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2024年9月17日 (火)

ラズベリーズの光と影(4)

かすてら音楽夜話Vol.196

ミケポスカフェでの音楽談義の続き、ラズベリーズの4回目。

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ラズベリーズの4枚目のアルバムにして、スタジオ収録盤の最終作となる作品です。

題名が『Starting Over』、1974年9月のリリースで前作『Side 3』から1年置いての作品となりました。Billboard Hot 200(アルバムチャート)では、143位。

2枚のシングルが含まれていて、「Overntight Sensetion(Hit Record) c/w Hands On You」がBillboard Hot 100(シングルチャート)で18位。これは、「I Wanna Be With You」以来となるTop 20入りしたスマッシュヒットになりました。次作の「Cruising Music c/w Party's Over」は残念ながらチャートインしませんでした。

売上的には下位に沈んだアルバムながら、Rolling Stone誌は『Starting Over』を1974年度の最優秀ロックアルバムに選んだほどです。また、クレジットはないものの、John Lennonがアルバム収録にかかわったともいわれています。なお、レノンはラズベリーズのファンであり、ツアーTシャツを着用していた写真が撮られているのだとか。評論家筋ではエリック・カルメンはどちらかというとPaul McCartneyに比較されてはいたのですが。

『Starting Over』と名付けられたアルバムはほかにもありまして、レノンの遺作となったアレ、もしかしてこのセッションからいただいた?なあんてね。

・メンバー交代

このアルバムより、ベースとドラムスが交代しました。

Scott McCarl:Bass, Vocal
Michael McBride:Drums, Vocals(故人)

トップ画像では右側のふたりです。ロン毛がスコット。長いもみあげがマイケルです。

スコット・マッカールは左利きのベーシストで、元々、プロデューサーのジミー・アイナーが目をつけていた人物らしいです。曲も作り、自作曲ではリードヴォーカルも担当するのは前任者のデヴィッド・スモーリーと同じです。

マイケル・マクブライドはエリックとウォーリーが組んでいたバンド、サイラス・エリーのドラマーで旧知の仲です。前任者のジム・ボンファンティと違い、曲作りにも参加しています。

メンバー交代ですが、前作のツアー中にメンバー間の関係がぎくしゃくしてきたと、ライナーノートの解説の八木誠さんは書いています。まず、脱退を決めたのはベースのデイヴだということで、それに同調したジムがやはり辞めていったとのことです。

前回の記事では「総論としてロック色を強く押し出していこうとした」と書きましたが、音楽性の相違があったということなんですかねえ。やっぱり、辞めたふたりはオハイオの匂いを残したソフト系の音がよかったと、心にはあったのでしょうか。

・作者とリードヴォーカル

このアルバムから共作が復活しました。また、これまでのアルバムでは共作といってもすべてエリックが関わってきましたが、初めてエリックが関わらない曲も収録されています。

エリックひとりの作品が4曲。もちろん、リードヴォーカルはエリックです。

ウォリーとスコットの作品が1曲ずつで、もちろんリードヴォーカルは作者になります。

エリックとスコットの共作が3曲で、エリックのリードヴォーカルが1曲、スコットのリードヴォーカルが2曲。

エリックとマイケルの共作が1曲で、リードヴォーカルはエリック。

ウォリーとスコットの作品が1曲で、リードヴォーカルはウォリーとスコットです。

アルバム11曲収録というのも初めてで、最も収録数の多いものとなりました。

アルバムを通して聴くと、前作『Side 3』の延長線上にあるというか、さらにロック色が強化されたような感じですね。

では、曲を聴いて振り返ってみます。

 

曲は「Overnight Sensation(Hit Record)」でした。エリックの作品です。

チャート18位は何となくうなづけます。エリックのピアノから入り、サックスをフィーチャーし、重厚なコーラスが曲を仕上げます。これは、以前のラズベリーズの雰囲気そのもので、一時離れていったファンがまた戻ってきたという絵が見えますね。

あれ?でも、なんか違う。あ、メンバー変わってんじゃん!みたいな違和感もあったのかどうか。今回アップはしませんが、YouTube上にはこの最終メンバーで「Go All The Way」を演奏する映像が上がっていまして、エリックはギターを持たず、マイクをスタンドごと振り回すようにヴォーカルに専念するものでした。しかも、エリックの衣装はざっくりと胸のあたりを見せるようなジャンプスーツ風なもので、これに酷似するのは…フレディ・マーキュリーです。

時系列で見てみると、クイーンが初めてアメリカツアー(Deep Purpleなどの前座)に登場したのが1974年。年末に近い頃のようです。と、いうことはすでにアメリカでも業界人はフレディのことはある程度知られていたとは思います。でも、なんか違和感がありますよね。

ともかく、この曲のコーラスにはクレジット表記がないものの、重低音パートが含まれていて、ジミー・アイナーが加わっているようです。

 

こちら、「Party's Over」。ウォリーの曲でリードヴォーカルも彼自身です。

たまには、エリックばかりではないものを取り上げようと思いましたが、ウォリーのヴォーカルでもかなり出来のいいものだと思います。なかなかにブルージィですし、マイケルのドラミングもいいですね。また、エリックはピアノでこれまでにない曲を弾いてますね。

マイケルのドラムですが、Bruce SpringsteenのE Street Bandのドラマー、Max Weinbergに影響を与え、アルバム『Darkness On The Edge Of Town』のドラムがマイケルの演奏に基づくと語っています。

 

続いての曲は「Cry」。エリックとスコットの共作で、リードヴォーカルはスコットです。

さすがに、ジミー・アイナーの秘蔵っ子で、デイヴとは完全にテイストが違いますね。この曲にはピアノ、アコースティックギターの演奏も含まれ、バンドの総力を挙げて収録した感があります。

『Starting Over』でのエリックが歌う曲は前作『Side 3』同様に、これまでのエリックのメロディラインをロックのアレンジを加えたもの、初めからロックテイストで作ってきたものなどに分けられます。彼にとっては朝飯前くらいのものですが、やはり、このアルバムを語る上ではウォリーとスコットのヴォーカル曲も聴いてもらわないと理解できないかなと思いまして、敢えて取り上げました。

 

さて、最後を飾るのはアルバムのラスト、「Starting Over」です。もちろん、エリックの作品でリードヴォーカルもエリックです。

エリックのピアノが大きくフィーチャーされていて、ブラスも入ってますね。デビューアルバム『Raspberries』の「Waiting」のように、エリックひとりで全部やっちまうのかと思わせますが、途中からコーラスとドラムも加わり、それほど独りよがりじゃないなと安心いたしました。

「Starting Over」って、「やり直し」とか「再出発」という意味なんですが、図らずもこれがラズベリーズの最後となってしまったのは皮肉なものです。

さて、このアルバム、レーベルのCapitolがこれまでさんざん金をかけてきたのに、ジャケットなどはまるでそっけないんです。裏ジャケットも表の写真を反転させただけ。

トーマスさん説によると、すでにエリックのソロデビューが決まっていて、それでもラズベリーズの契約期間がまだ残っているので、リリースしたのがこのアルバムだと。

エリックのソロデビューは1975年の11月。ラズベリーズとしてのツアーは1975年の春ごろまでだったそうで、準備期間とか考慮すると、トーマスさん説、当たっているような気も。

もし、そうであるとしたら、バンドから去っていったデイヴとジムの行動も何となく理解できるような。これに輪をかけてギターのウォリーまで去ってしまうと、バンド崩壊です。ウォリーとしてはエリックの曲であっても独自にギターフレーズを考え、自らのキャリアを優先させたのでしょう。2曲目で紹介した、「Party's Over」はデイヴとジムに対してのものだったともいいます。ちなみに、彼はのちにジミー・アイナーの協力の下、Fotomakerというバンドに加わりました。

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こういうことをやっていると、もう夕方近く。あ、こんなものまで。ありがとうございます。ちなみに、わたくしのハンドルネームはアトムの作者の登場人物…いや謎のキャラから頂いてます。

帰るころ、ものすごい雨が降りました。一部の電車は止まったんじゃないかな。これも、エリックが「勝手なことやりやがって」と下したものなんでしょうかね。

一応、カフェにあった「人間椅子」も聴いてみたんですけどねえ。また、やりましょう!

かすてら音楽夜話は200回に向かって(ものすごく遅く)歩んでおります。リクエストなども受け付けておりますので、今回の感想やご意見とともにコメントよろしくお願いします。バナーもクリックしてねん!

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