・ワイル、そしてPhil Spector(フィル・スペクター)となっています。オリジナルはThe Righteous Brothers(ライチャス・ブラザース)の1964年のシングルで、見事にビルボード1位を獲得しています。

クレジット関連ではフィル・スペクターの名前が加わってますが、彼がプロデュースした作品にはほぼ名前が載るので、本当にソングライティングの力があるのかはやや疑問が残ります。

さて、バリー・マンですが、1939年生まれで、今もご健在。ニューヨーク生まれで、ユダヤ系だそうです。奥さんのシンシア・ワイルは昨年お亡くなりになったそうです。

このように思わぬ形で曲が見つかることもあり、今後もクレジット関連はきちんと見ていくことと思います。

さて、温故知新シリーズ、主にカバー曲が多くなると思いますが、続編も考えております。

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