裏声の男たち
かすてら音楽夜話Vol.217
いきなりの、Bee Gees(ビージーズ)、「You Should Be Dancing」でございました。
今回のテーマとして、男性でありながら裏声、ファルセットで歌うヒトにスポットを当てたいと思います。
この、ビージーズの映像、おそらくはライヴでありながら、口の動きがシンクロせず、もともとの音源を使用しております。「You Shoul Be Dancing」の映像はいくつものヴァージョンがあるのですが、これを持ってきたのは、ギブ4兄弟の末弟、Andy Gibb(アンディ・ギブ)も加わっての映像上でのパフォーマンスがレアかなと思ったからです。残念なことに、生き残っているのは長男のリードヴォーカル、Barry Gibb(バリー・ギブ)だけです。
この曲がリリースされたのは、1976年6月。Billboard Hot 100(ビルボードシングルチャート)で1週間、1位を獲得しました。これが、3回目の1位獲得曲ですが、バリーが本格的にファルセットに挑んでヒットした最初の曲ということになります。
これに味を占めたわけではないのでしょうが、以降、ビージーズはほとんどファルセットの曲を出し続けます。6曲連続ナンバーワンのうち、最初の「How Deep Is Your Love」(邦題「愛はきらめきの中に」)以外、全部がファルセットですね。味を占めたとでも申しましょうかね。
末弟のアンディも(アメリカでの)デビュー作、「I Just Want To Be Your Everything」(邦題「恋のときめき」)でファルセットを披露しているんですが、それもそのはずで作者がバリーですし、バリーがバックコーラスも担当しています。1977年4月のリリースで、返り咲きを含む3週1位を獲得。以降の2曲のシングルも連続で1位(3曲目の「Shadow Dancing」は年間チャートでも1位)ですし、おそらくはルックスも相まって、ビージーズより人気があったのではないでしょうか。
さて、ビージーズは1977年の映画「Saturday Night Fever」(サタデーナイトフィーバー、主演、ジョン・トラボルタ)のサウンドトラックにより、キャリアの頂点を極めることになります。サウンドトラックにはビージーズ関連の曲が8曲収録。うち、ビージーズが演奏するものが6曲。ナンバーワンヒットとなった曲が4曲(それ以前に1位を獲得した曲を含めると6曲)。という、サウンドトラックとしては異例の対比っとアルバムとなり、全世界で4000万枚が売れたとのことです。ただし、アンディ名義の曲は収録されませんでした。
こちらも余談があります。実はトラボルタが躍るシーン、最初はビージーズの曲ではなかったとのこと。一部ではBoz Scaggs(ボズ・スキャッグス)の「Low Down」であったとの証言が英語版wikiでは記述がありますね。ボズ側が曲の使用を認めなかったそうですが。
髭面のファルセット、ある面ビジュアルなんかどうでもいいというのが、当時のアメリカですかね。
Philip Bailey
おなじみ、Earth, Wind & Fireの「September」でございます。
これ、好きなんでアースの中で持ってきたんですけど、圧倒的な存在感を持つ、リーダーでリードヴォーカルのMaurice White(モーリス・ホワイト、故人)にスポットがどうしても当たってしまい、ファルセットの持ち主、Philip Bailey(フィリップ・ベイリー)にとっては映像上は影が薄く見えてしまいますね。
ビージーズのバリー・ギブをはじめとするファルセットを得意とするシンガーは地声でもヒット曲を持っているわけですが、フィリップ・ベイリーからファルセットを抜きにしたら、な~んも特徴のないヒトということになりますか。それだけ、ファルセットだけでやってきた人物でもあります。
そんな、フィリップ・ベイリーにもスポットが当たることになったのが、この曲です。
Philip Bailey & Phil Collinsの「Easy Lover」でした。
Phil Collins(フィル・コリンズ)はイギリスのバンド、Genesis(ジェネシス)のドラマーで、1980年代にソロとしても活躍した人です。ジェネシスとしてより、ソロのほうが稼ぎはよかったのではないかと思われますね。
そのふたりがタッグを組み、1984年にリリースしたのが、この曲でした。
ビルボードでは2位に終わりましたが、もうひとつの当時権威のあったチャート、Cash Boxでは1位を取ってます。
曲を聴くと、フィリップさん無理して声を裏返しているようには見えないんですよね。ナチュラルにキイが高いので、ちょっと頑張ればああいうヴォーカルスタイルができたということなんでしょうか。
もともと、アメリカのアフリカ系シンガーはファルセットを押し出してきた人たち(Smokey Robinson、Temptationsなど)も多かったという傾向はあります。もっとも、アースはMotown(モータウン)とは一線を画してきたグループではあるのですが。
Leo Sayer
Leo Sayer(レオ・セイヤー)の「You Make Me Feel Like Dancing」(邦題「恋の魔法使い」)でした。
レオ・セイヤーといいますと、毎年この時期に思い浮かぶのが、John Lennon(ジョン・レノン)の狙撃事件です。結局ジョンは狂信的なファンに撃たれて亡くなるのですが。
45年前の12月8日(日本時間は9日、すなわち本日)のことです。当時、ジョンは主夫生活から脱却しアルバム『Double Fantasy』をリリース。その最初のシングルが「Starting Over」だったわけで、ジョンの死後、「Starting Over」はあれよあれよという間にチャート1位に上り詰めたのです。
その割を食ったのがレオ・セイヤーだったわけです。彼のシングル、「More Than I Can Say」(邦題「星影のバラード」)はKenny Rogers(ケニー・ロジャース)の「Lady」に続いての2位でした。しかし、「Starting Over」が「More Than I Can Say」を飛び越しての1位獲得で、レオの3回目の1位獲得はできなかったのです。
さて、「You Make Me Feel Like Dancing」は1976年リリースで、レオ・セイヤーとしてもアメリカで初のヒットとなり、1位も獲得しました。当時の「サタデーナイトフィーバー」前夜といいますか、ディスコの波が徐々に来ていたのではないでしょうか。ファルセットの曲でもありますし。
ちなみに、レオは地声で次のシングル、「When I Need You」(邦題「はるかなる想い」)でも1位を取っています。
新田一郎
邦楽ファンの皆さん、お待たせいたしました。最後は新田一郎さんです。
ファーストソロアルバム『一番 クールが熱い』収録の「サンライズ・サンセット」(作詞:宮下康仁 作編曲:新田一郎)でした。この曲はソロになってのファーストシングル「Not For Sale」との両A面でした。チャート成績は不明です(スペクトラム、新田一郎ともwikiでは不明)。
新田さんもファルセットにスポットを当てられる人ですかね。とはいえ、Spectrum(スペクトラム)時代にも地声での曲もあるんです。
2025年の初めのころからスペクトラムの「F・L・Y」(作詞:Mabo 作編曲:スペクトラム)という曲がTikTokでバズり始め、とうとう、Victorでも公式ビデオを作るという奇跡が起こりました。解散の1981年から44年。これに関連して、新田一郎個人の楽曲も併せて公式ビデオができたということになります。(注:Maboというのは篠塚満由美氏のことです)
新田氏は17歳で渡辺プロダクションにスカウトされ、トランペットプレイヤーとして裏方の道を歩んできました。奈良出身なので、ナベプロの常道として、東京の赤城台高校に転校するのですが、(おそらく)仕事が忙しすぎて中退。ナベプロのスターのバックで裏方に徹してきたのですが、自分も表舞台でやりたいと、Horn Spectrum(ホーン・スペクトラム)を結成し、それが発展して歌って踊れるエンターテイメントバンド、スペクトラムを結成することになります。
事務所もキャンディーズのマネージャーであった大里氏のアミューズに移籍し、初期のアミューズを支えてきた功労者ということになります。(キャンディーズのバックに新田氏も起用されていた)
8人編成のスペクトラムですが、新田氏の指導はかなりスパルタ的で、加入当時19歳のギタリスト西氏には、ストロークだけを何時間も練習させ、腱鞘炎寸前まで追い込んだとか。また、当時大学生であった今野氏にもリハーサルの繰り返しはキツイものがあったようです。それがあってこそ、高度なパフォーマンスを保てたともいえますが。
ちゅうことで、やっぱり新田さんのファルセットといえば、この曲ですかね。スーパーリミックス版の「In The Spece」でした。
ちなみに、このリミックス版はスペクトラム解散後に現役のトロンボーン奏者でありながらVictorのエンジニアにもなっていた、吉田氏が手掛けたものです。
なお、筆者もそうですが、スペクトラムのファンはたとえ、もう当時のように踊れなくなっていたとしても、スペクトラムの復活を待ち望んでいると思います。今のところ、新田氏を除いて全員が現役のミュージシャンですし。新田氏は芸能プロダクションの社長業のほうが、忙しいのでしょうか。
新田さんはアースでいえば、モーリス・ホワイトとフィリップ・ベイリー、そしてホーンセクションすべてをやりたかったのかもしれませんね。かすかな希望をもって、スペクトラムの本当の最後を見届けたいと思います。新曲はいらないぜ。
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コメント
ファルセットボイス特集、興味深く拝見しました。取り上げられたミュージシャンはどれも納得です。他に挙げるとすれば洋楽ではエアサプライ、スティックス、後はやはりマイケル・ジャクソンですかね。邦楽だとクリスタル・キング、キングトーンズの内田氏などですね。
投稿: アニタツ | 2026年1月22日 (木) 16時47分
アニタツさん
ミック・ジャガーも「Emotional Rescue」以降、ファルセットをやってますね。
クリスタルキングの田中氏はフィリップ・ベイリーみたいに天然にキイが高いですね。
でも、病気か何かで、もうあの声は出ないそうで。
クリスタルキングはバンドが崩壊して、現在は低音サングラスのあの人がひとりでクリスタルキング名義で活動しているようですよ。
投稿: ヒョウちゃん | 2026年1月22日 (木) 20時49分