ラズベリーズの光と影(3)
かすてら音楽夜話Vol.195
ミケポスカフェでの音楽談義、Raspberries(ラズベリーズ)の3回目。
もうおわかりだと思いますが、今回はラズベリーズの3枚目のアルバム『Side 3』を取り上げます。
このピザも美味しゅうございます。嬉しいなあ。
さて、『Side 3』の概要です。
リリースが1973年9月と、前作『Fresh』から1年置いての発売です。ただし、『Fresh』収録の「Let's Pretend」がシングルとしてリリースされたのが、1973年3月ですので、メンバーとしてもリスナーとしてもあまり休止期間を置かず、ずーっと活動していたような印象があります。
ビルボードHot200(アルバムチャート)はまさかの128位。
リリースしたシングルは、「Tonight c/w Hard To Get Over A Heartbreak」がビルボードHot100(シングルチャート)で69位。「I'm A Rocker c/w Money Down」が94位。「Ecstasy c/w Don't Want To Say Goodbye」はチャートインしませんでした(Cash Boxでは116位)。
3枚のシングルをリリースしてますが、「Ecstasy」のB面にデビューシングルの「Don't Want To Say Goodbye」を持ってくるなど、ちょっとした迷いも感じられます。
また、このアルバムからは共作がなくなり、エリックが4曲、デイヴが3曲、ウォリーが2曲という構成です。それぞれのリードヴォーカルは作者が務めております。
・アルバムがコケた理由
このアルバム、変形ジャケットでして、ラズベリーパイがバスケットに収まっているような形です。再発された紙ジャケット仕様(リマスター版)のCDでも、サイズダウンしてはいますが、当時の形をそのまま再現しております。
実に見事な型抜きで、Capitolとしても製作費を大いに使っていて、ラズベリーズへの期待度もかなりのものだったと思われます。
これ、実はレコードやCDを取り出すのに慎重さが必要でして、下手をするとジャケット自体を傷つけてしまう可能性もあるんです。もしかすると、当時の販売価格が他のLPレコードよりもちょっと高めだったりすると、ティーンエイジャーには手が出しにくい…なんて、可能性もあったかもしれません。<注:再発リマスター盤の紙ジャケット仕様CDの価格では3000円です。デビューアルバム『Raspberries』も同価格ですが、ラズベリーの香りがするステッカー入りですので、これはわかりますね。他の2枚は2600円です。>
そして、このアルバムは前の2枚と違って、とっつきにくいものだったのかもしれません。と、いうのは、「Tonight」や「Ecstasy」は「Go All The Way」~「I Wanna Be With You」の路線を踏襲してはいるものの、他の曲が明らかによりハードな曲調になっているのです。シングルとなった2曲も演奏がハード路線で、これまでの「ソフトロック」から本格的なロックへと転換したアルバムであるといえましょう。
ファンの大部分を占めていたティーンエイジャーの女子が求めるものとはだいぶずれてきたのではないかと思われます。でも、評論家筋からはおおむね好評だったようですが。
それでは、エリックが書いた曲について分析していこうと思います。
以前、再結成された時のversionで「Tonight」を紹介しましたので、オリジナルリマスター版でのサードシングル「Ecstasy」です。
作者はエリックで、もちろんリードヴォーカルもエリックです。この曲、「君に首ったけ」という邦題がついております。いくら何でも、原題のままではティーンエイジャーに悪影響が出るだろうと輸入元の東芝EMIが判断したのかなと思ったほどです。中学生の使う英和辞典にこの言葉があったかどうか。ない場合、親を含む年長者にきいて、きかれたほうも困る…なんてね。
もっと調べてみましたら、「歓喜」「有頂天」「無我夢中」という意味もあるので、邦題もあながち間違ってませんね。ともあれ、エリックもちょっと困ったタイトルを付けてくれたものです。これ、英語圏でも紛らわしいと思われたのではないでしょうか。
さて、曲ですが、メロディラインに関してはこれまでのエリックの曲調です。これをバックの演奏でハードロックっぽく持って行った1曲ですね。バックではウォリーのギターは常にうなっていますし、ジムのドラムもいつもに増して激しいです。アレンジはラズベリーズ名義ですが、大いにウォリーが貢献している曲ですねえ。
同じことは「Tonight」にもいえます。エリックとしてはいつもの曲を持ってきたといえますが、バンドの総論としてこの路線で行こうということなんでしょうね。
この曲のカップリングがまた「Don't Want To Say Goodbye」になったのは、「Tonight」のB面が「Hard To Get Over A Heartbreak」がデイヴの曲であること。セカンドシングルの「I'm A Rocker」のB面、「Money Down」がウォリーの曲ということで、できるだけ均等に扱おうということではないかと推測します。
セカンドシングル、「I'm A Rocker」です。作者、リードヴォーカルともエリックです。
この曲はアレンジも何も、元からこれまでのラズベリーズとは異なる、ハード路線で作ってきた曲といえましょう。
おそらくはこれまでのファンの大部分を占めていたと思われるティーンエイジャーの女子よりは、男性のほうに受けが良かった曲ではないかと思います。
新たなファン層を獲得したともいえますが、離れていったファンも多かったのではないかと推測しますね。
そして、最後はこちら。
『Side 3』のエリックの曲で、唯一シングルにならなかった、「On The Beach」です。
転調に次ぐ転調。マイナーコードからメジャーコード、そしてマイナーコードへ。
なんか日本のGSがやってそうな曲調で、解説の八木誠さんもどこか歌謡曲っぽいと書いております。
今回、ミケポスカフェでも是非ともトーマスさんに聴いてほしいと用意してきた曲でして、いかがだったでしょうか。
ともかく、これまでのラズベリーズにはない、特異な曲で、海岸に波が打ち付ける音やカモメの鳴き声も効果音として入っています。まあ、オハイオには海はないのですが、エリー湖はあります。相当でかい湖ですので、波も立つでしょうし、カモメもいるかもしれません。まあ、歌詞には「Sea」、「海」という単語が入ってはおりますが。
さて、『Side 3』ですが、デイヴの曲3曲のうち、2曲はやっぱりハードな曲。ウォリーの2曲のうち、1曲はなかなかブルージィな曲となっています。
ミケポスカフェでもアルバムを発売順にほぼ通して聴いていただきましたが、『Side 3』は明らかにこれまでのラズベリーズとは違うねという感想を頂きました。
★1か月ものブランク、すんまへん。新ブログで旅のレポートを続けていたものですので。一応、そちらもひと段落つきましたので、できれば「かすてら音楽夜話」も月2くらいのペースでアップしていきたいなと思います。もう、お分かりかと思いますが、次回もラズベリーズです。また、ご意見ご感想、お待ちしております。そうしたところから筆者にとってのいいインスピレーションが浮かぶ可能性が高いので、よろしくお願いいたします。下記のバナーもクリックよろしくです。
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